ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

時間ループと現代との類似性とこの先生き残るには 浅羽通明『時間ループ物語論』感想

このブログには広告・アフィリエイトのリンクが含まれます。

久しぶりに評論系の本を読んで新鮮でした。そうそうこういう感じだった。

 

書籍概要

登場人物が同じ時間を繰り返す、時間ループ物語。古今東西の時間ループを紹介し、その傾向を分析。さらに、昔話や日本文学などの過去の作品から、時間ループの起源を探っていく。

 

時間ループから現代社会を見る

後半になってくると、現代社会と「時間ループ」の類似性を語っていく展開になります。今後大きな成長が見込めず、ゆるやかに衰退していく日本。モラトリアムに安住したいというループ物語の願望と、現代とは親和性が高いと著者は言います。

そのあたりの言説が、他人ごとではないので心に痛かったです。

しかしあんまりオタク批判をされてもつらく感じないのは、著者自身もオタクで、永遠のモラトリアムを望む人だからだと思います。

まず共感から始まっているので、ボロクソに言われても許してしまうところがあります。こういうとき、「何を言ったかではなく誰が言うか」という言葉を思い出します。

 

ネタバレだらけの本

ただこの本、大量のネタバレだらけなのでおすすめしにくいです。この本だけで5~8個の時間ループのオチを知ってしまった……。

さすがに本に載っている全部の物語を先に履修しておくのは難しそうなので、ネタバレ許容派の人しか読めない本になっています。

ネタバレしても面白そうには説明されているので、「読んでみたいな」とは思うんですけどね。

同時に、評論と言うのはオチの紹介なしに進めていくのは難しいんだなと再確認しました。評論が微妙にとっつきにくいジャンルとしてあるのは、その辺の事情もあるかもしれません。

 

まとめ

面白かったけれど、気軽におすすめできない本でした。ループが好きなら一読の価値はあります。

ネタバレ許容派の人で、ループに興味がある人にならおすすめできます!

時間ループ物語論

時間ループ物語論