ブックワームのひとりごと

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短い文章で動物を描いたシンプルな本 ジュール・ルナール『博物誌』感想

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博物誌 (新潮文庫)

このレビューを読んで気になった本です。

huyukiitoichi.hatenadiary.jp

 

書籍概要

牛や豚、昆虫、鳥……田舎にいるさまざまな動物を、著者は短い文章で描き出していく。日常の中の自然を見つめる日記文学

 

どこがいいのか説明しにくい

読んでいて思ったのが、「めちゃくちゃ感想を書きにくい本だ」ということです。

明確なストーリー性はなく、ただ淡々と動物のいる情景が描き出されていくだけの本です。だからどういうところが面白かったのか説明しにくいです。

ただ、文章はものすごくうまいです。比喩はユニークだけれど気取った感じがしないし、言葉からするするイメージへと変換できる軽快さもありました。

私の好みのタイプの作品ではないんですが、小説の情景描写が好きな人は好きだろうなと思います。

情景描写だけを抜き出してえんえんと語っているような本なので、「面白い」というより「美しい」本かなあと思います。読む写真集みたいな気分になっていました。

 

全体を通した俳句っぽさ

これの感想で「俳諧に似ている」というのがあったのだけれど、なるほど納得ができる意見だなあと思いました。

たとえば「蛇」の項目だとこんな感じになっています。

長すぎる。(P106)

蛇の項目がこの一言だけというのが笑いました。でも、なんというか、著者の実感みたいなものを感じるんですよね。

文章ってこういう表現していいんだな、と目からうろこが落ちる心地がしました。

そういうシンプルな言葉から、意図を考えていくというのは確かに俳句に似ています。

 補足しておくと、こういう短い項目は少なくて、だいたいの項目は1~3ページくらいあります。

 

まとめ

好きなタイプの作品ではないんですが、好きな人がいるのはわかる作品でした。

「文章ってこういう表現をしていいのだな」と思ったという点は新鮮でした。

博物誌 (新潮文庫)

博物誌 (新潮文庫)