
お仕事コミックエッセイについてまとめました。
医療
『おとずれナース~精神科訪問看護とこころの記録~』のまり
著者は精神科訪問看護の仕事をしている。精神疾患を持つ人々の家を訪ね、薬の管理をしたり相談に乗ったり、状況に応じて使えるサービスを紹介する仕事だ。彼女が出会うのは、さまざまな事情を抱えた患者たちだった。著者の経験をもとに、改変したフィクション。
著者自身が訪問看護の仕事にやりがいを感じているため、この仕事をやる上での何気ない嬉しさや、報われたと思う瞬間を描いてくれたのが嬉しかったです。当事者としては医療従事者の人たちに頼ってばかりの生活なので、向こうが「やっててよかった」と思ってもらえると自分としてもほっとします。
印象的だったのは境界性パーソナリティー障害の患者のくだりで、周囲を振り回しときに依存する患者に対して、主人公は負の感情を持ってしまいます。そういうときに、一緒に仕事をしている人が一旦主人公をその患者から外すのです。
境界性パーソナリティー障害の場合、患者に入れ込んではいけない、それは悪意であってもだ……という行動にちょっとはっとさせられました。境界性パーソナリティー障害については何かやべー人だ、くらいにしか思ったことがありませんでした。それでも訪問看護の仕事をしている人はあくまで彼女をひとりの人間として扱おうとしています。
自分にはない発想に目からうろこが落ちたし、こういう瞬間があるから他人の描いた作品を読むのは面白いなと思います。
『ナースは今日も眠れない!』田中ひろみ
親に美大に行くことを反対され、ナースを志すことにした著者。しかし看護学校の時代から、苦難の連続だった。過酷な実習、先輩からのいじめ、セクハラやパワハラ。しかも多くのナースが辞めていく消化器内科に入ってしまい、著者は環境の悪い職場で働き続けることとなる。
セクハラやパワハラ、先輩からのいじめ、賄賂など、昔の「病院」のダークサイドが山ほどつづられています。
ゴシップ的に面白くはあるんですが、これを読んで「ナースは素晴らしい」とは思えないですね。
しかし、パワハラもセクハラも罪に問われなかった時代は怖いです。ナースが普通に尻を触られる世界……。
ぞっとしたのは医療ミスの話ですね。腫瘍のある場所を左右間違えても、言葉巧みに再手術をして逆の場所を開け、医療ミスを報告しない。昔「医療ミスをちゃんと公表する病院は良心的だ」と聞いたけれど、本当だったようです。
開いたお腹から医療器具が出てくるのも本当にあるんだ、と驚きました。
介護
『老人ホームに恋してる』大塚紗瑛
芸術大学の学生だった著者は、芸大から介護の仕事をしている人の話を聞いたことから介護職を志す。新卒で飛び込んだ老人ホームで、個性豊かな高齢者たちと出会った。介護という過酷な仕事の中で、お年寄りと触れ合い、話すことで著者は働き甲斐を見つけていく。
展開されるのは利用者である高齢者の楽しいエピソードや、ほっこりする会話です。認知症が進み、記憶があいまいになっている高齢者たちは脈絡が変な話し方をしてちょっと面白いです(不謹慎かもしれませんが)。
しかし将来親の介護や自分の介護が心配になる中で、こうやって認知症の人間を面白がったり優しく見守ってくれる人がいるというのは救いです。安心します。ただめちゃくちゃ給料が安いのは申し訳ないですが……。
『うつでも介護士:崖っぷち人生、どん底からやり直してます。』渡辺河童
自営業として働いていた著者は、ある日うつ病になる。何度か自殺未遂を繰り返したものの、訪問看護やヘルパーの人々に助けられる。自分も資格を取ってみようと、学校に通い始めるのだが……。
著者のうつはなかなかよくなりませんでしたが、訪問看護を利用したり、ヘルパーの人に助けてもらったりしたことで、少しずついい方向に向かいます。
縁というのは運要素が強いけれど、それでも縁というのはありがたいものだなあと思いました。
介護職は過酷で、精神疾患の人にはあまり向いていないと言われていますが、著者はむしろ利用者さんとの対話で救われた面も多かったようです。
また、絵や粘土を扱う能力も評価されました。
職場での関係にも恵まれ、「(体は女だが)働いているときは男として扱ってほしい」という要望も叶えてもらえました。
