ブックワームのひとりごと

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マジョリティの価値観で書かれた発達障害本ってつらいな―岡田尊司『自閉スペクトラム症 「発達障害」最新の理解と治療革命』

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自閉スペクトラム症 「発達障害」最新の理解と治療革命 (幻冬舎新書)

 

あらすじ・概要

先天的なものであり、治癒が難しいとされてきた自閉スペクトラム症。しかし最近の研究で、発生には環境要因が強いことがわかってきた。自閉症の子どもを支えるため、親や周囲は何をすればいいのか。最新の情報とともに、周囲ができる治療方法を紹介する。

 

「まとも」になることを無邪気に肯定する本

徹頭徹尾「マジョリティの価値観」で構成されている本でぞっとしてしまいました。

発達障害の子のためにできることを増やしてあげることは重要なのはわかります。しかし将来「人と深く付き合わず、ひとりが好きな人間」になることを不安視し、そうならないようにするのは医療と教育の領域を超えているような気がしてしまいます。

もちろんいざというときに人に助けてもらうだけのコミュニケーション力は必要ですが、教育が将来のコミュニケーションにまで及ぶのは内面に踏み込みすぎているでしょう。

そもそも他人より自分の世界のほうが好き、という価値観で誰が困るかと言うと社会なんですよね。何で私らが社会に合わせてやらなければならないんだ……おかしいでしょ。

障害は望んでなるものじゃないし、軽減できるならそれにこしたこともないです。しかし著者は本当に発達障害の持つ世界や価値観に関心があるのか!? と不安になってしまいました。

そもそもこの多様性の時代に「人と積極的に関わる人生が普通で、そうでない人生は異常」という価値観は古いんですよね。

 

最新の研究内容自体は興味深いもので、参考になりましたが、著者みたいな医者にかかりたくないなーと思ってしまいました。

あとこの帯の「自分でできる改善法」はあまり載ってなくないですか……? どう見ても定型発達者向けの本では?