ブックワームのひとりごと

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科学的整合性はないけど面白いSFライトノベル・ライト文芸12選

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さあSFを紹介しようかなと思ったとき、ぶち当たる壁「どこまでSFとして紹介すればいいのか」問題。

特にSFっぽい世界観や設定を使用していながらも、科学的整合性はあまり気にしていない作品をどう扱うべきかわかりません。

でもそれなら「そういう作品」だけピックアップして記事にしてしまえばいいのでは?  と書いたのがこの記事です。

でも私は科学に詳しくないので、「整合性なさそ~」と思った作品に整合性がある可能性があります。そのときはごめん。

 

 

過去からやってきた少女との優しく切ない交流『今日の日はさようなら』

双子のきょうだいの明日子と日々人は、いとこの今日子と暮らすことになった。彼女は、コールドスリープによって30年前からやってきた女子高生だった。今日子は、明るく振舞いながらも、30年後の世界でジェネレーションギャップに苦しむ。そんな彼女を双子は好きになっていくのだが……。

すごい伏線があるわけでもなければ、設定が尖っているわけでもない、ドンパチもドラマチックな展開もない。めちゃくちゃ地味なSFなんですけれども、その分堅実に描写を積み重ねていくところが面白いです。

ひとつひとつのシーンを見れば、取るに足らないような、ささやかな物語なのに、全体として見ると誰かの人生を覗き見たような重厚感がありました。2025年の、少し未来の話なんですが、微妙な近未来描写と、その時代の高校生たちの会話が「ありそう」と思わせてくれるのも面白かったです。

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増殖する横浜駅を旅する冒険SF『横浜駅SF』

横浜駅が増殖し、日本を覆いつくした未来。横浜駅の外で育った三島ヒロトは、5日間だけ駅の内部(エキナカ)で過ごせる「18きっぷ」を手に入れ、42番出口を目指して旅立つ。ヒロトエキナカで見た横浜駅の真実とは……。

横浜駅が増殖する時点で、「あっこの話はトンチキSFなんだな」とわかります。

あらすじだけなら出オチ小説なのですが、ただの出オチにとどまりません。「横浜駅が日本を覆った未来」に対して、社会の仕組みやそこで生きる人たちの行動、一面のエスカレーターや黒い富士山などのビジュアル的面白さがきっちり描かれているのがすごいです。

大真面目にトンデモな設定を描いたSFです。

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つぎはぎの怪物が世界をさまよう『ビスケット・フランケンシュタイン』

体の一部が謎の物質に置き換わる奇病が蔓延する世界。患部をつぎはぎにした人形は、自我に目覚めた。ビスケという名を得た怪物は、徐々に荒廃していく世界をさまよう。生まれてきた目的を求めて――。

タイトル通り、メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』がオマージュ元になっています。

創造主に愛されず、世界をさまようところ、「なぜ生まれてきたのか」を思い悩むところ、そして「人間性」を獲得するところは、もともとの『フランケンシュタイン』を踏襲していて面白かったです。

生きる理由を求めてさまよう怪物の旅路の話でした。

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さくっと読める時間SF短編集『ある日、爆弾がおちてきて』

浪人生の前に現れたのは、高校時代好意を持っていた女の子だった。彼女は自分が爆弾だと名乗り、主人公とデートをしてドキドキしようとするが……。表題作ほか、精神だけ時間を遡る奇病、図書館にいる小さな神様、窓に映った違う時間軸の少女など、時間SFと少年少女を描いた短編集。

「時間と少年少女」というテーマで何通りもの作品を描き出す引き出しの多さがすごいです。しかもすべて面白いし女の子がかわいい。

一遍が短いので、少しずつ読み進めるのにちょうどいい作品です。

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時間の中で迷子になってしまった少女を少年が助ける『タイム・リープ あしたはきのう』

高校生の翔花は、ある日目覚めると月曜日のはずのその日は火曜日だった。その後も次々に時系列が飛び、翔花は混乱する。翔花は記憶のない月曜日の日記に書いてあった内容に従い、クラスメイトの若松和彦に相談してみる。初めは疑っていた若松だったが、翔花の様子を見て彼女に協力する。

パズルのようなプロットが徐々にはまっていき、話が進むにつれて全体像がわかってきます。そして最後に迎える大団円はとても美しかったです。

ちょっとひねくれているものの、頭がよく義理堅いイケメンが女の子を助けてくれる話なので、女性にもウケそう。

そして若松が普通の時間を生きているのに対して、翔花が途切れ途切れの時間をさまよっているので、時空を超えたラブロマンスとしての性質もあります。

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男子高校生と美少女の間で揺らぐ自我『101メートル離れた恋』

男子高校生のユヅキがある日目覚めると、セブンスというオートマタになっていた。そこは現代社会に似ているが、魔法に満ち溢れた世界。オートマタとしてレンタルされ、男性と性行為を行うセブンスは精神をすり減らしていく。そんな中、セブンスはイチコという少女にレンタルされ……。