捨てる神あれば拾う神というか、人間万事塞翁が馬だなあという思いを抱いたエッセイでした。
『アラフィフでヘルパーはじめました』ゆるゆらり
姑との二世代同居で苦労をしていた著者。「働いて外に出たらどや?」という夫の一言から一念発起し、介護の業界を目指す。しばらく障害児のデイサービスで働いていたが、介護福祉士の資格を取って高齢者のデイサービスへ。そこでは、さまざまな人間ドラマが繰り広げられていた。
基本的にポジティブな内容で、介護業界で想像されがちなきつい・過酷・ストレスフルという雰囲気ではありません。
もっとも、ところどころで言外に苦労をしているのだろうなということは察することができます。転倒や事故など仕事の中のヒヤリとするシーンや、利用者に怒鳴られるシーンなど、さりげない場面ではありますが、実際には恐ろしいでしょう。
つまり、そういう苦労があっても著者は介護のポジティブな面、仕事の楽しさを前面に押し出しているのです。その心意気は非常にかっこよくて好きです。
他に働ける場所がなかったから、ではなく、とても前向きに仕事をしている人は見ていて元気が出ます。自分と関係のない仕事をしていても尊敬できますね。
『40代女性マンガ家が訪問介護ヘルパーになったら』吉田美紀子
若いころは何本もの連載を持っていたが、年を取るにつれて仕事がなくなってきた漫画家の著者。バイトをしてみようとしたがうまく行かず、ひとりでできる仕事として選んだのは、訪問介護ヘルパーだった。ヘルパーとしての苦労やお年寄りとの交流を描いたコミックエッセイ。
1ページに四コマ一本しか入っていないので、ちょっとボリューム的には物足りなかったです。
ただ内容そのものは面白かったです。シモの話やセクハラの話も含まれますが、絵柄がかわいらしいのでちょっとマイルドに読めます。
それでもセクハラしてくるおじいさんの話はヤバいですね。胸を触られたり股の間に足をつっこまれたりします。体が不自由とはいえ男性なのだから実際に目の前にこういう人がいたらめちゃくちゃ怖いでしょう……。
中身を一通り読んで、あとがき欄を見たとき何だか感慨深かったです。
漫画だけの生活のころと比べて、「憑き物が落ちたようなカオになった」と友達に言われて、この生活のバランスが自分には合っているのかなと思います。(P143)
内容としては楽しくない話の方が多いのですが、そう思えるということは著者はこの仕事を案外悪くないものとして捉えているんですね。
そういうポジティブな終わり方が嬉しくなりました。
エンタメ系
『わたしの舞台は舞台裏 大衆演劇裏方日記』木丸みさき
著者は、大阪のとある劇場で大衆演劇の裏方をしている。たまたま見た大衆演劇にほれ込んだ著者は、大衆演劇に関わる仕事へ進んだのだ。大衆演劇ならではの文化、ひとりで裏方をすることの苦労、俳優の人々との付き合いなど、舞台に関わる日常を描いたコミックエッセイ。
まず面白いのは、大衆演劇というものは一般的な演劇とはかなり文化が違うことです。台本はなく、座長の頭の中に入っているストーリーを俳優たちと打ち合わせて稽古をします。そのようにはっきり決まっていない脚本なのでアドリブも多く、かっこいいせりふもその場の勢いで言っている場合があります。それでいて、観客が楽しめるものに仕上げていくのはプロですね。
裏方をひとりでこなす著者もすごかったです。「明日〇〇用意して」と言われれば、刀掛けでもおにぎりでも作って用意をし、幕を閉める微妙なタイミングを調節し、自分の体より大きな大道具を片付けます。作中では淡々とこなしていますが、労働者としては本当に仕事が多いです。尊敬するわ。エンターテインメントに関わる面白さと大変さ、そして大衆演劇という文化についてよく伝わってくる作品でした。
『大物女優の付き人は、ほぼ奴隷の日々でした。』僕田友・西つるみ
俳優の卵であった原作者は、大物女優の付き人をすることになった。いい経験になると思ったのは束の間、安月給でこき使われる仕事だということが判明した。大物女優のわがままさに振り回されたり、業界の闇を知ってしまったり、気苦労の多い生活を送る。果たして俳優になる夢は叶うのか?
