今日の更新は、『空の青さを知る人よ』です。
ブログなどにまとめる時間が取れてないんだけど、映画『空の青さを知る人よ』、山田太一が書いたように素晴らしい脚本と、日本のアニメ描写のトップレベルの繊細な生活描写、内容では『天気の子』にも引けを取らないほどの傑作です。なのに台風19号で公開初日を叩き潰され、その後も動員が伸びてません
— CDB@NHKクローズアップ現代+のネット企画に参加中、13日放送予定 (@C4Dbeginner) October 18, 2019
この連続ツイートが気になって見に行ってしまいました。
あらすじ・概要
事故で両親を失い、二人で暮らしてきたあかねとあおいの姉妹。「東京に出てバンドをする」と言うあおいは、自分に音楽を教えてくれた相手、しんのと再会。しかしシンノは、子どものころ出会ったままの姿だった。一方あかねは、音楽イベントにやってきた演歌歌手のバックバンドに、かつての恋人である慎之介を見つける。
つまりはあかねが最強だったという話なんだよ
いや~この作品のキャラはだいたいダメですね。
夢をうまく叶えられずにくさくさしている慎之介を筆頭に、あかねの幼馴染であかねに惚れているけれどどこか行動が空回りしているみちんこ、そしてひねくれて中二病気味の主人公あおい。
その中で、あかねがものすごく確固とした自我を持っています。
両親の事故をきっかけに東京行きを諦め、年の離れた妹、あおいを育てて暮らしてきたあかね。あおいも含めて、周囲は彼女が「街に閉じ込められている」「自分を犠牲にしている」と思っています。
しかし、当事者であるあかねは、自分の人生を肯定的にとらえています。これが自分にしかできなかったことなのだと。
あかねは、高校時代の卒業アルバムにこう書いています。
「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」
空の青さ、つまり「自分にしかできなかったこと」をやりとげようとしているあかねが、一番この作品で自由である。つまりはあかねは最強なんですよね。
そのことを理解せず、勝手な欲望を押し付けてくる周囲は滑稽で、でも、人間味があってどこか憎めませんでした。
姉妹の物語と同時に進行されているのが、高校生のしんのと31歳の慎之介、ふたりでひとりのキャラクターの物語です。
若いゆえのまっすぐさと明るさを持つしんのと、東京で人生の闇を味わい、疲れた大人になってしまった慎之介。これは過去の自分と現在の自分が、お互いを受け入れあう話でもあります。
最初の慎之介は本当に嫌な奴だったけれど、ラストの怒涛の展開でいろいろ許してしまいました。捨て去ったものをもう一度取り戻して、また歩き始めていくんでしょうね。
姉妹の話、故郷と東京の話、未来と過去の話、さまざまな要素が絡まりあっている作品ですが、ごちゃごちゃした感じはしないところがよかったです。
いくつもの物語が重なり合って、広がっていくような作品でした。
あと背景美術が、写真をトレースしたというより写真を加工して加筆したような感じになっているのが面白かったです。シナリオとも相まって、ドラマを見ているような気分になりました、まさしくロケ地って感じですね。
『空の青さを知る人よ』まとめ
わかりやすいエンタメやお涙ちょうだいではないのでおすすめするのが難しいんですけれど、アラサーに差し掛かった人には刺さると思います。
もうすぐ公開終了しそうなので早めに見に行ってください!
関連記事