Twitterのラノベ読み界隈でこんな企画をやっていたそうです。
私もちょっと書いてみるか! ということで10代をテーマにした単巻ライトノベルをピックアップしました。
- 吸血鬼と人間の恋物語『ヴァンパイア・サマータイム』
- フェンシングスポ根ラノベ 『Let it BEE!』
- 哀しみを抱えた少年少女の淡い恋『陸と千星 世界を配る少年と別荘の少女』
- 少女が愛し合い傷つけあう百合小説『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』
- その場のノリで 美少女と沖縄へ『ニライカナイをさがして』
- 映画研究部での三角関係『ボンクラーズ・ドントクライ』
- 青春とゾンビのコラボ『オブザデッド・マニアックス』
- 呪われた嬉しくないハーレム『ロミオの災難』
- 青春とテクノロジーを組み合わせた連作短編『青春離婚』
- ギリギリするような青春サスペンス『ただ、それだけでよかったんです』
吸血鬼と人間の恋物語『ヴァンパイア・サマータイム』
吸血鬼と人が共存する世界。両親の経営しているコンビニで働くヨリマサは、毎日紅茶を買いに来る吸血鬼の少女が気になっている。会話するようになったふたりは、小さな事件を経て仲良くなっていく……。
ボーイミーツガール、異種間の恋と、直球なストーリーであるこの作品ですが、まずお勧めしたいポイントは文章がべらぼうに上手いこと。美しいけれど自然で、きざな感じがしない。ライトノベル作家の中でも文章の上手さはトップクラスになると思います。
丁寧に描写されるラブストーリーが切なくも心地よかったです。
フェンシングスポ根ラノベ 『Let it BEE!』
内気な少女、有星結恵は顧問の蜂谷巴に誘われ、廃部寸前のフェンシング部に入部。しかし彼女には、先端恐怖症という大きなハンデがあった。団体戦に出場するため、巴とフェンシング部のメンバーたちは結恵をフェンサー(フェンシング選手)に育て上げようとする。
初心者、結恵の成長を軸に、フェンシング部のメンバーの優しさ、フェンシングという競技の面白さ、そして心を震わせてくれるライバルとの出会いが、詰め込まれていて面白かったです。
続きがないのが唯一の欠点ですね。
哀しみを抱えた少年少女の淡い恋『陸と千星 世界を配る少年と別荘の少女』
両親の離婚の話し合いの間、田舎の家に預けられた千星。彼女はそこで新聞配達をしている少年、陸と出会う。朝の新聞配達のときに起こる小さな触れ合いを通して、ふたりはお互いに惹かれ合っていく。
愛のない夫婦の間に生まれた千星と、ネグレクトされながら育った陸。自分でどうにもならない理不尽さに傷つき、千星は泣けなくなり、陸は笑えなくなってしまいます。
細やかな心の動きが、リアルに丁寧に書かれていたので、ふたりを応援したい気持ちでいっぱいになりました。
幸せな話とは言い難いですが、確かにその恋に救われたのだと思える話でした。
少女が愛し合い傷つけあう百合小説『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』
中学生の海幸は、列車に飛び込んで自殺しようとしたところ、電車が廃線になっていて不可能だった。そこでリガヤという少女に出会う。芸術家である彼女に半ば脅されるようにして、「幽霊列車」の作品を作るのに協力する海幸だったが……。
女の子同士がキスをしたり距離が近かったりする「百合」ですが、単純に「女の子同士がいちゃついている」だけに頼らないしっかりしたストーリーがあって面白かったです。
交流を通して少しずつ明かされていく、海幸とリガヤの過去。そしてそれを清算するためのラストシーン。その過程が非常に自然で、かつ読みごたえがありました。
その場のノリで 美少女と沖縄へ『ニライカナイをさがして』