話は面白いけどうらやましくはないです。むしろこんな仕事はしたくないですね。
有能で美人ですが当たりのきつい女優の付き人をやっていた人の話です。華やかな一方、振り回され方がおかしいです。
無茶な要求をされたり、給料が異様に安かったり。
かなりマイルドにはなっているもののの、芸能界の性事情なんかも垣間見えます。
俳優志望である主人公は、俳優になれるかもしれないという可能性を餌にして仕事を強いられています。
しかしあとがきを兼ねたインタビューでさらっとその事務所では俳優として売り出してもらえなかったのが判明します。ひどい。
女優も一応主人公が俳優志望であるということはわかっているようです。そのためアドバイスをくれたり、チャンスが来ると逃さないように促してはくれます。
しかし私はまっとうに優しくされたいと思うので、こういう価値観の業界は引きますね。能力があれば何やってもいいなんて思えないです。
『パパはゲーム実況者~ガッチマンの愉快で平穏な日々~』トラちん&ガッチマン
ある日、夫がゲーム実況を仕事にしたいと言い出したら……。著者、トラちんの夫はゲーム実況者のガッチマン。ゲームし放題で楽しい仕事かと思いきや、期限までのクリアのために徹夜、高難易度ゲームを何度もやり直し、決して楽ではない仕事風景が明かされる。著者はそんな夫を見守る。
楽そうに思えるゲーム実況者の仕事。この作品を読んでいると、「ゲーム実況の人も結構苦労しているんだな」ということがわかります。寝ても覚めてもひたすらゲームをし続ける生活。メーカーとのコラボのためにひたすらプレイを練習して、イベントがあれば司会もやって、守秘義務のために今やっている仕事について話せないこともしばしば。
「メーカーはなぜ実況者とコラボするのか」という点にも触れられていて、そもそもゲーム実況って何? という人にもわかりやすいと思います。逆にゲーム実況のことをよくわかっていない人にもおすすめ。
『90年代のゲーセンでバイトしていた話』後藤羽矢子
著者は90年代のゲームセンターでアルバイトしていた。90年代にはスマートフォンはなくパソコンも今ほど一般的ではなく、ゲームなのに一種アナログな文化があった。バイトの立場から見たゲームセンター文化を描く。
ゲームセンターでアルバイトしていた人の漫画。ゲームセンター自体は今でもありますが、世代による文化の違いが面白かったです。
今ではゲームはインターネットに接続して当たり前ですが、スマホもない時代にそれぞれの地域のゲームセンターに向かい、ゲームをしていたのはアナログ的ではあります。ハイスコアランキングの高ランカーを探して対戦しようとわざわざゲームセンターまで来たよその客はすごかったです。何度も言いますが、携帯電話もインターネットが一般的ではないので約束して会うことが難しかった時代です。
店とゲーマーの結びつきも面白かったですね。
笑ったのが麻雀ゲームの不正のせいで麻雀を覚えたことですね。著者は麻雀の役を知らず、「役が揃っているのに勝てない」と言われて返金してしまいます。しかしそれは客の嘘でした。
怒った著者は麻雀の役を覚え、麻雀ができるようになります。
麻雀を覚えた理由が独特すぎて笑いました。
『薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記』笹生那実
中学生で漫画を投稿していた著者は、高校生になってプロの漫画家のアシスタントとして呼ばれることとなる。そこは締め切りぎりぎりの中漫画家とアシスタントが原稿を書き続ける「シュラバ」だった。有名漫画家との思い出とともに、つらくも美しい青春を描き出す。
同世代の女の子たちと眠気覚ましもかねて雑談をし、手では原稿を書き続ける。三日も徹夜して24時間寝る。夜中に怪談話で盛り上がる……。
今と労働基準法にひっかかりそうでだめだし、ちゃんと最後に「今の人は真似しないで」と述べられているんですが、それでもその当時シュラバに参加していた人はすごく楽しかったんでしょうね。画面中から楽しさがあふれてきています。
若者たちが駆け抜けた青春の話でした。
『こんな私がマンガ家に!?』青沼貴子
