ブックワームのひとりごと

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セクハラ親父が大学から放逐された末路―J・M・クッツェー『恥辱』感想

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恥辱 (ハヤカワepi文庫)

最近更新遅れててすみません。

今日の更新は、J・M・クッツェー『恥辱』です。

 

あらすじ

女生徒と関係をもって大学を首になった大学教授、デヴィッド・ラウリーは、娘の農場に転がり込む。だがそこでも、強盗に入られる事件があった。親子ふたりの状況は悪化の一途をたどっていく……。

 

セクハラ男の末路

教え子に手を出すだけでクズ野郎なんですが、「クズ野郎が成敗されて終わり」にならないのがこの話。彼の末路について淡々と、しかしながらリアルに描いていきます。

小さい農場を営む娘の家に身を寄せたデヴィッドは、そこで強盗に遭い、娘はレイプされてしまいます。

治安の悪い南アフリカで生きていくということがどれほどややこしいことなのか、しみじみ感じます。

デヴィッドは、エンタメだったらくだらないちょい役の悪人だっただろうなと思うんですが、彼を主人公に据えるとがらっと雰囲気もテーマも変わってくるのが面白かったです。

 

第二の主人公のようなものの、デヴィッドの娘ルーシーの苦難は苦しかったです。

ろくでもない状況に陥りながらも、農場から離れられない彼女の気持ちは少しわかります。本当に苦しいとき、気力がない時というのは逃げ出す力もありません。ただ時間をもって慣れるのを待つだけなんですよね。

心を閉ざし、静かに自由をなくしていくルーシー。その姿は読んでいて本当につらかったです。

 

まとめ

面白い、というタイプの作品ではないけれど、内容はとても新鮮で興味深かったです。

軽薄で飄々としてて、けれどもえげつない作品でした。

恥辱 (ハヤカワepi文庫)

恥辱 (ハヤカワepi文庫)