今日の更新は、『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』です。
確か去年のハヤカワ電子セールで買ったものです。
あらすじ
大学生の空魚(そらを)は、条件を満たすと入れる「裏世界」で鳥子と出会う。お金稼ぎになるとも言われ、裏世界に消えた友人を探す鳥子に、空魚は付き合わされることになるのだが……。
ポップでチープだけれど下品ではない
ネットスラングが頻出する口語のような文体だけれども、ネットロアや都市伝説をテーマにした作風に合っていました。
ポップでチープだけれど、下品ではない塩梅で読みやすかったです。それは、それぞれ訳ありである彼女らの性格や生き方について、冷笑するようなところがなかったからだと思います。
明るいからっとした雰囲気と同時に、空魚と鳥子のピクニックには破滅的なところも感じさせます。ふたりが過去に抱える虚無と、異形になってしまった体に、から元気が乗っかっています。彼女らが破滅に向かわずに済むのか気になります。
匿名掲示板のオカルトコピペや怖い話を題材にしたホラーシーンは真面目に怖いので、ホラー耐性がない人にはおすすめしません。SFでありながら、幻想文学のような、想像力を浸食されていくような怖さです。
幽霊ものとは少し違う、説明のできないこと、理不尽なことに対する恐怖が丁寧に描かれています。
とはいえ続刊では、異世界の謎も解き明かされるのでしょうか。それは怖い事実なのか、安心できる事実なのか。おそらく前者だろうなあ。
百合としては、女の子の描写が地に足がついていて好きでした。
空魚と鳥子はわりと性格に問題があるコンビなのですが、ところどころかわいげがあって、憎めなかったです。
特に鳥子の行動に一喜一憂してしまう空魚にはほほえましくなりました。
まとめ
百合としても冒険SFとしても、まだまだこれからという終わり方なので、一冊の本としては物足りないところがあります。
でも続きが気になるので、機会があったら続刊も買いたいと思います。
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 宮澤伊織
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/02/28
- メディア: Kindle版
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