魔法が出てくるファンタジーながら、その魔法の在り方はSFっぽい作品です。オートマタもヒューマノイドに置き換えられそう。しかしそのファンタジーとSFの混じり方が楽しいです。

少年が美少女の中に入って自我が揺らいでいく姿が好きでした。

たぶん百合にもTSFにもこだわりがない人の方が楽しめると思います。

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少年少女が天使の姿をした異種族と戦う『アンゲルゼ』

内気な中学生陽菜の唯一の楽しみは、歌を歌うと現れる不思議な女性「マリア」と交流すること。そこで隣の中学校に通う尚吾と出会い、秘密を共有できる相手ができて陽菜は喜んだ。しかし、マリアには大きな秘密があった。

陽菜はとにかくうじうじ、鬱々していて、もっとしっかりしろ! と言いたくなります。でもそこが14歳っぽくていいんですよね。十代初めの頃ってすごく人目が気になる時期で、大人が「気にすることない」と言ったとしても素直には受け止められないんですよ。

そんな不安定な少年少女たちが世界の命運を背負う羽目になるからさあ大変。鬱展開がこれでもかと起こりますが、最後は少し救いを残して終わります。心はつらいけれど面白い作品です。

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普通の少女と武器の少年が出会い戦争が終わった世界で戦う『エスケヱプ・スピヰド』

日本に似て非なる国、八洲(やしま)。人々は戦争で廃墟になった町に取り残されていた。その中の一人、叶葉はある少年と出会う。彼は戦争の時代を生き抜いた、高度に発達した武器だった……。

普通の少女と武器の少年、ふたりが心を通わせていく過程が丁寧に描かれていて、自然と応援したくなってきます。少年少女のわちゃわちゃかわいかったです。それでいて無駄なお色気はなく、硬派に話が進んでいくのがまた安心しました。

そしてそれと並行してゴリゴリのメカバトルが展開していきます。科学技術が高度に発達した昭和という世界観が最高だし、「戦争の終わり」というテーマもきちんと完結させてくれます。最高。

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美しさで世界を滅ぼせる少女と少年のボーイミーツガール『サクラコ・アトミカ』

塔から飛び降りようとした囚われの姫サクラコは、人造の牢番ナギに助けられる。会話するうちに惹かれあっていく二人だが、ナギが創造主に反逆しようとした瞬間、悲劇が起こる。

サクラコとナギ、ふたりともわりとチョロいです。しかしそのチョロさも含めてかわいい。恋をする余裕もなかった孤独な二人が、ようやく対等に話ができる相手を見つけたら好きになってしまいますよね。運命の二人なんだなあ……と思いながら読みました。

量子論についてはまったくよくわからないのですがスケールの大きさが楽しいのでよしとしています。さすがに本物の量子論はこんなにトンチキではないですよね?

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家出少女が宇宙を股にかけて大冒険『星へ行く船』

政略結婚を拒んで、宇宙船に飛び乗った少女、あゆみ。なりゆきで同室になった男性二人組は、驚くべき事情を抱えていた。あゆみは彼らと問題解決のために協力することに。

今となっては否定されてしまった科学技術が出てくるんですが、これはこれで新鮮味があって面白いです。レトロフューチャーというやつか。

若い女の子が体を張って宇宙を飛び回る姿はかっこよくてかわいいし、一人称のゆるくてとぼけた語り口が心地いいです。

古い作品なのでジェンダー観など今となっては肯定できない部分も多いんですが、話は面白いです。

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浦島効果の時間のずれによる親子関係のこじれ『惑星童話』

天才宇宙飛行士アーノルドは、奇跡の人材として名をはせていた。しかし、高速で移動する宇宙船に乗るアーノルドは、浦島効果(ウラシマエフェクト)によって地上の人とは違う時間を生きている。そんな彼の前に、クレアという少女が現れた。

この作品は二本立てになっていて、ひとつが天才宇宙飛行士アーノルドの話、もうひとつはその息子リチャードの話になっています。

宇宙飛行士アーノルドとクレアは、その仕事柄なかなか一緒にはいられない関係。しかも、浦島効果によって地上の人とも隔たりがあります。光速の世界で生きる宇宙飛行士たちの寂しさが、作品を通して繰り返し描かれていきます。

せちがらい話ではありますが、同時に救いのある終わり方でよかったです。

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悪趣味映画製作小説『[映]アムリタ』

自主映画製作に誘われた役者で大学生の二見。彼は渡された絵コンテを二日間ぶっ通しで読んでしまった。そのコンテを作ったのは最早というひとつ後輩の女性だった。二見は映画製作をするうちに彼女の心をはかりかねるようになる。

何はともあれ、この作品で語られるべきはあの悪趣味なオチだと思います。

ある意味読者の期待を全力で裏切ってくるので、不愉快に思う人もいるでしょう。ですが私は吹っ切れてて好きです。ここまで全力投球してくれると何も言えなくなりました。

SFか、と言われると微妙なのですが、これを普通の現代ものと紹介するのも悪意があるだろう、ということでここで紹介しました。

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