ブックワームのひとりごと

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それぞれ秘密を持った夫婦が殺し合ってトリック合戦―藤石波矢・辻堂ゆめ『昨夜は殺れたかも』

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昨夜は殺れたかも (講談社タイガ)

 

あらすじ・概要

ラブラブな主婦とサラリーマンの夫婦、藤堂光弘と咲奈。しかしふたりには秘密があった。光弘は咲奈の不倫を疑い、咲奈は光弘が自分の財産を狙っていると疑った。ふたりは愛のない相手を殺そうと、何回もトリックを重ねる。しかし、それはあと一歩のところで成功せず……。男女の作家がそれぞれ夫と妻の視点を書く共作サスペンス。

 

細かいことを気にしないで読むB級小説

細かいことを気にしないで読むB級小説です。殺人に至る動機が短絡的すぎるだろとか、ラストがご都合主義だとか、ツッコミどころを上げればきりがありません。でも面白いんですよね。

 

表面上は「理想の夫婦」を演じながらトリックを重ねて相手を殺そうとするふたりは笑えました。

特に好きなのはふたりで家族旅行に行く部分で、ふたりとも「旅行先で相手を殺そう」としているのでわけのわからないトンチキ旅行になっています。隙あらば殺される旅行なんて嫌すぎる。

ふたりとも相手がしかけた「殺し」を全力で回避するけれど。回避した結果おかしな行動になるのがまた笑えてきてしまいます。

 

細かいことを気にしないで読む本と言ったけれど、基本的には前向きな小説で、愛や努力を肯定してくれます。

こんなめちゃくちゃな設定なのに許してしまうのは、ストーリーのポジティブさゆえかもしれません。

トンチキだけど、トンチキさに一貫性があるんですよね。

 

エピローグの幸せいっぱいな結末は面白い笑いとほほえましい笑いでにこにこしながら読みました。めちゃくちゃだけど、いい話だった。あと表紙の絵も最高にいいですね。かわいい。