NHKの海外ドキュメンタリー翻訳シリーズ「ドキュランドにようこそ」の録画が溜まってきたので見て感想をまとめました。
連休中軽い作業をしながらぼちぼち見てました。
01.「生きるこだわり 安楽死を選んだパラ金メダリスト」
進行性の病気を持つパラリンピック選手が、安楽死を選び実際に実行するまでを追うドキュメンタリー。
安楽死を決定してからしばらくは元気だったのに、実際に安楽死するとなるとどんどん精神が不安定になるのが恐ろしかったですね。
個人的には安楽死肯定ドキュメンタリーというより、安楽死という選択肢があっても人は迷い、強がり、葛藤するのだという作品だと思います。
潔く死ねるなんて幻想なのでしょう。安楽死があっても死ぬのは怖いという感情はなくなりません。
02.「”棒人間”は黙らない インドの風刺漫画家」
モディ政権下のインドで、危険を犯しながら風刺漫画を描き続ける女性のドキュメンタリー。
浅学にしてインドでどういうことが起こっているのか詳しくは知らなかったのですが、多くの国民が体制によって扇動されているのに暗い気持ちになります。
扇動される人たちも愚かかもしれないですが、一番悪いのは国民の劣等感や不満をもとに洗脳し、自分のいいように扱っている人々です。社会的に上の立場の人は責任ももつべきです。
この状況で顔出しでドキュメンタリーに出るということが、彼女の覚悟を感じます。
ヒンドゥー・ナショナリズムがはびこる社会で、どうにかインドに民主的な国になってほしいという人々の戦いが染みます。
03.「ジェナの世界 ロシア”恐怖”と戦うアーティスト」
ロシアのノンバイナリーの人がロシアを脱出し、フランスに行くまでを追ったドキュメンタリー。
この方にとってファッションは生きがいであり自己主張であり自己受容でもあり、自分自身の人生と分けて考えることができないものなのでしょう、
私には奇抜な服で歩きたいという欲求はありませんが、そういう人と暴力で他人を排除しようとする人、どちらが悪いかと言ったら後者でしょう。
祖父母も彼らなりに心配しているのでしょうが、人と違うように生まれた孫の孤独を理解できず、多数派に寄せようとしてしまいます。
また、現段階でジェナのファッションは何らかの富を生み出すものではないので、金銭的な心配が発生するのはわかります。わかりますが、ジェナにとってはお金の問題ではないんですよね。
最後にフランスから国際電話をかけて話すシーンにもらい泣きしそうになりました。
故郷を捨てたくて捨てたんじゃないだろうなあ、という哀しさがありました。
04.「クリックベット 欧州 スポーツ賭博のワナ」
ヨーロッパにおけるスポーツ賭博の問題を描いたドキュメンタリー。ヨーロッパって日本よりスポーツ賭博に寛容なんだなあと思っていたけどやっぱり問題もあるんですね。
未成年が賭博に参加していたり、VIP待遇になるとちょっと賭博してなかっただけで運営から連絡が来たりと怖い話も多いです。
ヨーロッパ内でもスポーツ賭博に対する規制はまちまちのよう。スポーツ選手が賭博サイトのスポンサーのロゴをつけることを許可するかどうかも差があります。
登場する人たちも賭博そのものを否定しているわけではありません。ただ、依存症患者を生まないために資金や人的コストを使うべきだと思っているだけです。
日本もTOTOはありますが、ここまで露骨ではないですよね。
05.「思春期のあなたとともに オランダ ジェンダークリニックの日々」
オランダのジェンダークリニックのスタッフたちを追ったドキュメンタリー。
性別適合のための医療は不可逆的なものが多いため、思春期の子どもに施術するには医療者側も迷います。しかし子どもたちは、第二次性徴を迎え自分の性的特徴がはっきりする前に施術を始めたいと思う子もいます。
特に子どもを産む能力を失う施術については、慎重にならざるをえません。
ジェンダークリニックの中には異性愛者・シスジェンダー(心と体の性別が一致している人)がいて、そういう人たちも自分の価値観を全否定されることは苦痛を感じます。
一方で、トランスジェンダーの人にとっては今まで自分たちは自由な発言ができなかった、だからこそ今言うという強い怒りがあります。
性別に違和を抱える子どもたちに幸せになってほしいと願いながらも、大人同士のひりひりする軋轢が怖いドキュメンタリーでもありました。
以上です。「ドキュランドにようこそ」は権利的な問題のせいかNHKオンデマンドに来ないことが多いので、面白い内容でもなかなか人におすすめして見てもらうことができません。
見逃し配信はあるみたいなので、機会があったら見てほしいです。