あらすじ・概要
今、ヨーロッパでイスラーム教徒排斥の渦が巻き起こっている。ヨーロッパはなぜイスラームとの共生に失敗したか、イスラーム教徒の出身国では何が起こっているのか。ヨーロッパに偏った報道を批判しつつ、ヨーロッパとの軋轢を目の前にしたイスラーム教徒の苦悩を描く。
平和を奪われた人々はどこへ行くのか、それが問題
イスラーム諸国と西洋の国々との関係は難解で、一読してもわからなかったです。しかし中東で起こっている戦争が、先進国を含む国々の駆け引きや権力闘争によって起こっていることはわかります。
そして、戦争の悪い影響を受けるのは貧しい人たちや国を持たない民族です。イスラーム教徒の倫理から言っても危機的状況です。
著者はイスラーム教徒に同情的ですが、移民政策を推進しているわけではありません。むしろヨーロッパが後先考えずに移民政策をしてきたことを批判しています。
イスラーム教徒を都合のいい労働力として受け入れながら、文化の違う彼らがヨーロッパでどう暮らしていくかは無策でした。
そして、生まれた土地で平和に暮らしていけないことも関係しています。
私だってイスラーム諸国に世俗化してほしいですが、それは私個人の都合であり、相手の都合ではないでしょう。
西洋的な人権感覚がキリスト教の影響下で発生したように、イスラーム教徒にもイスラーム教の世界観で人権をとらえ直してもらう必要があるのかもしれません。
『トルコ 建国一〇〇年の自画像』と似てるなと思ったら、あとから同じ著者であることに気づきました。記事の末尾にそちらの感想記事のリンクを貼っておくので、参考にしてください。