あらすじ・概要
「東洋一」を目指して作られた日本の帝国図書館。しかし、その歴史は平坦なものではなかった。図書を買う金銭が不足していた時期、マナーの悪い利用者、そして太平洋戦争中の略奪と検閲。悪い面もある歴史とともに、帝国図書館と日本の図書館の歴史を考える。
図書館の歴史とたくましい市民たち
帯に書かれている言葉はおもしろおかしい感じなのですが、中身はかなり硬派でした。内容は多いですが、読むのが大変でしたね。
歴史として見ると、図書館政策自体がかなり紆余曲折あって今の段階に至っているということがわかります。
小説を排除しようとした時期、図書館は誰のためにあるのか問題、金銭や管理が追い付かなかった時代。
当たり前ですが何もなかったところから現代の図書館が発生したわけではないんですよね。
「何のために本を集めるのか?」という問いの答えも変わり続けていることがわかりました。
個人的に好きだったのは図書館を利用する市民の側の話です。
待ち時間が長くて自暴自棄になった市民が図書館の玄関に落書きを残していくのには笑いました。「こんなにまたす図書館があるか」「満員で待って居る時は館員どもをぶんなぐってやりたい」等物騒で、不謹慎だけど面白くなってしまいました。
女性の図書館利用についても述べられています。当時は女性が図書館に通うこと自体が珍しかったため、好奇の視線で見られることも少なくなかったようです。
そんな中でも勉強や調べもののために帝国図書館を訪れる女性たちはいました。たくましいですね。まあたくましいたくましくないという評価自体がいらなくなることが、理想ではありますが。