コミックエッセイ作家の青沼貴子は、かつて少女漫画家としてデビューしていた。幸運にもはじめて応募した漫画でデビューするが、漫画家の仕事は大変だった。アシスタントのこと、アニメのこと、担当のこと……デビュー当時のことを回想する漫画。
真面目な漫画家志望が見ると不真面目に思うかもしれないですが、はじめて描いた漫画を完成させたり人間を描く能力が評価されたり、柔軟にものを考えたり……ものづくりをする人間の才能は持ち合わせていたように見えます。
修正前のネームと修正後のネームを比較したり、エッセイ漫画を描く前の落書きを公開したり。作風の変移が興味深かったです。
嫌な担当の話……などはなく、よくしてくれた担当の人の話がほとんどです。最近は漫画担当は邪悪なものみたいな極端な物言いをする人が多いので癒されました。まあ、担当の悪口をホイホイ描くような漫画家であったら、エッセイ漫画家としてやっていけないとも思いますが……。
しかし、子供を産み家庭を持ったら仕事の連絡が来なくなってしまったくだりは笑えなかったです。漫画家を大切にしてくれた編集部でもこの仕打ち。当時は子どもを産んだ女性に仕事を回すという発想があまりなかったんでしょうね。
芸術・文化
『ブンブン堂のグレちゃん 大阪古本屋バイト日記』グレゴリ青山
著者のグレゴリ青山は、18歳のころ大阪梅田の古書店街でバイトをしていた。個性豊かな古書店の主や、お客さんの観察、古書店独自の文化などをバイト目線でつづったコミックエッセイ。
ちょっと敷居が高い古書店の世界を、コミカルにユーモアたっぷりに描いているところが、ギャップがあって面白いです。
コミックエッセイとは思えないくらいの濃い古書店のお客や店主たちにはめちゃくちゃ笑えますし、本を愛するがゆえの喜劇、古本屋にしかわからない古本屋あるあるが興味深いです。本をクリーニングしたり、本を買い付けに行ったりする仕事風景を読むだけでも、面白かったです。
古本屋っていつもどんな仕事をしているんだろう? どうやって生活しているのかな? と疑問を持っている人にはおすすめの本です。
『ミュージアムの女』宇佐江みつこ
岐阜県美術館で監視係をしている著者。展示室の片隅に座り、客が作品を触らないように注意したり、作品の害になるかもしれない虫を捕獲したりしている。美術館を訪れるさまざまな客を見つめながら、美術館の意義や展示係のやりがいについて語っていく。
登場人物はすべて二足歩行する擬人化された猫の姿で描かれていて、コミックエッセイでありながら絵本のような雰囲気があります。さらりと力の抜けた絵でありながらハイセンスでおしゃれな雰囲気です。さすが美術館のコミックエッセイ……。
特に面白かったのが展示室内に出た虫を捕まえるエピソード。展示室に出た虫はすべて捕獲して報告書を書かなければならないそうです。作品を食べてしまうなど有害な虫もいるからでしょうね。そんな仕事をしているとは思いませんでした。
体力仕事
『リアル宅配便日記…毎日こんなことが起こってます!』ゆきたこーすけ
社内新聞の四コマを描いたことをきっかけに、自身の配送業を漫画にし始めた著者。ブログを解説し、面白いお客さんや、配送時の面白いハプニング、個性的な同僚たちを四コマで楽しく語っていく。身近なようで知らない宅配便の世界は、面白ネタで満ちていた。
四コマ漫画に描かれているのは、親切でちょっと変わったお客さんたちとの交流、個性的な同僚の姿、繁忙期の大混乱。当事者だからこそ書けるネタばかりです。
「不在票あるある」とか「代引きあるある」とか細かすぎて伝わらないあるあるネタに笑います。よく観察されてるんだなあ。やっぱり客側としても配達業者さんに見られていることを意識しておこうと思います。
四コマの内容は基本的に楽しくポジティブで、嫌な話もあるにはあるけれど、ユーモアでくるまれているので不快に感じません。実際には楽しいことばかりではないとは思うんですが、それでも前向きで、明るさにほっとできる内容でした。
『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』竜田一人
福島第一原子力発電所での廃炉作業に興味を持った著者は、原発の作業員として働き始める。過酷な原発における労働と、作業員同士の友情、放射能をめぐるあれこれ。廃炉作業の最前線を描き出す。
