今日の更新は、荻原規子『西の善き魔女』シリーズの感想のまとめです。
感想記事一覧
少女は首飾りをきっかけに荒野を出る―荻原規子『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』
女の園で女王候補を巡る陰謀に立ち向かう―荻原規子『西の善き魔女2 秘密の花園』
王宮にやってきたフィリエルの決断―荻原規子『西の善き魔女3 薔薇の名前』
女王の末裔は愛する人を追って南に向かう―荻原規子『西の善き魔女4 世界のかなたの森』
走る学者少年と女王の孫の帰還―荻原規子『西の善き魔女5 闇の左手』
荒野に暮らす少年少女の出会い―荻原規子『西の善き魔女6 金の糸紡げば』
女王候補は東の国で陰謀と出会う―荻原規子『西の善き魔女7 銀の鳥プラチナの鳥』
主人公たち何もわかってないのでかわいそうだよね―荻原規子『西の善き魔女8 真昼の星迷走』
総評
とにかく読者を引っ張っていく力が強い作品でした。隠された女王の孫の大冒険。そしてルーンとフィリエルの恋物語。「続きが見たい」と思わせる語り口が素晴らしいです。
フィリエルがルーンを助けるために物理的に努力するところが好きです。愛が重い女の子と、男を救う女の子大好き。愛されるだけではなく主体的に愛する女であるところが、フィリエルのかっこよさですね。
一方のルーンも面倒な男ではありますが「フィリエルは僕が守ってあげなきゃ」と思っていそうなところがいとおしいです。つまり守る女と守る男のカップルなんですよ。力関係が行ったり来たりしながら仲が進展していくのがいい。
世界観のどんでん返しも面白かったです。登場人物がわけがわからなくてぽかんとしているところはかわいそうですが、読者側からは「あ、そういうことなのね!」と気づけます。この読み方の転回がすっきりします。
しかしながら、現代の価値観に照らし合わせてみると古いところも多いです。「男はこうで女はこう」のような性的役割を固定するような発言がたびたび見られます。グラールの女性の「女は賢く男をおだてる」みたいな発想ももはや現代的ではありません。
この作品を刊行した当時は新しい描写だったのだろうと思うんですが、現代の青少年に勧めるときは気をつけた方がいいでしょう。