あらすじ・概要
「ぴーちゃん」こと著者は、子どもの頃から何だか上手く行かなかった。親からの虐待、周囲の大人たちの無理解。やがてうつになり、オーバードーズや性的逸脱をしてしまうに至る。自分がADHDだと気づき、あがいて生きていく姿を描いたコミックエッセイ。
普通になれない人の悲哀
作中では、著者である「ぴーちゃん」はうさぎの姿と人間の姿を行き来します。他の人と同じ人間のはずなのに何かが違う。自分だけ違う動物のようだ……。そんな著者の葛藤が垣間見えます。
著者が生きていく上で迷走し続けたのは、もちろんADHDの特性もあるでしょうが、身の回りに生き方を教えてくれる人たちがいなかったのも原因でしょう。家庭には暴力的な父がおり、学校には安易な共感や正義の押し付けをしてくる大人はいても本当に助けようとしてくれる人はいません。教育って何なんだろうと思わされます。
しかし、大学生のときとある企業のインターンシップに参加した著者は、そこで初めて自分の特性を気遣ってくれる人と出会います。
配慮をしてくれる職場に出会えるかというのはかなり運要素が強いと思いますが、つかんだチャンスをものにした著者もすごいです。著者の努力が報われてほっとしました。
漫画の合間のコラムには著者の家族への思いがつづられています。あれだけひどい目にあったのに父親を思いやるコメントがあったのには驚きました。「許してはいない」とはいえ優しい人だなと思いました。