分厚い防護服を身にまとい、熱中症の危険と戦いながら、廃炉作業に従事する人々。リアルでひりつくような状況に、心を奪われます。
廃炉作業と聞いても、具体的にどういうことをしているのか想像がつかない人がほとんどだと思います。壊すためにさらなる工事をするという不思議な状況に、他の建築物とは違うものを感じました。
被ばくを防ぐため何重にも服を着こむため、漫画の中でも繰り返し着替えのシーンが描かれます。いかにも面倒くさいので大変そうです。しかし被ばくしないためのルールなので律儀にやっています。
原発作業ではなくても、こういう肉体労働をやっている人は、情報発信が少ないです。建設現場独特の文化や、やり取りが面白かったです。
ブルーカラーの人々の持つ、力あふれる雰囲気と猥雑さ、生々しいながらポジティブな語りが興味深かったです。
終盤では原子力発電所の廃炉作業に使われているロボットについても触れられています。過酷な廃炉作業においてどこかユーモラスなロボットが良かったですね。
『新卒で”給食のおばさん"になりました~女の園は敵だらけ~』松山ルミ
調理師学校を卒業した後、病院の給食を作る仕事に就いた著者。そこは、体力仕事と女同士の付き合いがあふれていた。B型をいじめるお局様、親切だけどクールな先輩。慣れない仕事に四苦八苦しながら、著者は給食の作り方を学んでいく。
こんなタイトルだけれどそこまで敵もいないしドロドロしてもいません。いや、いびりがあったり噂話があったりドロドロの要素はあります。しかし著者が登場人物のいいところも悪いところも両方描いているので、嫌な感じはしないんです。
特に暗いけど親切な先輩のキャラがいいんですよね。気配もなく立っているところが面白いし、仲良くなって見ると案外人間味がある、というのがギャップ萌え。
働いているといいことも悪いこともあるよね……という気分になる作品です。
オフィスでの仕事
『新卒はツラいよ!』きたみりゅうじ
著者は、不況を潜り抜けIT企業へ就職した。しかしそこでは、プログラミングをろくに覚えないまま仕事をし、なぜか社長室に呼ばれ、イベントの担当者になる……などおかしな仕事をさせられる。さらに長時間労働、突然の異動など、一人前になっても周りに振り回される。
何度も修羅場を潜り抜けてきた著者は、悪い意味で上司に信頼され、使いやすい駒になってしまいました。おそらくこういう人が、だめな企業を支えてしまっているのでしょう。なまじ有能だからこそ、人の分の仕事を背負ってしまう。
自分を守るためには、自分に関係ない仕事をサボることも大事です。私も関係ない仕事はほどほどにやっていこうと思います。
若手なのにプロジェクトの運営スキルや新人の教育スキルを得てしまった著者はすごいですが、それでもそういうスキルを平和的に得るに越したことはないですからね。
得てしまった「たくましさ」に苦笑いしてしまいそうです。
『ぼく、オタリーマン』よしたに
オタクでリーマンな著者、よしたには、漫画で日記を描いていた。ぼっちでポップカルチャー好きなオタクである。毎日のコミュニケーションの齟齬や、働く時のとほほな感情、オタク特有の漫画やアニメとの関係などを面白おかしく描くコミックエッセイ。
ファッションセンス壊滅していたころの服装をさらすくだりもめちゃくちゃ笑いました。私も同類だったのでわかります。
個人サイト世代なので、個人サイトがらみの黒歴史は面白かったです。こんなサイトあったなあ。でもあの時期はみんな黒歴史量産してたので大丈夫だと思います。慰めになるかわからないんですけど……。
働きながらオタクを続けるってこういう感じだよなあと思いました。
『理系の人々』よしたに
著者はSEの仕事をしている。仕事仲間とのあれこれ、上司とのわだかまり、そして自分が出世してしまったことで生まれた部下とのやりとりなど、仕事をする上での悩みを面白おかしく紹介。スーパーサイエンススクールなどの理系ならではの取材も行うコミックエッセイ。
私はエンジニアになったことはないんですが、仕事の悩みはいろいろな人に通じるものがあると思います。下手にたくさん働くと頼りにされ過ぎたり、後輩を教えるのが大変だったり……。その辺は文系理系も変わらないですね。
しかし著者の描く文系像が偏見に満ち溢れていて笑ってしまいました。文系ってそういうのじゃねえから!
