あらすじ・概要
イギリス王室王子のアルバート(バーティ)、のちのジョージ6世は、幼いころから吃音に悩まされていた。彼は妻の紹介で言語療法士のローグと出会う。初めはうさんくさく思いながらも、ローグがバーティにシェイクスピアをどもらずに朗読させたことから、彼の治療に通うようになる。折しも時代は第二次世界大戦前、ナチス・ドイツとの戦争が近づいてきていた。
すらすら話すべきっていうのも押しつけだよなあ
友人とウオッチパーティをしながら見ました。二回目の視聴です。
あらすじをわかった上で見ると改めて発見できたことも多かったです。
まず、何よりも「人間はすらすら話すことができるべきである」という価値観に、吃音の人が悩まされているということに気づきました。
ジョージ6世は王なので、スピーチをしなくてはなりません。しかし彼は吃音で、そのことについて父のジョージ5世に叱咤されてしまいます。子持ちのいいおっさんなのに。
でもよく考えてみると、すらすら話せなくて何が悪いんだ? という気もするんですよね。話せた方が選択肢が増えるのは確かですが、人より情報を伝えるのが遅いだけで一方的に「矯正」を押し付けていいのでしょうか。本人が直したいと思っているならともかく。
それにストレスやプレッシャーを感じることで吃音は悪化します。周囲の人が「ゆっくりでも伝わればいい」とのんびり鷹揚に構えていれば、吃音の人にとっても生きやすいんじゃないでしょうか。
もうひとつ、この映画がたくさんの暗喩を用いた作品だということがわかりました。
ジョージ6世はヘビースモーカーなのですが、ローグの治療室においては禁煙であり、たばこを取り上げられます。このたばこがジョージ6世とローグの距離感を示すツールになっています。
ふたりが仲たがいして別れるシーンでジョージ6世がたばこを吸うんですよね。これに気づいたとき「あー!」とアハ体験みたいな気分になりました。
ジョージ6世が即位するシーンで過去の国王の肖像画のカットが入るんですが、それが「王になる重圧」「歴史を背負うこと」の暗喩になっていてこれも重たかったです。
気づかなければスルーしてしまう部分ですが、このしれっとアイテムを噛ませてくる感じがおしゃれですね。