ブックワームのひとりごと

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ビターエンド、切ないエンドのライトノベル・ライト文芸14選【少しネタバレ】

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ハッピーエンド以外のラノベは売れないという都市伝説がありますが、私は結構切ないエンドやビターエンドの作品が好きです。今回はそういう作品を集めてみました。

しかし「その作品がどういうオチなのか」と説明した時点でネタバレなんですよね……。具体的にどういうオチかは書いていませんが、ふんわりとはネタバレしているのでオチが知りたくない人はブラウザバックしてください。

 

 

表現することの救いと業を描く『月の盾』

妹を亡くした少年、暁の家に死んだ叔母の娘、桜花がやってくる。一家は子どもを失くした寂しさから桜花に優しく接する。やがて桜花が天才的な絵の才能を持つことがわかり、周囲は桜花に絵を描くことを強く勧める。しかし彼女の絵が有名になったとき、ある真実が明らかになる。

子どもを失い失意の中にあった一家が桜花という少女に救いを感じ、桜花が迷いながら絵を描くことを喜びとしていく過程は泣けてきます。

と、これなら美しい話のままですが、桜花の父が連続殺人犯だということがわかってから様相が変わってきます。そして桜花がより良い絵を描くためにやったことが、周囲と桜花自身の運命を大きく変えてしまいます。

どうしてもすっきり終わることのできないテーマですが、自分なりに答えを出した桜花の姿には励まされました。

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月の盾 (電撃文庫)

月の盾 (電撃文庫)

  • 作者:岩田 洋季
  • アスキー・メディアワークス(ASCII MEDIA WORKS)
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孤独なふたりが惹かれあうインカ風ファンタジー『アヤンナの美しい鳥』

高地に暮らすアヤンナは、ある日奴隷商人に売られそうになっていた異人の男リリエンを助ける。足萎えである男をしぶしぶながらも家に置いたアヤンナだったが、アヤンナの顔にある醜い傷を見ても動じず、尽くしてくれるリリエンに惹かれるようになる。しかしふたりの暮らす王国には、不穏な噂がはびこっていて……。

メインの筋としてはアヤンナとリリエンの悲しいラブストーリーなのですが、アヤンナに性知識が全くと言っていいほどないため、幼児の初恋のような雰囲気です。しかしその、性にはっきり目覚める前の原始的な愛だからこそリリエンは居心地がよかったのでしょう。来歴から考えても。

ラストシーンはとても悲しいですが、ふたりともお互いへの思いを最大限表現した、愛のある結末だったと思います。

 

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化け物と交じり合ってしまった若者たちが生存しようとする『哀しみキメラ』

塾のエレベーターで「モノ」に襲われ、その「モノ」と融合してしまった純たち四人の若者。強化された体、食べても治らない空腹。生きていくためには「モノ」を食らっていかなければならない。純たちは共同生活を送りながら、「モノ」を退治する生活をする。

キャラクターがすれ違いまくる作品なんですが、その原因が「ホウレンソウがなされていないから」とか「誤解があるから」ではなく、あくまで「価値観が違うから」だというのが泣けてきます。それぞれに仲間を思っていても、うまくいくとは限りません。

四巻で行われる怒涛のリフレインと、たくさんのものを失った結末でありながら希望の残るエンドは必見です。

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終わらないループの中での悲恋『All You Need Is Kill』

人間がギタイという謎の生物と戦っている未来。初年兵のキリヤ・ケイジはギタイとの戦いの中で二日間を繰り返すループに陥る。何度も初出撃をこなす彼は、ループを脱出することができるのか。

初々しい初年兵が何度もループを繰り返す中でどんどんたくましくなっていき、怜悧さを持つところはかっこいいです。この作品の元ネタのひとつは、ビデオゲームのリセット。淡々とした文章も相まって、本当にそういうゲームをプレイしているような気分になってきます。

そして「戦場の雌犬」リタとのループの中だけでの悲恋。ロマンチックすぎるほどロマンチックだけれど、ここまで強く押し出されていると納得するしかありません。

これが一番美しい結末だということはわかっていますが、悲しすぎてつい幸せなふたりを想像してしまいます。

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トラウマを抱える男女が恋愛抜きで結婚する『ひきこもりの弟だった』

