ブックワームのひとりごと

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男性漫画家が家庭生活を描くコミックエッセイおすすめ7選

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1/12スケールドールハウスミニチュアフィギュア(5ピース/個セット)、木製人形家族メンバー両親、子供と母と父

コミックエッセイを描くのは女性漫画家が多いだけに、その分野のマイノリティである男性漫画家のことは意識して注目して読んでいます。

今回はその中から「家庭を持つ男性」の描いたコミックエッセイをまとめました。

 

突然父親になった中年男性の戸惑いと適応『父娘ぐらし 55歳マンガ家が8歳の娘の父親になる話』

50歳を過ぎてひとり身で、このまま家族を持たず暮らしていくのだと思っていた著者。しかし二児を持つシングルマザーと結婚することになり、この年にして突然の子持ちに。さらに家庭の事情で8歳の娘とふたり暮らしをすることに。著者は戸惑いつつも父親として適応していく。

いい加減な独身男が親に、というところがこの漫画のひとつのギャップであり面白さだと思います。たまたまよくなついてくれた継子である娘に、家族がいることも悪くないと思えるようになった著者が印象的でした。

著者の周囲も、理解のある人が多くてよかったです。コミックエッセイなのでいいところを優先的に描いているところはあるかもしれませんが、それでも血のつながらない孫を受け入れてくれる著者の両親や、実質的なシングルファザー生活を見守るママ友たちの描写に癒されました。

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兼業主夫の日常は洗練されてもいないしかっこよくもない『今日も妻のくつ下は、片方ない 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました』

音楽関係の仕事をしていたが、持ち前の不器用さで貧困に陥っていた著者。そんな中、恋人にプロポーズされ、兼業主夫として生きていくこととなる。だが、主夫としての日常は、かっこよくもなく洗練されてもいなかった。情けなさとユーモアと、それでも存在する日常のやりがいを描いたコミックエッセイ。

なんとなく家事をやる男のジェンダーについての洞察を期待して読んだらそういう本ではありませんでした。いやそういう面もなくもないんですが、それより強く描かれているのは、とほほな日常です。

でも実際家事をやるってそういうことのほうが多いよね、と共感できました。完璧にかっこよく家事をやるなんて大変すぎて無理! たとえ主夫という家事労働者であってもです。

日々の家事のしょうもない失敗やささやかな葛藤をふふっと笑いながら読めて楽しかったです。

印象的だったのが妻の犬山紙子氏の豪胆でおおらかな性格で、不器用な著者の支えになっているのだろうなとわかります。

コミックエッセイなのでいいところだけ描いてあるところはあるでしょうが、それでもお似合いのカップルだなあと思いました。

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お金の管理が苦手な妻のためにシステムを変えたら経済状況が好転した『お金オンチ夫婦 借金500万からのビンボー脱出大作戦』

妻のリボ払いでの失敗を漫画にしたことをきっかけに、家庭の経済状況を改善する漫画を依頼された著者。ファイナンシャルプランナーと協力して工夫しようとするも、肝心の妻は乗り気ではなく……。しかしアイデアを実行していくうちに、夫婦は金銭管理を身に着け始める。

正直変にプライドが高くて、お金にだらしない著者の妻にはイラっとさせられることも多かったです。しかしクレジットカードと違って残金がすぐわかるデビットカードでお小遣いを渡したり、生活に必要な経費は家計から出してあげたりすることで、妻は少しずつ無駄遣いをしないようになります。

この家庭には救われるものがありました。お金の管理ができないならシステムの方を変え、管理しやすくしてあげる。自力でできることもあると気づけば、家族の自尊心を傷つけることなく状況を改善できます。

借金500万円というとどんな無駄遣いをしたんだという話になりますが、内訳は奨学金、年金や税金の滞納など、普通の人でもうっかり持ってしまいがちな負債です。

そして借金は「長く付き合うもの」という言葉に目からうろこでした。急いで返すのではなく、手元にお金が残るように少しずつ返していくというのがなるほどと思いました。

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アトピーの子どもと暮らして追い詰められる夫婦『パパ、かいい!』

