ブックワームのひとりごと

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生贄少女は神様と出会って自分の優先順位が狂う―入間人間『きっと彼女は神様なんかじゃない』

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きっと彼女は神様なんかじゃない (メディアワークス文庫)

 

あらすじ・概要

部族の中で疎外されていた「わたし」は、ある日神の生贄になることを命じられる。贄として向かった海の中で出会ったのは、見知らぬ少女だった。メイという名の少女は、神様として部族に迎えられる。「わたし」はメイと交流を重ねるうちに、彼女に特別な感情を抱くようになる。

 

出会うことで特別な感情を得るふたり

登場人物の外見がぱっと見ではわからない、小説媒体を生かした展開で面白かったです。読み進めるほどに世界観の秘密や、登場人物の背景が明かされていって、どんどんページを進めたくなりました。

内容や設定自体はふわっとしたところもありますが、そこも寓話的、神話的な雰囲気を醸し出していて悪くないと思います。

 

主人公は部族社会の人間であり、人殺しもするし生き残るために周りより自分を優先する、現代社会から見ると野蛮なキャラクターです。そんな彼女が、「神様」であるメイと出会い、自分の中の優先順位が揺らぎ始めるのが愛しいです。

メイと一緒に行動することは主人公には何の利益もないのに、惹かれてしまう。その戸惑いと甘い感情がかわいかったですね。

 

メイ自身も、かつていた社会からこちら側の世界に来て、一種の解放を得ます。自分に素直になり、己の願いを果たそうとするメイの姿にはすっきりしました。彼女の行動は正しいとは言えないかもしれませんが、もはや正しいとか正しくないとかはこの物語にはあまり意味はないのでしょう。

 

さくさく読める内容でありながら、独特の世界観やキャラクターが面白く、満足度の高い作品でした。百合が平気なら読んでほしい作品です。