ひきこもりの兄と、彼を過保護に世話する母との関係がトラウマになっている「僕」。彼は初対面の女性、千草から結婚することを持ちかけられる。僕と彼女は、穏やかに生活を送っていくが……。

ひきこもりの兄と、彼と共依存関係に陥っていく母親の描写がリアルでとても辛かったです。回想と平行して、主人公の妻千草との現在の関係が描かれていきます。何か訳ありらしい彼女と、自身もひきこもりの兄によるトラウマを抱える主人公。おだやかで優しいようでいて、いつ壊れるかわからない不安定なふたりにははらはらしました。

結末は「こうなるしかなかったのだろうか」とやるせなさを感じましたが、一時でもお互いの存在に救いを感じたのならそれでいいのかもしれません。

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思春期の少年少女が化け物と戦う『アンゲルゼ』

内気な中学生陽菜の唯一の楽しみは、歌を歌うと現れる不思議な女性「マリア」と交流すること。そこで隣の中学校に通う尚吾と出会い、秘密を共有できる相手ができて陽菜は喜んだ。しかし、マリアには大きな秘密があった。

つらい展開の連続ですが、「この後どうなるんだろう?」と思わせてくれます。だからすいすい読めてしまいます。すぐ作品にのめりこめるような、「気になること」をいくつも配置しているから続きが気になってしまいます。

登場人物たちがそれぞれの過去や思いにけりをつけ、このろくでもない世界と戦う覚悟を決める終盤は、苦しくても希望がありました。ハッピーエンドではありませんが、いい結末だったと思います。

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コールドスリープから目覚めた少女と、今を生きるきょうだいが出会う『今日の日はさようなら』

双子のきょうだいの明日子と日々人は、いとこの今日子と暮らすことになった。彼女は、コールドスリープによって30年前からやってきた女子高生だった。今日子は、明るく振舞いながらも、30年後の世界でジェネレーションギャップに苦しむ。そんな彼女を双子は好きになっていくのだが……。

すごい伏線があるわけでもなければ、設定が尖っているわけでもない、ドンパチもドラマチックな展開もない。めちゃくちゃ地味なSFなんですけれども、その分堅実に描写を積み重ねていくところが面白いです。

彼女と出会った日々人と明日子は、少しずつ彼女を好きになっていき、「何かしてあげたい」と思うようになります。結末は寂しいものでしたが、今日子と出会うことによって少しだけ変わったふたりが美しかったです。

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つぎはぎの怪物の持つ人間への祈りとは『ビスケット・フランケンシュタイン』

体の一部が謎の物質に置き換わる奇病が蔓延する世界。患部をつぎはぎにした人形は、自我に目覚めた。ビスケという名を得た怪物は、徐々に荒廃していく世界をさまよう。生まれてきた目的を求めて――。

タイトル通り、メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』がオマージュ元になっています。創造主に愛されず、世界をさまようところ、「なぜ生まれてきたのか」を思い悩むところ、そして「人間性」を獲得するところは、もともとの『フランケンシュタイン』を踏襲していて面白かったです。

自分は何のために生まれてきたのか――それに対しての主人公の結論は壮絶ですが、救いと悲しみがないまぜになっていて強く記憶に残っています。

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同じ時間を生きられないふたりのひと夏の触れ合い『ヴァンパイア・サマータイム』

吸血鬼と人が共存する世界。両親の経営しているコンビニで働くヨリマサは、毎日紅茶を買いに来る吸血鬼の少女が気になっている。会話するようになったふたりは、小さな事件を経て仲良くなっていく……。

ボーイミーツガール、異種間の恋と、直球なストーリーであるこの作品ですが、まずお勧めしたいポイントは文章がべらぼうに上手いこと。美しいけれど自然で、きざな感じがしない。ライトノベル作家の中でも文章の上手さはトップクラスになると思います。

