このレビューを読んで気になった本です。
書籍概要
牛や豚、昆虫、鳥……田舎にいるさまざまな動物を、著者は短い文章で描き出していく。日常の中の自然を見つめる日記文学。
どこがいいのか説明しにくい
読んでいて思ったのが、「めちゃくちゃ感想を書きにくい本だ」ということです。
明確なストーリー性はなく、ただ淡々と動物のいる情景が描き出されていくだけの本です。だからどういうところが面白かったのか説明しにくいです。
ただ、文章はものすごくうまいです。比喩はユニークだけれど気取った感じがしないし、言葉からするするイメージへと変換できる軽快さもありました。
私の好みのタイプの作品ではないんですが、小説の情景描写が好きな人は好きだろうなと思います。
情景描写だけを抜き出してえんえんと語っているような本なので、「面白い」というより「美しい」本かなあと思います。読む写真集みたいな気分になっていました。
全体を通した俳句っぽさ
これの感想で「俳諧に似ている」というのがあったのだけれど、なるほど納得ができる意見だなあと思いました。
たとえば「蛇」の項目だとこんな感じになっています。
長すぎる。(P106)
蛇の項目がこの一言だけというのが笑いました。でも、なんというか、著者の実感みたいなものを感じるんですよね。
文章ってこういう表現していいんだな、と目からうろこが落ちる心地がしました。
そういうシンプルな言葉から、意図を考えていくというのは確かに俳句に似ています。
補足しておくと、こういう短い項目は少なくて、だいたいの項目は1~3ページくらいあります。
まとめ
好きなタイプの作品ではないんですが、好きな人がいるのはわかる作品でした。
「文章ってこういう表現をしていいのだな」と思ったという点は新鮮でした。
- 作者: ジュール・ルナール,Jules Renard,岸田国士
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1954/04/19
- メディア: 文庫
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