ブックワームのひとりごと

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自分の性欲の暴力性に悩む男が女性と接する術を模索するまで―中野でいち『hなhとA子の呪い』

hなhとA子の呪い(1)【特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)

 

あらすじ・概要

ウェディング会社の社長である針辻真は、性欲を嫌い、性欲抜きの愛こそ真実の愛というポリシーを持つ。しかし彼の元に、「A子」という謎の少女が現れる。彼女は針辻の内なる性欲を解放しようと働きかけ、悪魔のようなささやきをする。彼女は幽霊なのか、幻覚なのか……。

 

性欲の暴力性を持ってなおどうやって女性と付き合うか

エンターテイメントとというよりも、男性の性欲に対する葛藤を漫画にしたらこうなったという作品です。漫画好きよりも、フィクションを通して思索を深めたい、悩みを解決する方法を探したいと思っている人に好まれるタイプの作品かもしれません。

 

己の持つ性欲が、どうしようもなく暴力性をはらんでいることに悩む針辻。道行く女子高生を「性的だ」と決めつけてしまう、思慕する相手にも性欲抜きで相対すことができない、相手はひとりの尊厳を持った人間だというのに。

「実際に手を出さなければいいじゃん」とか「妄想に罪はない」と言うのはたやすいです。しかしそう割り切るには、針辻は真面目で、優しかったのです。

同時に、性愛の暴力性について「どうしようもないんだ」「身を任せるしかないんだ」と決断した人間の末路についても描かれていて、やはりこうはなりたくないなと思います。

自己嫌悪と葛藤の中、どうやって「性欲の対象」とつながり関係を持っていくかがこの作品のテーマです。

 

多分性別やセクシュアリティでがっつり感想が変わる作品だろうなあ……と思い、いろいろ感想を検索してみました。やっぱり自分のままならない性欲について悩む男性は多いのだなあと感じました。

多分わかりやすい答えはなくて、平均台を歩くようにバランスを取りながら生きていくしかない問題なのでしょう。

 

一部ストーリーの整合性が取れないところや、投げっぱなしになっている設定もありますが、ちゃんとテーマは描き切っているからこれはこれでアリかと。

くせが強く万人受けしない作品ですが、人に言えない欲望を抱えている人には救いになる作品かもしれません。