ブックワームのひとりごと

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浦島効果による二世代ロマンス―須賀しのぶ『惑星童話』

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惑星童話 (コバルト文庫)

今日の更新は、須賀しのぶ『惑星童話』です。

昔の作品はAmazonの画像が小さいから困る。

 

あらすじ・概要

天才宇宙飛行士アーノルドは、奇跡の人材として名をはせていた。しかし、高速で移動する宇宙船に乗るアーノルドは、浦島効果(ウラシマエフェクト)によって地上の人とは違う時間を生きている。そんな彼の前に、クレアという少女が現れた。

 

 

ふたりはきっと幸せだったんだね

この作品は二本立てになっていて、ひとつが天才宇宙飛行士アーノルドの話、もうひとつはその息子リチャードの話になっています。

宇宙飛行士アーノルドとクレアは、その仕事柄なかなか一緒にはいられない関係。しかも、浦島効果によって地上の人とも隔たりがあります。光速の世界で生きる宇宙飛行士たちの寂しさが、作品を通して繰り返し描かれていきます。

 

アーノルドとクレアの離れ離れでも続く愛は、美しい話だけれど、これでよかったのかなと思ったところを息子リチャードが補完してくれた話でした。

親しい人がみんな死んでいく中で、それでもこの人生に意味はあったのだと実感できることがどれだけ救いか。

リチャードはわけあって別の人間に育てられたのですが、彼は両親と距離があったからこそ、この物語の観測者たりえました。

最後にふたりの愛情を知ってもらえて、アーノルドは幸せだったのでしょう。これもひとつのハッピーエンドですね。

 

さくっと読めて、コンパクトにまとまっていて楽しかったです。あえて風呂敷を広げず、親子二代の物語として書いたところが読みやすいです。

一冊完結ものとしては完成度の高い小説でした。

 

『惑星童話』まとめ

とりあえず一冊完結ものが読みたい! というときにはおすすめの本です。さらっと読めますが後味はしんみりしています。

でも、これも幸せのひとつの形なんでしょうね。

 

 

惑星童話 (コバルト文庫)

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革命前夜 (文春文庫)

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