占いに行ったりスーパーサイエンススクールに行ったり転職の相談をしたり、理系というコンセプトに従った取材も面白かったです。高校生のかわいさにきゅんとしました。
疑似科学が許せなかったり、やたらと理屈にこだわってしまったりするところに笑いました。しかし理系と言えど感情に流され行動することもあります。人間はロボットじゃないですからね。
理屈と感情の間で行ったり来たりしつつ、ユーモアに富んだ語り口が面白かったです。
『地元で広告代理店の営業女子はじめました』えりた
求人広告ペーパーの営業として採用された著者。慣れない飛び込み営業やテレフォンアポイントに四苦八苦し、顧客とうまく話せずに悩む。周りからアドバイスを受けながら、著者は徐々に営業の技術をものにしていく。
私も企業で働いているけれど、他の部署が何をやっているかは全然わからないので、こういう「営業」だけをテーマにしたお仕事エッセイは新鮮でした。「営業ってこういう流れでするんだ!」ということがわかりやすく書かれていて参考になりました。
人間相手の仕事だからこそ、ハードな営業。断られるのもしょっちゅうだし、広告の効果が出ず叱られることも。その度に落ち込みつつも、具体的なアイデアで現状を打開していく著者はかっこよかったです。
営業は、ただセールスするだけではなく、相手の利益と自分の利益を両立させる仕事ななのです。その利益のすり合わせをするために会いに行き、打ち合わせをするんでしょうね。
夜のお仕事
『メンズエステ嬢の居場所はこの社会にありますか?』鶴屋なごみん
両親が実家を引き払い引っ越すことになり、突然ひとり暮らしをしなければならなくなった著者。今のアルバイトでは暮らしていけない。生活費を稼ぐため、たどり着いたのはメンズエステの世界だった。露出度の高い服装で男性にマッサージを施すメンズエステは、風俗と普通の仕事のグレーゾーンにあたる仕事だった。
セクハラ・パワハラてんこ盛り。人は立場の弱い人間に対してこんなに意地悪になれるんですね。メンズエステの仕事をしていると不信感でいっぱいになりそうです。
そして何より印象的だったのが、メンズエステで働いている女性たちが自分に自信がなく、「ふつう」になれずに苦しんでいるという事実です。
人が当たり前にできることが自分にはできない。劣等感にさいなまれ、ぼろぼろになりながらも、それでも過酷で残酷なこの仕事しかできることがない。登場する女性たちはみんなどこか欠けています。
生きるのが下手な人間がそれでも救いを求めてあがく、希望と悲しさのある作品でした。
『OLですが、キャバ嬢はじめました』鏡なな子
著者は将来の不安から、お金をためるためにキャバ嬢の仕事を始める。面接を受けてキャバクラに出勤したら、そこは想像を越える職場だった。キャバクラのシステムから、キャバ嬢たちのテクニック、キャバクラでの悲喜こもごもなどを描くコミックエッセイ。
コミュニケーションにまつわる仕事だからこその悩みがたくさん描いてあって新鮮でした。
客のこと、キャバ嬢同士の嫉妬のこと、黒服がキャバ嬢をその気にするテクニックのこと……昼の世界ではない話ばかりです。
著者はキャバ嬢の経験から「気のきく女性」として振る舞えるようになり、その代わり職場の女性に嫌われるようになります。
ただ、「気のきいた女性」というのはえてして女性に嫌われる、というのはわかるんですよね。なぜかというと職場の男性が「他の女性もこのくらいやってほしい」とハードルを上げてしまうからです。「自分のことは自分でやる」のが一番平等なんですよね。コーヒーも自分で入れればよろしい。オフィスは接客の場所じゃないから。
『うさぎさんのおしごと~バニーガールのイケナイないしょ話~』poko
学生時代、興味本位でバニーガールのアルバイトに応募してみた著者は、人手不足のために採用される。しかしそこは、体力と精神力が要求されるところだった。ガラの悪い先輩に怒鳴られたり、かわいいバニースーツが着れなかったり、バニーガールの仕事は苦労の連続で……。
一見エロい漫画みたいだけれどその実全くエロくなく、むしろ「バニーガール=エロい」という発想を打ち砕く作品です。著者が働いていたのはバニーガールがウエイトレスを務める高級店で、客と必要以上に会話したり疑似恋愛展開になったりはしません。なので当たり前のように彼氏がいる従業員も多いし、中には結婚をしている人もいます。
ボトルセールのときの販売数闘争など、下手をするとドロドロしてしまいそうなエピソードもありましたが、語り口がポップでコメディタッチなので笑って読むことができました。
セクハラネタもあるけどバニーガールたちがたくましいのであまり深刻にならずに読めます。
小売業
『花を育ててみたいのですが。枯らさないコツ、花屋が教えます』花福こざる
