ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

一枚の心霊写真から少年が謎を追う―宮部みゆき『小暮写眞館Ⅰ』

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

小暮写眞館I (新潮文庫nex)

 

あらすじ・概要

閉店した写真館に引っ越してきた少年、花菱英一は、ひとりの女子高生が持ち込んできた写真と出会う。それはどこかおかしい心霊写真だった。その写真を持ち主に返そうと調べるうちに、英一は写真にこだわっていってしまう。写真の中に隠された謎とは……。

 

地道な謎解きとやりきれない真相

一般のレーベルで出したものを新潮文庫NEXで出し直したものですかね? イラストの雰囲気も作品に合っていて素敵です。

 

ちょっと不思議な要素はあるものの、謎解き自体はリアル寄りに進行していきます。ひらめきや天才的な思考ではなく、聞き込みしたり足を使ったりして地道に謎を解いていく過程が硬派でよかったです。

派手などんでん返しも伏線もないので、静かに始まって静かに終わりますが、日常の謎ってこのくらいの温度の方が入って行きやすいです。

 

写真の謎についてのオチは、今話題になっている時事問題ともつながってしまって少し考えさせられました。写真の幽霊はなぜ泣いていたのか、何を訴えたかったのか……それを思うとやりきれない気持ちになります。

〇〇に好きな人を奪われたこと、それをうまく悲しめなかったこと、相手だけではなく自分自身も呪っていたこと……。謎解きシーンが終わったとき、いろいろな感情が交錯してしみじみしてしまいました。

 

とても面白かったし、全4巻と読みやすい長さなので続きも読んでみたいです。