ブックワームのひとりごと

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冒険者、就活をする 田中ロミオ『犬と魔法のファンタジー』感想

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『犬と魔法のファンタジー』を読みました。

このイラストかわいいですね。

犬と魔法のファンタジー (ガガガ文庫)
 

 あらすじ

冒険時代は遠い昔。宮廷大学に通うチタンは、就職活動に行き詰っていました。送られてくるお祈り手紙、内定を勝ち取っていく周囲。そんな中、冒険組合で飼っていた犬が原因不明の病気になり、気の合わない組合仲間のチアリーと原因を探すことに……。

ファンタジー世界の就職活動怖い

就職活動怖いなっていうのが第一の感想です。就活の闇がわんさと盛り込まれている……。

ファンタジー世界に就活を足すという発想の勝利ですね。世の中にはいろんなファンタジーがあふれているけれど、就活ファンタジーというのはさすがに初めてなんじゃないですかね。一見わけのわからないネタですが、読んでみると意外と説得力があるのが恐ろしいです。

自分を殺してでもレールを行くか、自分が自分らしくあるために道なき道を行くか……。そういう悩みは人生の転換期には必ず向き合わなければいけないんですが、「就活」というテーマはそれを描くにふさわしいものですね。

ラストシーンで語ったチタンのせりふが一番良かったです。道なき道を行っていてもひとりではない。過酷な生き方を強いられるとしても、そう思える瞬間があれば少し救われます。

この世界観が好きなので続刊を読んでみたいんですが、どうやら続きはないようです。でも就活が終わってしまったら、テーマもなくなってしまうから無理かな……。

まとめ

学生が読むと暗い気持ちになることうけあいの、哀しくも愛しい就活小説でした。

でも最後にちょっと前向きになれそうなところが優しいです。