花屋で働いていた著者は、漫画で人々に向けて花の育て方を発信する。暑さ寒さに弱い植物や、花につく虫に触れつつ個々の花の育て方について解説。花に応じた世話の仕方で花を長く楽しめるようになる。花屋で働いていた著者は、漫画で人々に向けて花の育て方を発信する。暑さ寒さに弱い植物や、花につく虫に触れつつ個々の花の育て方について解説。花に応じた世話の仕方で花を長く楽しめるようになる。
漫画でわかりやすいですし、花ごとのアドバイスが興味深かったです。
原産地や日本での和名、別名なども開設されていました。花の名前って同じ花を違う名前で呼んでいることがあるからわかりにくいですよね。
この花はこういう名前なんだなということがわかってよかったです。街中で見る花の名前を思い出すことができそうです。
花は植えたらそれで終わりではなく、花それぞれ長く楽しむための世話の仕方があります。
そこにツッコんでいろいろ描いていたのが面白かったです。漫画らしく、ギャグな表現もあります。
インターネットでも悪名高いミントだけではなく、たくましい生態を持った植物が多かったです。生き物って強い。
『大阪デパ地下激戦区で働いています』猫田ゆう
デパ地下で蜂蜜を販売する店に就職した著者。人見知りなのに接客業に携わってしまい、最初は失敗の連続だった。しかし、来客の褒め言葉や、同僚の励ましを支えに少しずつ上達していく。「デパ地下の店員さん」がどんなふうに働いているのかわかるコミックエッセイ。
接客業というとクレーマーや長時間労働など、暗い話題が多いです。それだけに接客業のいい面をしっかり描いてくれたのが安心しました。
特に、著者が同じ蜂蜜を2個買った客に「こちらのほうがお得ですよ」とチューブ型の大きい蜂蜜をおすすめするシーンが印象的でした。後日、そのお客さんはわざわざ「チューブ型の蜂蜜が使いやすかった」と電話でお礼をくれます。
このような、実際にお礼を伝えてくれる人がいるのが、接客業のよさですよね。私は今そういうお礼をもらう機会のない、会社の奥まったところで仕事をしているので少しうらやましいです。
デパ地下の店員ならではの話題があるのも面白かったです。
年末に福袋を作るシーンは、「あれ店員さんが作ってたんだ!?」と思いました。どこかの工場みたいなところでまとめて作っているのかと。
みんなが大晦日を楽しんでいるころ、店員さんたちはひたすら福袋の制作に追われる……という、世知辛い事実を知りました。
飲食業
『働く!!インド人 印度定食屋繫盛記』速水りんこ
著者の夫、インド人のサッシーは著者と結婚するとともに日本に移住してきた。日本での就労に苦労したり、トラブルに巻き込まれつつも、自分の店を持つまでになる。著者も将来を案じ、サッシーと喧嘩しながらも、何だかんだとサッシーが店を持つまでを応援する。
著者の夫、サッシーが日本にわたり自分の店を持つまでを著者の視点から描いたコミックエッセイです。
著者の夫、サッシーはワーカーホリックな気質で働いてお客さんに喜んでもらうのが大好きです。著者はそんな夫を案じながらも「自分も仕事大好きだからなあ……」と共感もしています。
彼が店を出したいとなったときも「生活を安定させるためなら雇われの方がいいけど、本当にやりたいなら止めない」という立場を取ります。
こういうことを思うのであればなんだかんだ相性がいいんだなと思いました。
基本ギャグでハイテンションですが、それゆえにさらっと差し挟まれる日本で働く外国人の苦労に何とも言えない気持ちになります。
ポジティブな話を書いてもやっぱり就職差別はあります。
地元にも店を経営している外国人がいますが、こういう苦労があるんだな……と参考になりました。
『くいしんぼうの南インド生活』作画しばざきとしえ 原案あーちゃん
海外で起業したいという夢とともにインドにやってきた著者。南インドは豊かな食文化にあふれていた。南インドで食べたいろいろな食事、スイーツや、インドで仕事をする上での苦労、インド人の優しさを描いたコミックエッセイ。
食べ物関連のコミックエッセイは多いんですが、「南インドで起業する」というのがなかなかない状況で面白かったです。
海外で仕事をする人はガッツがあって面白いです。どうやって商売を軌道に乗せたのかは、ビジネス面で興味深かったです。
登場するインドの人がみんな親切で、気持ちのいい雰囲気だったのがよかったです。距離感が近くて家族のようです。本当はみんながみんな善人じゃないかもしれませんが、優しい漫画で癒されました。
多民族・多宗教で、宗派によっても食のタブーが分かれるインドには多様な食べ物があります。菜食主義の人が多いので肉を使わないメニューも豊富です。
定番のカレーから、付け合わせ、飲み物、スイーツなど大量の食事が出てくるのが面白かったです。情報量が多いです。
そして著者(原案者)がノリノリでご飯を食べるのも元気そうでよかったです。明るい内容でした。
宗教、信仰、スピリチュアル