人気アイドル、宮沢梨花に空港で出くわし、さらわれるように沖縄に向かった主人公。ふたりは石垣島を経由して日本最南端の島、波照間島へ来た。そこで見た、アイドル梨花の秘密とは……。
南の島でのボーイミーツガール。南国感あふれる旅行小説です。
この作品では梨花がとてもかわいかったです。梨花はわがままで奔放だけれども、肝心なところでは素直になるところがかわいげがあって素晴らしい。うっかりすると読者にストレスを与えてしまうキャラ設定だと思いますが、だめなところといいところのバランスを取って「かわいい」と思わせてくれるところがよかったです。
映画研究部での三角関係『ボンクラーズ・ドントクライ』
二人でヒーローごっこをしていた映画研究部の「僕」とカントク。そこに男装の少女桐香が現れたことから、映画研究部は変わっていく。三人の淡い恋の行方はいったいどうなるのか……。
女の子一人、男の子二人の三角関係ストーリーなのですが、あまりドロドロはしていなくて、三人のかけがえのない日常がメインとして描かれていたのがさわやかでした。日常シーンが本当にかわいらしくて和みます。
悲恋といってもいい物語でありながら、少し希望をもって終わったのが素晴らしかったです。
青春とゾンビのコラボ『オブザデッド・マニアックス』
ゾンビマニアでゾンビに襲われることを夢見ていた丈二。彼が学校行事で向かった孤島のセミナーハウスで、突然、ゾンビの姿が! 丈二はクラスメイトたちと生き残るために協力しあいます。しかしショッピングモールに向かうと、そこにはクラスの委員長によっていびつな帝国が築かれており……。
そしてゾンビという荒唐無稽な設定を使いながら、最終的には青春ものとして締めるのがよかったです。ちゃんと出落ちにならずに最後まで書ききったのが素晴らしいです。
自分は特別ではなく、ただの人間だと認めること。クラスの上下関係からの脱出。そういう王道なテーマをゾンビという味付けで書くのが面白かったです。
呪われた嬉しくないハーレム『ロミオの災難』
一年生五人だけの演劇部。文化祭の公演の相談をしていると、五人で演じられる『ロミオとジュリエット』の台本が落ちてきた。その台本を演じることにした五人だったが、なぜか部員たちの恋愛の矢印が、ロミオ役の如月に向き始め……。
ハーレム状態で嬉しいな、という感覚ではなく、思い人の本心に悩み、操られた恋心によって騒動を起こす部員たちに悩み……という如月の心中が面白かったです。
基本的に青春ラブコメなんですが、その中で自分の感情に向き合い、結論を出していく少年少女たちは前向きで好きです。
青春とテクノロジーを組み合わせた連作短編『青春離婚』
同じ苗字を持つゆえに、「夫婦」とからかわれる二人。アプリ開発をきっかけに、彼らの距離は縮まる。表題作『青春離婚』などを含む、スマートフォンと恋愛を題材にした青春連作短編集。
ちょっと前の小説とはいえ、スマホアプリ、SNSのbotなど、流行しているテクノロジーを反映させた小説というのは新鮮でした。多くの青春小説では、その辺のテクノロジーのことはぼかしてしまいますからね。
基本さわやかですが少ししんみりするシーンもあり、ゆるやかな温度変化が楽しい小説でした。
ギリギリするような青春サスペンス『ただ、それだけでよかったんです』
クラスの人気者、昌也が自殺した。彼を自殺に追い込んだのは「僕」。そして弟の死の真実を追う姉は、主人公の行動に疑問を持つ。彼はどのようにして親友を殺したのか……。二つの視点から描かれる青春サスペンス。
この作品は、何より話の展開が面白かったです。ミスリードに次ぐミスリード、二転三転する主張、誰がどのようにして昌也を死に追いやったのか、なかなか読めない秀逸なストーリーでした。デビュー作とは思えない、話をぐいぐい引っ張っていく力を感じます。
思春期のギリギリするような不安定な心を描く、青春サスペンスです。
以上です。興味があるものがあればぜひ読んでみてください。