ブックワームのひとりごと

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女性におすすめの男性向けレーベルライトノベル【電撃文庫編】9選

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昔こんな記事を書いたんですが、そろそろ情報が古くなってきたので書き直したいと思っていました。

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そのままリライトするのも面白味がないので、今回はレーベルごとに分けて書いて行こうかなと思います。今回は電撃文庫。

 

 

 

不良少女の漫画を手伝うはめになってしまったけど彼女の夢を応援したくなった『スイレン・グラフティ わたしとあの娘のナイショの同居』

多忙な母親を持ち、双子の弟妹の世話をしながら生活している彗花は、クラスメイトの不良少女、蓮が漫画を描いていることを知ってしまう。さらに彼女の原稿用紙を双子が汚してしまい、彗花は償いとして蓮の新人賞応募を手伝うことに。原稿をしているうちに、蓮と彗花は心を通わせていく。

かわいい女の子がキャッキャウフフするだけの話かと思っていましたが、ふたを開けてみると、非常に真面目で硬派な青春小説でした。

見どころは彗花と蓮の関係性です。安易に「それっぽくエモい」描写に頼らず、丁寧に違った境遇や価値観を持つふたりが仲良くなっていく描写を積み重ねていきます。

漫画を描く、食事をするなど、内容としてはかなり地味なシーンが多いのに、ストーリーや描かれる心理がきちんとしているから気になりません。

百合というよりも友情ものとしての様相が強い、青春小説でした。

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娘を亡くした家にやってきた絵の天才少女は、周囲に絶望と救いをもたらした『月の盾』

妹を亡くした少年、暁の家に死んだ叔母の娘、桜花がやってくる。一家は子どもを失くした寂しさから桜花に優しく接する。やがて桜花が天才的な絵の才能を持つことがわかり、周囲は桜花に絵を描くことを強く勧める。しかし彼女の絵が有名になったとき、ある真実が明らかになる。

とにかく心理描写が丁寧で、登場人物の哀しみや喜びがストーリーからびしばし伝わってきます。

子どもを失い失意の中にあった一家が桜花という少女に救いを感じていること、桜花が迷いながら絵を描くことを喜びとしていく過程、桜花の絵によって救いを感じることができた周囲の人々。

と、これなら美しい話のままですが、桜花の父が連続殺人犯だということがわかってから様相が変わってきます。そして桜花がより良い絵を描くためにやったことが、周囲と桜花自身の運命を大きく変えてしまいます。その変わっていく過程はつらかったですが、オチがとても美しく救いがありました。

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月の盾 (電撃文庫)

月の盾 (電撃文庫)

  • 作者:岩田 洋季
  • アスキー・メディアワークス(ASCII MEDIA WORKS)
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途切れ途切れの時空をさまよう少女とそれを助ける利発な少年『タイム・リープ あしたはきのう』

高校生の翔花は、ある日目覚めると月曜日のはずのその日は火曜日だった。その後も次々に時系列が飛び、翔花は混乱する。翔花は記憶のない月曜日の日記に書いてあった内容に従い、クラスメイトの若松和彦に相談してみる。初めは疑っていた若松だったが、翔花の様子を見て彼女に協力する。

パズルのようなプロットが徐々にはまっていき、話が進むにつれて全体像がわかってきます。そして最後に迎える大団円はとても美しかったです。

ちょっとひねくれているものの、頭がよく義理堅いイケメンが女の子を助けてくれる話なので、女性にもウケそう。

いわゆるスカした野郎で失礼な発言も多いんですが、必ず約束は守ってくれるし、頭の回転が速くて状況の把握も早い。

そして若松が普通の時間を生きているのに対して、翔花が途切れ途切れの時間をさまよっているので、時空を超えたラブロマンスとしての性質もあります。

しかし、ネタバレが致命的な作品のため、詳しく説明すると面白さが減ってしまうのが難点です。感想が書きにくい……。

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化け物と交じり合った若者たちのあがき『哀しみキメラ』

塾のエレベーターで「モノ」に襲われ、その「モノ」と融合してしまった純たち四人の若者。強化された体、食べても治らない空腹。生きていくためには「モノ」を食らっていかなければならない。純たちは共同生活を送りながら、「モノ」を退治する生活をする。

主人公の純、元医学部志望で物静かな水藤、生き残ることに貪欲な十文字、紅一点で明るい彩佳。四人はモノを食らって変わっていく自らの体に戸惑いながら、生き残るために、人間らしい生活をするために尽力します。

キャラクターがすれ違いまくる作品なんですが、その原因が「ホウレンソウがなされていないから」とか「誤解があるから」ではなく、あくまで「価値観が違うから」だというのが泣けてきます。

秘密はあれど伝えるべきことは伝えているし、お互いに大切にしたいという気持ちはあるし、自分のやるべきことに手を抜いているわけではない。それでも一番大事なものが違うから、対立してしまう。だからこそこの話は「哀しい」んですよね。

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かわいくて責任感のあるママと誠実な青年のラブストーリー『娘じゃなくて私が好きなの!?』

