あらすじ・概要
著者、鈴木大介は、情緒不安定で自傷行為を繰り返す恋人と結婚する。自傷行為は鳴りを潜めたものの、片付けや料理ができない、朝起きてくることができない「お妻様」に強いストレスを感じる。ある日ふたりは短期間で病に倒れ、それをきっかけに関係を見直すことになる。
妻に振り回された日々から、理解のある夫になるまで
「理解のある夫or妻」と言えば聞こえはいいですが、「理解する」までに紆余曲折を経ている家庭は多いのでしょう。この本はそういう家庭のひとつを描いています。
働きながら家事を一手に引き受けていた著者は、頻繁に「お妻様」に苛立ち、小言を言ったりものに当たったりしてきました。
しかし、自分が脳梗塞になり、その後遺症で苦しんだことで一気に「お妻様」への印象が変わります。
脳梗塞の後遺症が「脳の病」で自分でどうにもできないものであると同時に、発達障害も「脳の病」であることを実感として理解するのです。
著者は貧困に陥る人々のノンフィクションを書いており、発達障害や精神障害にはある程度理解があるはずでした。しかし、「自分が脳を損傷する」まで、「発達障害」が脳の障害であることを心から理解することはできませんでした。
知識があっても、そういう人に会ったことがなくても、「実感」するのは難しいのだと感じました。
著者自身もいわゆる「メンヘラ」系の情緒不安定な女性とばかり付き合ったり、ワーカーホリック気味だったり、頼まれてもいないのに家事にこだわったり、どこかアンバランスな部分を抱えています。
しかし著者自身のアンバランスな部分が、「お妻様」の強烈な個性を必要としたのかもしれません。
人と人が寄り添って暮らし、家族になることについて、いろいろ考えてしまう本でした。