ブックワームのひとりごと

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『さいごの色街 飛田』新潮文庫 井上理津子 感想

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さいごの色街 飛田 (新潮文庫)

 

あらすじ・概要

大阪に唯一残った遊郭街、飛田。著者はその実像をつかもうと、飛田に飛び込む。遊郭を運営していた人たちや、ヤクザとの関係、飛田特有の複雑なシステムを知り、著者は性産業と女性をめぐる問題について考えることになる。

 

ルポルタージュに現れる著者の人間味が好き

同じ著者の『葬送の仕事師たち』が面白かったので買いました。大変面白かったです。

 

著者は、なるべく飛田についてフラットに語りたい……と言いながらも飛田における女性搾取のシステム、男尊女卑にかなり引いています。そういうところが人間味があって面白かったです。ルポルタージュとしては作者のバイアスが入らない方がいいのでしょうが、ジャーナリストだって人間なので目の前で語られていることが受け入れられないこともあるだろうと思います。

女の子たちに贅沢を覚えさせて普通の仕事につけなくしたり、売春の元締め側が女の子たちをコントロールできるしくみにしたりは恐ろしいですね。

 

私は、売春がいいものだとは思っていないですし、基本的にはやらない方がいいと思っています。しかし売春をやっている人は、貧困や虐待など、何かしら事情があって売春というビジネスに流れ着いた人が多いです。その人から仕事を取り上げて、「普通の世界に生きろ」と雑に言うのも無責任なのではないでしょうか。

この本にも、飛田でしか生きていけなかった人たちが多く出てきます。

 

著者には売春や性産業に対するロマンチックな思想があまりなく、あっさりしているところも面白かったです。やっぱり男性は性産業に夢を見すぎなんですよね。良くも悪くも、売春をする女性もただの「一般女性」でしかないのだろうと感じました。

この作家さんはいろいろノンフィクションを出しているようなので、もっと読んでみたいです。

 

 

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