あらすじ・概要
東日本大震災と原発事故をきっかけに、東相馬の故郷を捨てて北海道へやってきた著者。美容学校に通って美容師になろうとするも、劣悪な労働環境でうつを発症してしまう。父親との関係、被災者である後ろめたさ、自己嫌悪に囚われ、働けなくなってしまった。
原爆事故を目の前にした人々の苦しみ
震災発生当時のリアルな福島県民の苦労が描かれていて、胸が苦しくなりました。
原発事故の被害規模もわからないまま、「子どもを放射能にさらしたくない」という一心で北海道を目指した著者と兄。その旅路のつらさは当事者から聞かなければわからないものですね。
当時は情報が錯綜していて、デマも多く、正しい判断ができる人の方が少なかったと思います。安全が確保されてからなら好きなことが言えますが、災害にさらされた人は生きるのに必死なのだと気づかされました。
著者がうつになったのは、震災がひとつのきっかけではありますが、他人を思い通りにしようとする父親との関係のせいでもありました。
著者は自分が父親のように相手をコントロールしようとしていることに気づき、父親の呪いを乗り越えようとします。その姿には感動させられました。
しかし、病院のうつ病の標準治療をまともに受けず、カウンセリングだけでうつを治療しようとしたところには少し問題があります。
そもそもカウンセリングはある程度病状が落ち着いてからやるもので、生きるか死ぬかの状態でやるものではないですよ。
この方はたまたま病院に行かずに何とかなったからいいですけれど、あまり他の人にはおすすめしないでほしいです。