光文社古典新訳文庫が個人的マイブームです。本当に読みやすいですね。
あらすじ
学校で、雪玉によって負傷したポールは、友人のジェラールによって部屋に運ばれる。そこには姉エリザベートとの閉じた世界があった。歪んだ関係の姉弟と、それにかかわった少年少女たちの愛憎劇。
どう見ても病理家庭
病理家庭、機能不全家族とはこのことだ、と思うくらい闇の深い話でした。そういう家庭を援助している人が読むと思うところあるのではないでしょうか。
ポールとエリザベートの関係は共依存的だし、それに巻き込まれた少年少女もどこか人として欠けたところがあります。そういうどうしようもない人々がどうしようもないことをしてどうしようもない結末に向かっていく話です。
ただ、そういうどうしようもなさが面白いのも事実です。人が破滅していく様子を見るのは、ある種の快感があります。私は登場人物がひどい目にあっているとわくわくするタイプなので、結構楽しかったです。
悲劇というには生々しい
この作品は一応悲劇として紹介されているらしいですが、私はあまり悲劇という感じを受けませんでした。むしろだいたい自業自得なので、悪人の破滅譚みたいな印象でした。少なくとも、きれいな悲劇ではないですね。
しかし、彼らなりに「これしかない」と思って選択をし続けた結果、こういう結末になったんだろうなと思います。本当は、もっと選択肢があったのに、それに気づいていません。
そういう視野の狭さが、人を破滅に導く。思えばこれは、現実に機能不全家族に暮らしている人も同じかもしれませんね。
「どうにかならなかったのか」と思い、「どうにもならなかった」とも思う、そんな話でした。
まとめ
悲劇というにはあまりにも生々しい、あまり悲劇に酔わせてくれない話でした。
でも、そこがやるせなく、どうにもならなくて面白かったです。