ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

介護、老人ホーム、家を建てる。認知症の家族と暮らすコミックエッセイおすすめ5選

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

介護の話題は結構興味があって、見かけると読んでしまいます。

今日はコミックエッセイの中から認知症の家族と暮らす生活を描いた作品をピックアップしました。

 

認知症の祖母のために被災地に家を建てる『ナガサレール・イエタテール』

東日本大震災の津波により、家が流されてしまった著者の実家。認知症が進み、故郷を恋しがる祖母のために、母は家の建て直しを決意。しかしそんな折、母ががんに侵されてしまう。著者は認知症の祖母と病気の母に代わって、実家を建てる音頭を取ることになってしまうが……。

大震災、病気、認知症と波乱万丈な話題が続きますが、ほどよく力の抜けた語り口で、暗くなりすぎずに読めました。

不謹慎にならない程度の不真面目さがあるから、つらい状況も笑い飛ばせます。

最後に家が完成したとき、嬉しそうな著者の祖母の姿を見てほっとしました。ここでハッピーエンドというわけではないでしょうが、その姿を見られただけでもこのコミックエッセイを読んでよかったです。

honkuimusi.hatenablog.com

 

認知症の母は過去をさまよう『ペコロスの母に会いに行く』

父の死後、認知症になってしまった母。その母を介護し、施設に入れて面会に通った日々を、四コマ漫画で語る。認知症の症状で過去の思い出をさまよう母は、酒乱だった夫の幻を見るようになる。幻の中の夫は優しく、穏やかに、母に会いに来てくれる……。

エッセイとフィクションが交じり合うような作品で、著者の介護の日々と、認知症の母の言動から呼び起こされた過去の母を、想像して描くパートが両方描かれています。

著者の父はアルコール依存症で、今で言うとDV夫です。でも話を読み進めているうちに、アルコール依存症でコントロールできない自分を短歌に読み苦悩する一面もあることがわかっています。

これを読んでいると、周囲の人間が勝手に他人の人生を判断し、幸せだとか不幸だとか決めつけることの愚かさを感じます。

母親の人生の幕引きを目の前にして、何とか母の物語に美しいものを残したい。それは甘ちゃんな考えかもしれませんが、否定はできませんでした。

honkuimusi.hatenablog.com

 

祖母と同居して地獄を見る『ばーちゃんがゴリラになっちゃった。 祖父母そろって認知症』

著者の母方の祖父母は、夫婦そろって認知症になってしまった。軽い気持ちから祖父母の家に住むことを家族に申し入れた著者だったが、それが過酷な介護の始まりだった。暴力・暴言が激しく介護サービスを拒む祖母と、他の人間に興味を示さない祖父の相手は、想像以上に大変で……。

介護を軽い気持ちで引き受けると大変なことになるという例でした。

暴言だったり反抗的だったりはまだしも、直接暴力を振るわれるのは身の危険を感じます。認知症の方向性はいろいろあるけど暴力の方に行くのはつらいですね……。

一方で、著者の親戚は家族仲がよく、頼れる人間が多いのはよかったと思います。しかも言いたいことをはっきり言うタイプの人が多いので、あまり腹の読み合いをしなくていいのが介護にはプラスだったのではないでしょうか。

一度共同戦線が崩壊しかけたシーンもあるけど、話し合うことで持ち直したのはさすがです。周囲にしっかりした人が多いのは大事。

honkuimusi.hatenablog.com

 

お金があればなんとかなるわけではない『親の介護、10年め日記。』

夫婦漫画家の著者ふたりは、歩けなくなった妻の母親の介護を帰省して行いながら東京で仕事をしていた。そんな中、父親が腎不全で入院。いよいよ母の世話ができなくなったことから、老人ホームを探し始める。しかし、父もまた様子がおかしくなってきて……。

この作品で一番怖かったのは、著者の父親がタクシーで何時間も徘徊し、母親の貯金をすっからかんにしてしまったことです。そのせいで、母親は有料老人ホームに入ることができなくなり、価格の安い特別養護老人ホームに申し込むことに。

とりあえずお金を貯めておけば老後は安心だろうと思っていたのですが、認知症になった結果お金を浪費してしまう可能性は考えていませんでした。衝撃。

でも確かに自分で浪費しなくても詐欺にひっかかったり、泥棒にあったりする可能性はあるので、お金があれば安心とはいきませんよね。

「老後の安全は最後は人脈」という言葉が現実味を帯びてしまいました。人間関係の構築苦手なのに……。

honkuimusi.hatenablog.com

 

介護士の男性の両親が認知症に『両親認知症Uターン すっとこ介護はじめました!』

49歳で介護ヘルパーになり、介護士としてキャリアを積んできた著者。しかし両親の認知症が進行し、故郷に帰らなければならなくなる。著者がそこで見たのは、混沌とした家の現状だった……。

コミカルな絵柄で暗くならないようにはなっていますが、なかなか壮絶なコミックエッセイです。認知症になったことでわがまま放題になり、排泄は失敗し、サラダ油をお酒と間違え、夜中に食器を並べだす。

そんな親の介護を、介護士として働きながらこなし、必要であればケースワーカーと相談したり、入れる施設を探したり。本当に忙しいです。

読んでいて思うのは、お金が老後の選択肢を増やすということです。介護施設はすごくお金がかかります。なるべく安く……と思うと施設を選ぶことができません。老後のために2000万円貯めろというのもあながち間違いじゃないんだなあ……(実現できるかはともかくとして)

honkuimusi.hatenablog.com

 

以上です。興味があれば読んでみてください。