ブックワームのひとりごと

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理屈が丁寧に説明された創作論―貴志祐介『エンタテインメントの作り方 売れる小説はこう書く』

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エンタテインメントの作り方 売れる小説はこう書く (角川新書)

 

あらすじ・概要

ホラー・サスペンス・ミステリなど、ハラハラドキドキさせる作品を作り続けヒットを飛ばしてきた貴志祐介。彼は創作のためにどのようなことを行っているのか。自分の作品や過去の名作を引き合いに出しながら、「面白い!」と思わせるエンタテインメントの作り方を解説する。

 

つまらない小説例がわかりすぎる

もともと著者の作品が好きなのもあるんですが、著者が批判するつまらない小説の特徴が私の価値観と一致していて楽しかったです。

とくに危険なのは比喩表現だ。 文章を書いていると、見たことないような気の利いた比喩が閃くことがあるが、それが本当に素晴らしいものであるなら、おそらくとっくに使われているだろう(P170~171)

 たとえば男性が女性キャラクターを描く際、言葉遣いひとつをとっても「……だわ」とか「……よ」という口調を使用してしまいがちだ。しかし、当節、こういう言葉遣いに終始する女性はまずいない。(P131)

小説を書くうえではむしろ、語彙は回りくどい説明を単純化するために活用すべきなのだ(P145)

わ、わかる!

 

著者の意見は経験則によるものですが、どうしてそういう意見を持っているのか、そういう書き方をすることでどんなメリットがあるのか、丁寧に説明されているのでとても読みやすいです。

私とは書いているジャンルが違うので全部は利用できないにしろ、方法のひとつとしては非常に参考になります。

小説家の書く創作論は、妙にロマンチックだったり力が入りすぎたりしていて引いてしまうことも多かったのですが、この本は読み物としても面白くてすらすら読めました。

 

さらに小説を志す人だけでなく、単純に著者の作品を読むファンにもおすすめです。

『悪の教典』『黒い家』『青い炎』など、著者の過去の作品についてもどういうテクニックを使ったのか、演出にどんな意図があったのか書いてあります。

 『悪の教典』は未読なんですが、これを読んでめちゃくちゃ読んでみたくなりました。近いうちに入手したい。