今日の更新は、永田洋子『十六の墓標―炎と死の青春』です。
前巻の感想はこちら。
あらすじ・書籍概要
山岳ベースに移り、連合赤軍を結成した永田洋子ら。閉鎖的な環境の中で、総括・自己批判は暴力的な意味合いを強めていく。そしてリンチによって衰弱死していく仲間たち。著者らが逮捕されるまでを綴った下巻。
閉鎖的な環境で行われる共食いのようなリンチ
淡々としているのでさほどグロくはないです。しかししょうもないことで批判し合った結果暴力的な総括をし、衰弱死させて葬るということを何度も繰り返しすさまは狂気的です。
どう考えてもおかしい、おかしいのですが、閉鎖的な場所で暴力をふるううちに誰もがそこから逃げ出せなくなっていく。逃げる場所はたくさんあるのに自ら極限状態に進んでいく姿は異様でした。まるで動物が共食いをするようです。
上巻の序盤では、政治活動にハマってはいるけれどここまでのことをする人々ではありありませんでした。読みながら上巻で活動をやめた人たちのことを思い出しました。彼らはある意味慧眼で、冷静だったのだと思います。
著者は反省はしているけれど、あとがきを読んで、「活動の失敗」「活動の敗北」ととらえていそうなところが甘いな、と思いました。
彼女のやったことは人間としての失敗、敗北なんですよね。左翼活動はもはや関係がないんです。何をお題目にしていても結果は結果。
同時に、甘いけれどもわかりやすく狂っているわけではありません。犯罪者の手記なので自己弁護や保身の要素はあると思うんですが、それでも文面を読む限りでは彼女は冷静です。政治活動に出会わなければ著者は普通の人だったかもしれません。
彼女の失敗とは、人より思想を優先させてしまったこと。結局人が思想のためにあるのではなく、思想が人のためにあることを忘れるとこういうことになるんだと思います。
まとめ
あまり気軽におすすめできない本ですが、私は読んでよかったです。ただ彼女の視点だけで読むと客観性が足りないので、機会があれば別視点のものも読みたいです。
本当に、おぞましい事件でした。