今日の更新は、タニア・クラスニアンスキ『ナチの子どもたち 第三帝国指導者の父のもとに生まれて』です。
あらすじ・書籍概要
ナチス政権が崩壊したあと、その指導者の家族はどうなったのか。子どもたちを追跡し、彼らの行動から「親の罪を背負うとはどういうことか」を紐解いていく。親の罪を否定するもの、親と対決するもの、その生き方は様々で……。
親の罪を受け止めることは本当に難しい
父親に溺愛されたグドルーン・ヒムラーやエッダ・ゲーリングは父親の罪を受け止められず、否定して極右運動に近づき、その旗印のように扱われています。
一方で真実を知りたいと望むニクラス・フランク、聖職者となったマルティン・アドルフ・ボルマン・ジュニアなど、何らかの形で親の罪を清算しようとしたり、向き合おうとしたりする子どもたちもいます。
親の罪を認めるのは、とても難しい。かわいがられていたらなおさら。親の罪を受け止め、行動を起こそうとする子どもたちでさえ、最初からそれを受け入れられていたわけではありません。
正直なところグドルーンやエッダの行動は全然不思議ではないのですが、被害者の目から見れば納得がいかないですよね。
「かわいがられていた」という優しい記憶に固執して、残酷な現実を受け入れることができない。防衛反応というのは生々しいです。
戦後のドイツでは、ナチズムについて語ることがタブーとされていました。戦争後に生まれた新世代の登場で、それが破られつつあったそうです。
その中で、自ら語ろうとするアルベルト・シュペーア・ジュニアやニクラス・フランクの存在は、強い価値があったでしょうね。
それぞれの章の序盤で、彼らの親が何をしたのか説明してくれているので、ナチスの知識がない人でも大丈夫です。
まとめ
「親の罪を受け入れること」はとても難しいのだなあとしみじみ思いました。彼らほどじゃないけれど、戦争中はほとんどの人が何かしらの罪を犯してしまったのだと思う。そういう意味では他人事ではないですね。
明るい話ではないですが、読めてよかったです。