ブックワームのひとりごと

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【フランス国民を魅了した英雄の栄光と挫折】池田理代子『皇帝ナポレオン』感想

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皇帝ナポレオン(1)

 

あらすじ・概要

革命後のフランス。王政を倒したのはいいものの、権力を狙う人々の思惑が錯綜し、政治は混乱していた。そんな中、軍人ナポレオンが現れる。彼は圧倒的なカリスマ性と、指揮の才能によって、権力の階段を駆け上がる。

 

人々を魅了した天才の転落

人間は愚か……となる作品でした。めちゃくちゃ面白いですがめちゃくちゃ理不尽。

のっけから権力を狙う性格の悪い人間ばかり出てきて、その中で素直さや実直さ、下級兵士への思いやりを持つナポレオンがいると、そりゃ心酔してしまうだろうなと思います。

社会が混乱すればするほど、強い権力を持った指導者へのあこがれは強くなり、市民の要求に従ってナポレオンは皇帝になります。

しかし、平民にとって魅力的なナポレオンもまた善人ではありません。徐々にヨーロッパ征服や権力への野心があらわになります。そしてその下心が、ナポレオンの人生を狂わせることになります。市民にとってのカリスマが、転落していくくだりにはやるせない気持ちになりました。

今までのような英雄でなくなったナポレオンに対しての、周囲の仕打ちもひどいです。市民も、手のひらが返しをするし、権力とは、いろいろな意味で恐ろしいです。

 

戦争ものとしても面白くて、各国の将軍との息をつかせぬ攻防戦ははらはらしながら読みました。

特にナポレオンがロシアに攻め込み、一旦は撤退を決意しますがロシアの焦土作戦によって飢えと寒さに苦しめられながらフランスへと帰るくだりは描写としてもつらかったです。絵柄がリアルではないのが救いです。

フランスに占領されるよりはましなのかもしれませんが、その後のロシアの一般市民はどうなったのでしょう。

 

文庫版を入手して読んでいたんですが、コンビニコミックになってからタイトルを変更したようです。文庫版のタイトルは『栄光のナポレオン エロイカ』ですね。電子版にリンクを貼っておいた方がアクセスしやすいだろうからそうしておきます。