あらすじ・概要
イスラーム国唯一の世俗主義を掲げ、今日まで存在してきたトルコ。その内側には、宗教と政権の対立、クルド人をはじめとする国内のマイノリティへの苦悩が渦巻いていた。国内外の困難と、それに立ち向かおうとするトルコの人々。ニュースでは取り上げられないトルコを描き出す。
知らない情報ばかりで面白かったです。イスラーム文化への偏見や、「発展途上国のニュースは永遠に遅れたままであってほしい」という先進国のわがままについて考えさせられました。
報道されないトルコの政治と社会
世俗主義といいつつ、イスラーム主義を意味もなく弾圧しているのは公平な社会とは言えません。
しかし、イスラーム教には政教分離ができないという欠点があります。
宗教が世俗主義を認めない社会で世俗主義をやるということはどういうことなのか、考えさせられます。
クルド人問題についても、過去この土地を支配しようとした欧米各国の思惑も絡んでいて、トルコだけで解決することのできない問題だとわかります。
トルコの悪いところだけではなく、いいところも書かれています。
イスラーム文化には相互扶助の思想があり、困っている人がいれば助けるのが当然です。トルコでも災害や戦争が起こると大規模な寄付キャンペーンが行われます。
また、インフレが起こっても、投資で損をしない立ち回りをするしたたかさもあります。
一方で、著者はトルコ贔屓なんだろうと思う文面も多かったです。この辺りは、他の資料と照らし合わせて考えた方がいいでしょう。ただ、こういうトルコという国のポジティブでたくましい面を紹介してくれる人は珍しいです。多様性の面では、著者のような人もいたほうがいいと思います。
特にギュレン教団については複数の意見が錯綜しているみたいなので、安易な結論は出せません。
トルコに関しては、いつも決まりきったニュースしか報道されません。それはトルコに興味がある人が少ないからです。
日本にトルコに興味がある人が増えれば、もっと多様な情報が入ってくる可能性があります。
トルコについての関心度が上がってほしいと思う本でした。