売れない漫画家である著者は、外で働いている妻の代わりに家事を引き受け、アトピー性皮膚炎の娘を育てている。四六時中かゆさで騒ぎ続け、夜中もかいてやらないと眠れない娘に、夫婦は疲労していく。健康食品や自然療法を次々に試しても、娘はよくならず……。

私はあまり健康食品だの自然療法だのを信じていませんが、この作品はそういうものに頼ってしまいたくなる心理を丁寧に描いていました。

常にかゆがる娘にノイローゼになりつつも、何とか治してやりたい、楽にしてやりたいという一心で、夫婦は食品やローション、自然療法を試します。病気を持つ子どもを育てる苦しみと、子ども自身への愛情で追い詰められているのです。

作中の医者は自然療法に否定的で、私も同意見なんですが、だからと言って著者夫婦の心理状態は、責められないものですよね。

主人公である著者が自分のだめなところも書いているところが誠実でいいですね。外で稼いでいる妻にコンプレックスがあったり、家でひたすら子どもの面倒を見ていることに疲弊したり。それでもちゃんと娘のことは大事に思っています。

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家族だからこそ言葉を尽くすことの重要さ『僕と妻の場合 僕たち夫婦が仲良く暮らしている理由』

漫画家の著者は、外に働きに出ている妻と暮らしている。家で仕事をする中で、夫婦が仲良く暮らす工夫とは……。「コミュニケーションが苦手」なふたりの大人が、試行錯誤の末手に入れた平穏な生活を描く。

著者と妻は、まめに感謝を口に出したり、つらいことがあると内容を丁寧に説明したり、とにかく「言わなくてもわかってもらえる」という甘えを排しています。そうすることで、コミュニケーションのコストを下げています。

言外の意味が分からない人間としては、こういう風に生きられたら楽だろうなとうらやましくなりました。もちろんお互いの協力は必須ですが、言葉をまめに交わすことによって将来の軋轢を減らしているところがすごい。

そして、実際に実行できそうなところから書いてくれるところもわかりやすいですね。漠然と、「コミュニケーションを取ろう」と言われてもどうしていいかわかりませんから。

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育児の苦労をコミカルな笑いに昇華『息子の俺への態度が基本的にヒドイので漫画にしてみました。』

漫画家の息子ゆうたは、母親が大好きなあまり父親を敵視し、意地悪な態度で接している。父である著者はそんなゆうたに手を焼いている……。子どもの理不尽さを、父親視点から語っていくコミックエッセイ。

エッセイ漫画というよりギャグ漫画かな? と思うくらい笑えます。オチまでテンポがいいですし、息子の生き生きとした表情で余計に笑えます。

実際にはもっと苦労しているんでしょうが、苦労をコミカルな笑いに昇華しているところが面白いですね。

家で子どもを育てながら、仕事もする生活ってきつそうですね……。子どもが邪魔してくるので。

子どもの暴風のような理不尽さを、自分が語り手になって解説していく著者には同情します。無理のない程度にがんばってほしいと思えてきますね。

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7割のろけの養子縁組による同性婚顛末記『同性婚で親子になりました』

同性愛者の八木裕太とパートナーの京太は、お互いを支え合うために「養子縁組」を使った同性婚を決意する。その顛末とは……。同性同士の養子縁組のしくみと、同性愛者の日常をつづったエッセイコミック。

この本は七割方のろけです。よって、他人ののろけに興味がない人には苦痛だと思います。

私自身はのろけが結構好きなので面白かったです。ラブラブな人を見るのは微笑ましいです。そしてのろけの後にありがちな、見る側への恋愛へのプレッシャーもない。ただ単にいちゃいちゃしているだけです。

しかし、コミカルに描かれてはいるものの、いろいろ気を遣って生活しているんだな……。感じました。

 性的指向をオープンにしないということは彼らが決めたことですが、それでも、「めんどくさい!」って思うことはたくさんあるでしょうね。

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以上です。興味があれば読んでみてください。