死んだ姉の代わりに、姪を我が子として育ててきた綾子。そんな綾子は、ある日娘の幼馴染で息子同然に思ってきた青年、巧に告白される。彼は子どものころからずっと綾子を想ってきたのだという。彼の将来を思って、綾子は巧に幻滅されようと策を講じるのだが……。

ナイスバディのかわいいママを愛でる作品……というのはもちろんなんですが、このママである綾子のキャラクターがすごく魅力的なんです。

新卒で就職したばかりのときに5歳の姪を娘として引き取り、女手ひとつで娘を高校生に育て上げ、しかもきちんと在宅の仕事をこなしている優秀なワーキングマザー。娘のためにお酒を飲まないようにしたり、作戦の一環でも無駄遣いはできなかったり、責任感を持った女性であることがわかります。

そして巧も、10歳のときから一途に綾子を思い続けていたけなげな青年です。どれだけ綾子が世間体を並べ立ててもなんのその。その思いの強さにこっちまで照れてしまいそうなほどです。本当にいい子で誠実な男なので、綾子と幸せになってほしいと願ってしまいます。

お色気シーンも結構ありますが、ストーリー上自然な形で挿入されているのと、巧があくまで紳士的に対応するので下品な感じはしませんでした。

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安心して頭空っぽにして読めるバディアクション『地獄に祈れ。天に堕ちろ。』

あの世から死者があふれ出してしまった東凶(とうきょう)。ミソギは、閻魔大王からの借金を返すために亡者を冥界に送り返している。彼は、泳(くくり)という少女を助けたことから、「魂に効く」という麻薬にまつわる陰謀に巻き込まれる。麻薬を追ってきたアッシュという聖職者と共闘する羽目になるのだが……。

 この人物紹介の時点で、「ああ、これは頭空っぽにして読むライトノベルなんだな」とわかりました。実際にそうでした。

しかしながら、読み進めていくとちゃんと計算されて作られていることがわかります。キャラクターの設定と展開がかみ合っていて無駄なところがありません。

読者が気持ちよく頭空っぽになれるように、爽快感のある展開も、個性的なキャラクターも作りこまれています。さながら「最高級の駄菓子」みたいな作品です。

ミソギの相棒アッシュがイケメンだし、女性に失礼な描写もほとんど出てこないので、女性にもおすすめです。

基本は男男バディものですが、男女の巨大感情も存在するので男女CP好きな人にもいいと思います。

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コミカルだけど硬派なフェンシング青春小説『Let it BEE!』

内気な少女、有星結恵は顧問の蜂谷巴に誘われ、廃部寸前のフェンシング部に入部。しかし彼女には、先端恐怖症という大きなハンデがあった。団体戦に出場するため、巴とフェンシング部のメンバーたちは結恵をフェンサー(フェンシング選手)に育て上げようとする。

ライトノベルは話を分かりやすくするために、一冊の中の情報量が少なくなりがちなんですが、これは展開に重厚感があって面白かったです。

初心者、結恵の成長を軸に、フェンシング部のメンバーの優しさ、フェンシングという競技の面白さ、そして心を震わせてくれるライバルとの出会いが、詰め込まれていて面白かったです。

ライトノベルらしいコミカルさがありながら、中身は硬派なキャラクターも良かったです。

楽しい掛け合いをしつつも、基本は「フェンシングで勝ちたい」という気持ちが一番大事にされているところが、スポ根らしくて楽しめました。

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廃墟になった日本で何のために生きるか? 『エスケヱプ・スピヰド』

日本に似て非なる国、八洲(やしま)。人々は戦争で廃墟になった町に取り残されていました。その中の一人、叶葉はある少年と出会う。彼は戦争の時代を生き抜いた、高度に発達した武器だった。

武器の主人公とその主人の少女。次第に交流を深めていく二人……と、流行に合わせるなら性別が逆な気がします。

王道とは若干外れた設定ですが、その分こだわりが感じられてよかったです。二人が心を通わせていく過程が丁寧に描かれていて、自然と応援したくなってきます。少年少女のわちゃわちゃかわいかったです。それでいて無駄なお色気はなく、硬派に話が進んでいくのがまた安心しました。

恋愛要素はにおわせる程度……と思いきやシリーズ最後でとんでもない爆弾を落としてきました。最高の結末すぎる。

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給食のデザートをいじめっ子から奪取せよ!『給食争奪戦』

バレンタイン、給食のケーキをいじめっ子から奪うため、主人公の陰謀が始まる……。後ろ暗い子に届く謎の手紙、万引きグループが誰かを助ける話など、小学校を舞台にした連作短編。

何より話の流れが面白いです。複雑なプロットを立てているのにきちんと内容が理解できます。

そして決していい子ばかりではない小学生たちが、事件を乗り越えることで一歩前に踏み出していくところが心を打ちます。

若干文章に書きなれていないような拙さがあるけれど、それは将来的に解消されていくだろうし……と思ったら、作者この本しか出してなかったです。ぜひ次回作を出してもらいたい!

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以上です。興味があったら読んでみてください。