久しぶりに米澤穂信を読みました。
この人の描く小説の結末はだいたい辛くなるんですけど、今回もすごくつらかったです。読み終わってしばらくゾンビのようになっていました。
あらすじ
主人公は雨宿りをしていたユーゴスラヴィア人、マーヤと出会う。友人とともに交流を深めるうちに、ユーゴスラヴィアについて知りたいと考えるように。しかしユーゴスラヴィアは、大きな問題を抱えていた……。
謎解き要素のある青春小説
ミステリ要素はあるものの、どちらかというとボーイミーツガールと主人公たちの青春がメインな感じです。がっつりと謎解きを期待している人は肩透かしを食らうかもしれません。
異文化交流ものなので、主人公たちがマーヤに日本の文化を説明するシーンが多いです。なるほどうまく説明するなあと感心する言い方をしています。ユーゴスラヴィアだけではなく、日本の文化についても考えられた小説なんですね。
マーヤを通して異文化に触れ、変わっていく主人公の姿は王道です。しかし王道な物語でも、上手い人が書くとオンリーワンになるんですよね。
青春小説として面白かったです。
若者にとっては苦いエンディング
米澤穂信の小説の結末は苦いものになることが多いですが、この作品は一段と悲しかったです。
主人公も、読者もマーヤを救うことはできないんですよね。彼女は確かに、運命の大きなうねりに抗おうとするために日本に来ました。それなのにどうにもならないことがある、というのがつらい。
でも子どもができることというのはその程度です。「国を救いたい」と思っても、実行に移せるかは別の問題です。もしかしたら大人だって「何か」はできないかもしれません。
読み終わった後の無力感がすさまじかったです。マーヤ……それでも私は彼女に幸せになってほしかったです。読者も主人公も無力だったとしても。
まとめ
読み終わってからだいぶつらい気持ちになりました。どうにもならなさが心に迫ってきて悲しいです。
ハッピーエンドはありえない物語でした。
この本が好きな人へのおすすめ
ユーゴスラヴィアの本だと、サッカー日本代表の監督を務めたイビチャ・オシムの人生を描いたノンフィクション『オシムの言葉』がおすすめです。
彼もサッカーを通して祖国の崩壊を止めようとした人です。