あらすじ・概要
赤ちゃんポストに捨てられた赤ん坊を養子がほしい夫婦に売っている、ブローカーの男ふたり。ひとりの男の赤ん坊を売ろうとしたところ、その母親に人身売買の旅へついてこられることとなる。三人が赤ん坊を世話しながら旅をするうちに、奇妙な絆が生まれ始める。
「愛されたい」のと同じくらい「愛したい」
あまりにも救いのない話だったらどうしようと思っていたんですが、人の愛に希望を持った話でほっとしました。
シビアなところはシビアで、売春の問題、望まぬ妊娠の問題、親に捨てられた子どもの問題など、胸が重くなるシーンも多かったです。
しかしそんな人生の苦難や大きな過ちの中でも、ひとりの赤ん坊を中心に、「誰かを愛したい、心の支えを得たい」という感情を登場人物たちが持っていくのがよかったです。
人間、愛されたいのと同じくらい「愛したい」という願望もあるものだよね、と思いました。
こんな都合のいい展開はなかなかないだろう……という部分も多いので、リアリティ自体はそこまで高くはありません。しかし絶望がたくさんある世の中で、こういう愛が芽生える瞬間を描きたい、という気持ちはよくわかります。
特にラスト近くの、観覧車のシーンでは少し泣いてしまいました。自分を捨てた親を許すことはできない。だけれど目の前の誰かは許せるかもしれません。
この出会いによって苦しみがきれいさっぱりなくなるわけではないのですが、主人公の大人三人にとって、この出会いは確かに救いだったのでしょう。
これからも登場人物は、ままならない世界から出ることができないのかもしれません。それでも人のつながりは無意味ではない、一瞬の救いであってもそれは人生を支えてくれる、そう思える作品でした。