あらすじ・概要
夫婦関係を研究している著者は、何組もの夫婦を長年追跡調査・インタビューしている。幸せを求めて結婚した人々は、何度もインタビューをするうちに夫婦生活の苦しみや固定観念に囚われていた自分を吐露していく。観察を通して、夫婦それぞれが抱く「幻想」に迫る本。
後悔しない生き方なんてない
「育児に参加する夫」「バリバリ働く妻」「事実婚の夫婦」と、最近は新しい生き方の夫婦も増えています。しかしこの本は、そのような生き方の現実を見せてくれる本です。
「育児をする夫」と「会社の中での出世」の板挟みになる夫、子どもを作らないと決めて結婚したのに「作ればよかった」と後悔する妻、介護と妻の病気で危機に陥る事実婚の夫婦。
「男性も育児をしよう」「女性も仕事で活躍できる」という、お題目自体が間違っているわけではありません。しかしそれを、実践できるかは別問題です。
そのようなお題目に惑わされ、固定観念に縛られ、取るべきコミュニケーションも取れなくなってしまった夫婦を、著者は冷静にかつ優しく観察します。
そういうエピソードばかり選んだのか、登場する夫婦は己の心を客観視し、一歩踏み出すところで終わります。現実にはうまくいかずに破局してしまう夫婦も多いでしょうが、救いのある終わり方に励まされました。
登場する夫婦の中には、DVに陥ってしまったり、不倫してしまったり、倫理にもとる行動に出てしまった人たちもいます。
しかし自分の過ちを背負う覚悟を決め、反省して生きるのであれば、そういう人たちにももう一度幸せになるチャンスがあってもいいと思います。
専業主婦にしろ、働く女性にしろ、どれだけ最善の選択肢を選ぼうと思っても、いつか
「ああすればよかった」と後悔する可能性はあります。後悔しない生き方にこだわるよりも、その後悔をどう乗り越えていくかが問題なのかもしれません。
古いジェンダーにしろ新しいジェンダーにしろ、結局社会の固定観念に従うのではなく、己自身の規範に従うのが大事なんでしょうが、それが一番難しいんですよね。