あらすじ・概要
田舎の進学校、北高。そこで学ぶ生徒たちや周囲の人間は、それぞれに悩みを抱えている。保健室登校の友人を持つ少女、建物の中で交際する寮生に悩む寮を管理する女性、進学で別れ別れになるカップル。みっともなくてみずみずしい、青春を描いた連作短編。
かっこよくない人たちの青春模様
登場するキャラクターは、基本的にかっこよくありません。不登校の友人を裏切りそうになる女の子、司法試験に何回も落ちている男、他に好きな人がいる女の子に片思いしている少年。
そんなかっこよくない人間たちが、ふと、青春のきらめきを体験するところがよかったです。きらめきははかなく、すぐ過ぎ去っていくものでしょうが、それでも救いになります。
余談だけれど最近失恋をテーマにした作品を探していて、この文庫本にたどり着きました。この本には二本も失恋短編が収録されているので、同じ性癖の人はぜひ。
以下、印象的だった話。
「金子商店の夏」
学生たちが集う、ちょっとした食料品店の家に生まれた男の話。
自分の夢をどのタイミングであきらめるかというつらい問題に、北高の生徒たちが交差していくところが面白かったです。
苦い挫折から、少しだけ希望が見えてくる話でした。
「ルパンとレモン」
野球部の少年が吹奏楽部の女の子に恋をする話。
成就には届かない恋物語最高です。嫌いじゃないのに、好きにはなれない感情がつらい。