今日の更新は、漫画短編集おすすめまとめです。
シリーズものを追う体力がなく、よく漫画短編集を読んでいます。漫画の短編集ってあまり話題にならないのですが、魅力的な作品が非常に多いです。
今回は、その魅力について語ってみようと思います。
なお、連作短編を入れると話が長くなりすぎたので今回は基本一話完結ものにしました。
- ざらっとした線で庭を描く『地上はポケットの中の庭』
- 奇想を集めたショート漫画集『ひきだしにテラリウム』
- 異性も同性もちゃんぽんな恋愛短編集『あの子に優しい世界がいい』
- さまざまな「運命」を描く『運命の女の子』
- 人外×女子高生詰め合わせ『午後五時四十六分 野干ツヅラ短編集』
- 耽美で物悲しいSF短編集『虫と歌』
- 人と人外の強い関係を描く『トルソの僕ら 上・下』
- ウエットな感情が飛び交う短編集『DON'T TRUST OVER 30』
ざらっとした線で庭を描く『地上はポケットの中の庭』
さまざまな「庭」をテーマにした短編集。
アナログっぽいざらざらした線でやわらかい絵を描くところが魅力です。
盲目の王と庭師の関係を描いた『ファトマの第四庭園』は、確かにあった幸せと限りある人の命を感じさせてくれる作品です。
表題作『地上はポケットの中の庭』は老人が家族と食事をする中で、自らの人生を振り返る話。積もり積もった感情を思わせる美しい物語でした。
奇想を集めたショート漫画集『ひきだしにテラリウム』
SF、ファンタジー、ギャグなど、数ページのショート漫画を集めた短編集。
短い作品でありながらアイデアが素晴らしく、またそのアイデアを生かした展開が面白いです。SFが好きな人には強くおすすめしたいです。
さくっと読めるので、毎日少しずつ読み進めるのもいいですね。
個人的なおすすめ回は「竜の逆鱗」「遠き理想郷」「ショートショートの主人公」。
異性も同性もちゃんぽんな恋愛短編集『あの子に優しい世界がいい』
アンドロイドのアンは、主人に煙たがれている。アンは主人の心を知りたいと望むが……。アンドロイドと人間、学校の友達、魔法使いのふたりなど、同性同士も異性同士も含む「恋愛」を描いた短編集。
「ふたりで明けて」は漫画を描いている少年と、その彼の友達の話。途中まで「あれ、どうなってるの?」と思いますが、最後まで読むとなるほどと思います。
「彼女の破片」は、しっかりもので面倒見のいい千束(ちさと)と彼女にべったりなあいこ。そしてそれを眺める幼馴染の少年倉田。百合に挟まれない男の悲哀がよかったです。
さまざまな「運命」を描く『運命の女の子』
大量殺人鬼と対峙する女刑事を描いた「無敵」、男女が演劇をしていたころを回想する「君はスター」、すべての人が呪われた世界で一人だけ呪われていない少女の話「不呪姫と檻の塔」を収録。
百合と男女カプが同時に味わえる 「君はスター」。奇妙な三角関係の行方が気になってどんどん読みました。
「不呪姫と檻の塔」は少女っぽいファンタジー感がかわいらしい作品。一方で闇も深かったです。
人外×女子高生詰め合わせ『午後五時四十六分 野干ツヅラ短編集』
こっくりさん、透明人間、信号機……。愛を覚えるのは人間だけではない。人外と女子高生の恋と交流を描く短編集。
延々と人外×女子高生の恋模様が描かれる一冊なんですが、発想力が面白いです。蛇のおもちゃの頭をした神様だとか、目の穴に花が咲く人外だとか、アイデアを眺めているだけで楽しいです。
個人的に好きなのは、「あわい、くちなわ、たけこうべ」です。竹のおもちゃの頭の神様というだけで面白すぎるし、そうなった経緯も独特な表現で描かれていてよかったです。
耽美で物悲しいSF短編集『虫と歌』
植物から生まれた少年が、自分の指から生まれた少女に恋する「星の恋人」、ねじのような物体がどんどん大きくなって「妹」になる「日下兄妹」など、不思議で耽美なSF短編集。
絵柄はシンプルなのですがこれはこれで完成されていると感じます。そう思うほど無駄な線がありません。
作品はどれも面白いですが個人的おすすめは「日下兄妹」。人と人でない者が家族になり、心癒されていく物語がとても優しかったです。
人と人外の強い関係を描く『トルソの僕ら 上・下』
彼氏に裏切られたハンナは、アマゾンの奥地で鳥に似た不思議な生き物と出会う。うっかりその種族の求愛行動をしてしまったハンナは、その鳥、ナプタムに惚れられてしまうのだが……。人魚、人造人間、手足のない種族など、人と人でないものの関係を描く短編集。
もふもふかわいい鳥人間、愉快な人造人間、花の姿をした女性、と絵的にも設定的にも「人でないもの」を描くのがとても上手いです。
個人的に好きなのは「ひとでなしの花」。オチも含めて完璧すぎます。ユリに触れる男性の手つきに色気があり〼。
ウエットな感情が飛び交う短編集『DON'T TRUST OVER 30』
漫画家として生活している男は、恋人に結婚したいと言われる。彼には父親への葛藤があった。ままならない大人たちの短編集。
全体的にウェットで、さまざまな感情に満ちている作品です。どちらかというと暗い話が多いのですが、暗いだけではなく、その中にある思考を丁寧に描いています。
表題作「DON'T TRUST OVER 30」と、その続編にあたる「SON HAS DIED,FATHER CAN BE BORN」が一番好きでした。
親を好きになれない子どもが、それでも大人になっていく話です。父親に似ていく自分におびえ、やるべきことから目をそらしながら、少しずつ変わっていきます。
以上です。気になるものがあったら読んでみてください。