バッドエンドというほど悲しくはないですが、同じ時間を生きられないふたりが主人公の昼夜逆転ゆえにひと夏の間強く惹かれあい、夏の終わりとともにまた元の時間へ戻っていく、そのはかなさが切ないです。

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孤独な少年少女がお互いの存在に救いを見る『陸と千星 世界を配る少年と別荘の少女』

両親の離婚の話し合いの間、田舎の家に預けられた千星。彼女はそこで新聞配達をしている少年、陸と出会う。朝の新聞配達のときに起こる小さな触れ合いを通して、ふたりはお互いに惹かれ合っていく。

愛のない夫婦の間に生まれた千星と、ネグレクトされながら育った陸。自分でどうにもならない理不尽さに傷つき、千星は泣けなくなり、陸は笑えなくなってしまいます。その細やかな心の動きが、リアルに丁寧に書かれていたので、ふたりを応援したい気持ちでいっぱいになりました。

主人公たちは普通の中学生なので状況を変える力はなく、ラストでも安易なハッピーエンドにはなりません。しかしお互いの存在が救いとなり、人生を前向きに歩むきっかけになったことがわかります。その結末が苦しくも美しかったです。

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男ふたりの部活に飛び込んできた少女と三角関係『ボンクラーズ、ドントクライ』

二人でヒーローごっこをしていた映画研究部の「僕」とカントク。そこに男装の少女桐香が現れたことから、映画研究部は変わっていく。三人の淡い恋の行方はいったいどうなるのか……。

女の子ひとり、男の子ふたりの三角関係ストーリーなんですが、あまりドロドロはしていなくて、三人のかけがえのない日常がメインとして描かれていたのがさわやかでした。日常シーンが本当にかわいらしくて和みます。

あの子の両想いの相手は自分ではない、その事実を突きつけられる結末はつらいですが、はかない恋と男同士の友情を見せる愛のあるエンドだったと思います。

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恋の終わりで締めるホラーミステリ『ゴーストハント』

旧校舎には幽霊が出るという噂があった。麻衣はそこでゴーストハントをするという少年に出会う。除霊は他の霊能力者を巻き込み、謎を増していく。はたして旧校舎の幽霊の正体とは……。

霊現象を理屈で解決するホラーミステリ。個性的なキャラクターと深みのある展開が魅力です。

主人公といけすかない少年がくっつくのかと思いきや、最後は淡い恋の終わりで締めました。恋が成就してハッピーエンドとはならない、ちょっとひねくれた結末ですがそこが好きです。

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ゴーストハント (1) 旧校舎怪談 (幽BOOKS)

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人型兵器が戦争を本当に終わらせるまでを描く『エスケヱプ・スピヰド』

日本に似て非なる国、八洲(やしま)。人々は戦争で廃墟になった町に取り残されていた。その中の一人、叶葉はある少年と出会う。彼は戦争の時代を生き抜いた、高度に発達した武器だった……。

普通の女の子と不思議な男の子、というボーイミーツガールの逆。ふたりが少しずつ心の距離を近づけ、唯一無二の存在になっていく過程はときめきが止まりません。

戦争が終わった後、意志を持つ武器たちはどう生きればいいのか……。戦いの中でキャラクターたちが下した結論は、前向きでさわやかではありますがもの寂しかったです。別れを受け入れながらも自分たちの人生を生きていくのだと思いました。

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ファンタジー世界の就活物語『犬と魔法のファンタジー』

冒険時代は遠い昔。宮廷大学に通うチタンは、就職活動に行き詰っていた。送られてくるお祈り手紙、内定を勝ち取っていく周囲。そんな中、冒険組合で飼っていた犬が原因不明の病気になり、気の合わない組合仲間のチアリーと原因を探すことに……。

ファンタジー世界に就活を足すという発想の勝利。自分を殺してでもレールを行くか、自分が自分らしくあるために道なき道を行くか……。そういう悩みは人生の転換期には必ず向き合わなければいけないんですが、「就活」というテーマはそれを描くにふさわしいものです。

オチはチタンが最初に望んだものではありませんでしたが、彼を必要としてくれる場所にたどり着けたのだとほっとしました。

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以上です。興味がある作品があれば読んでみてください。