あらすじ・概要
皇帝に選ばれるはずが、革命によって後宮を追われた奴隷のナクシュデル。行き場のない彼女は革命に協力した国防軍の少尉、リュステムの家に身を寄せることとなる。後宮しか知らなかったナクシュデルは初めて国の抱える難しい事情を知り、改めて自分が何ができるか考え始める。
メインキャラの倫理がめちゃくちゃ高い
表紙やロゴ、タイトルからは想像もできないほど真面目な話で驚きました。いや、もちろんラブコメとしてキャラクターの掛け合いやラブ要素も面白いんです。しかしそれ以上に話がしっかりしていました。
まずメインキャラの倫理がめちゃくちゃ高いです。主人公のナクシュデルは革命によって後宮を追われます。リュステムの家に引き取られたことをきっかけに、後宮には多額のお金が使われていたことを改めて知ります。そして、後宮で培った文字の読み書きや教養を、貧しい人たちに教えようと試みます。国費によって豪華な教育を受けた彼女の、国への恩返しとして。
そしてナクシュデルを助けたリュステムも、生まれながらに裕福な家に育ち、いつも国の中の貧しい人々に後ろめたい気持ちを持っていました。だからこそ革命を起こし、革命を起こした結果行き場を失ったナクシュデルを助けます。
その他にも息子にナクシュデルを保護するよう言うリュステムの母親、たらしだが後輩が女性に不実なことをした(誤解)と見ると怒るアブデュルなど、わき役たちも倫理が高井です。
これは本当に八年前の作品ですか!? 本当に安心して読めます。
革命や民主主義の扱いも真面目で、革命側が正しくてそうでない人が間違っている、という安易な白黒思想にはなりません。逆に現実にはこんな真面目な革命そうないとは思うのですが、エンターテインメントとしてこういうものがあると心が楽になりますね。
(ここからネタバレ)
悪役も、手段は圧倒的に間違っているけど彼なりの価値観があってそうしているんだな、ということがわかって納得感がありました。
しかし、奴隷への同情を利用するとかやることがえげつないですね。でも、効果的だろうと思ってしまいます。こういう話にリアリティを持たせる闇は好きです。
きらきらで明るい小説ですが、地に足がついているところが魅力です。続きも楽しみ。