今日の更新は、赤池キョウコ『ヨーロッパスピリチュアル街道を行く!』です。
あらすじ・概要
ロンドンに住む著者は、大病をしたことをきっかけに「祈り」について興味を持つようになる。聖水の街、ルルドや癒しの奇跡の伝説を持つ教会を巡り、ケルトの伝説スポットを訪ね、アウシュビッツ収容所で歴史について考える。
祈りは何のためにあるのか
普段あまりこの手の本は手に取りません。ですが、Amazonレビューに「結構真面目な話として描かれている」らしいと述べてあったこと、著者が紹介している場所がかなりニッチなところに興味を持ちました。
日本にいるとキリスト教における巡礼の話をなかなか聞くことがありませんから、実際に現地に行ってみて感じたことを描いてくれるのは臨場感がありました。信心のない人間にとっては「雰囲気に飲まれているのでは……」という部分もありましたが、昔の人がそれだけの感情をこの宗教施設に込めたのも確かなんでしょうね。
あまり「祈り」というものを信用していない私は、著者とは価値観が違います。ですが「祈り」をただ願いを叶えるため、運を授かるためではなく自分の内面と向き合う行為だとする著者の価値観はきちんと作品の中で筋が通っています。
そもそも著者が出会った病も、作中に登場するアウシュヴィッツで行われた惨殺も、とても理不尽で、ただ理屈だけを並べられても納得がいかないことだと思います。そういう理不尽に決着をつけるために、宗教や信仰が必要な局面があるのでしょうね。
この著者の他の作品見てるとタイトルがだいぶ怪しいので心配になるんですけど、この本に対しては面白かったです。