ブックワームのひとりごと

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コミュニケーションがド下手な親に育てられた娘の悲劇―みお『極彩色の食卓 カルテットキッチン』

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極彩色の食卓 カルテットキッチン (ことのは文庫)

今日の更新は、みお『極彩色の食卓 カルテットキッチン』です。

 

あらすじ・概要

発表会をきっかけに、ピアノが弾けなくなってしまった桜。そんな中、幼馴染の両親が経営しているカフェに燕という男がバイトの面接に来る。彼がカフェで料理を作るうちに、幼馴染の夏生や、その両親、そして多忙でなかなかきちんと話のできない、桜の母親との関係にさざ波が立っていく。

 

母親が自発的に桜との関係を改善しようとしないのがつらい

これ、仕事が忙しいとか命を守る仕事だとかは全く関係がなくて、問題の本質は桜の母親が子どもとのコミュニケーションがド下手なことですよ。

仕事が忙しくてもきちんと子どもとコミュニケーションが取れる親はいます。それなのに仕事が忙しいから、医者という重要な仕事だからと言うことが強調されて嫌でした。もし本当に子どもに愛を伝えられないほど仕事に打ち込まないといけないと思っているのなら、それは仕事好きではなく仕事依存症だから周囲も止めた方がいいと思います。

 

かくなる上は、桜は本気で母親と対決し何らかの決着を得るか、母親のくびきから逃れて母親以外の愛する人を見つけた方がいいと思うのですが、この作品の結末ではその辺なあなあに終わってしまいました。

諸悪の根源は母親がきちんとコミュニケーションを取ってこなかったことなのに、最後まで母親に自発的に関係を改善しようとする努力が見られませんでした。エンドのあとで和解がもたらされるのかもしれませんが、そこはきちんと作中で意思を表明してほしかったな、と。あれだけ子どもを裏切り続けてきた親が、そう簡単に信じてもらえるとは思えませんが……。

 

全体的に食べ物で癒される問題ではありません。コミュニケーション不全の親の元に生まれてしまった子どもの問題をきちんと描き切れていませんでした。

極彩色の食卓 カルテットキッチン (ことのは文庫)

極彩色の食卓 カルテットキッチン (ことのは文庫)

  • 作者:みお
  • 発売日: 2020/05/20
  • メディア: 文庫
 
極彩色の食卓 (ことのは文庫)

極彩色の食卓 (ことのは文庫)