『葬儀屋さんになったわけ』はがあおい
葬儀屋に就職した著者は、そこでさまざまな体験をする。遺族や喪主にどう寄り添うか、葬儀という儀式をどう滞りなく進行するか、僧侶や関係会社とのやりとりはどうするか……。仕事に向き合い、考えるうちに、人間としても成長していくコミックエッセイ。
感動的な話から、ブラックジョークのような話まで取り揃えていて面白かったです。葬儀屋独自のエピソードや知識がふんだんにありました。
印象的だったのは、喪主や遺族のリクエストに応えていろいろな葬儀に対応することです。
絵の教師だった故人を偲ぶために、教え子たちに棺に絵を描いてもらいたいという遺族。その提案を受け入れ、どうやって実現するか考えるところが面白かったです。
実際自分が喪主になるときはこんなこと考える余裕がなさそうですが、こういうイレギュラーな要望にも対応してくれるのは安心感があります。
葬儀という場所で故人とお別れをする人たちを見ていると、弔いは生きる人のためのものでもあると意識してしまいます。
死後の世界があるかどうかなんてわかりません。しかし死者のために祈り、儀式を行い、別れをすること自体が人の心を支えます。
『神主さんの日常』瀬上あきら
埼玉県に存在する三峯神社。漫画家である著者はその神社の神職を取材する。そこからわかったのは、神主という仕事の大変さだった。力仕事が多かったり、祭祀に使うものを手作りしたり、賽銭泥棒への対応だったり……意外と知らない神主の日常を知るコミックエッセイ。
山を登ったり重たいものを持ったり、体力仕事が多いのが印象的でした。結局フィジカル……。大雪で雪かきをしながら祭祀をやっているくだりも面白がっていいのか哀れめばいいのかわからなかったですね。
適度に休んでくれとは思いますけど。
女性神職の話も面白かったです。
男性とは衣服が違ったり、女性ゆえの悩みがあったり……。
地元ではあまり見かけたことはないですが、どこかにいるのですかねえ。
兼業神職の話も面白かったですね。
農家と兼ねている人がいるのは知っていましたが、お払いをやったり儀式をやったりするときは神社に行って仕事をする。長い期間神社の仕事をやっていると作物を駄目にしてしまう……という話に笑いました。
他の神社と兼ねている人も、かけもちは大変そうでした。
『坊主DAYS』杜康潤
漫画家、杜康潤の実家は臨済宗の寺。住職である兄に聞き取り調査をしつつ、僧侶になるまでの苦労や、寺での日常を語る。僧侶になるまでの修行の厳しさ、住職として地域を支える多忙さ、現代ならではのお寺の事情など、宗教が身近に感じるかもしれないコミックエッセイ。
修行のことも寺の運営のことも、実際内部のことを聞いてみる機会がないから新鮮で面白かったです。寺の人間しかわからない僧侶同士の独自の文化や、それを取り巻く人々の行動が興味深かったです。
特に面白かったのが修行にまつわるあれこれで、托鉢のこと、食べ物のこと、日々の生活のこと、そのどれもが俗世とかけ離れていて驚きました。でも宗教をやるってそんなものなのかもしれないですね。
修行僧の行動ひとつひとつに決まりがあって、朝起きる瞬間から、寝るまでルールの中にどっぷり浸かっています。これで何だかんだ納得して僧侶になっているところが、信心のない人間からは不思議です。
漫画としてはとても面白い一方で、寺というシステムを維持するために家父長制や男尊女卑に頼っているところがあり、これから大丈夫なんだろうかと心配になりました。
例えば著者の兄が住職になって父親の跡を継ぐことに関してはほぼ拒否権がなかったですし、男だから、長男だから跡を継ぐ前提というのもプレッシャーすごいだろうなと思います。
『主婦だけど霊感占い師やってます。』AQUA・あらた真琴
幼いころから霊感が鋭かった著者は、大学時代に特技の占いをやっていた。卒業して占い師を志し、就職するも、結婚・出産によって一時引退。もう一度占い師としてやり直したのはインターネットの世界だった。占い師の苦労や喜びを描いたコミックエッセイ。
私自身はろくに占いというものを信じていないのですが、ひとつの仕事の話として面白かったです。
占い師同士のコミュニケーションや、日々どのようにして仕事を受けているのか、仕事の悩みなどが描かれています。
普段占い師と直接話す機会がないだけに、新鮮でした。
面白かったのはDV被害を訴えてくる女性には「DV支援団体のHP」や「弁護士会のHP」を教えるというもの。すごくまともだなあと思いました。そりゃ、それは福祉や司法の領域ですよね。
こうして「自分を助けてくれる相手」を紹介してくれるのなら、占いも悪くはないのかもしれないと思いました。
そもそもこの世には理屈や倫理で解決しないことが多くあるのだから、そういう面の話をスピリチュアルなことで解決するのは責められない気がします。福祉で解決できることは、福祉につないでくれと思いますけどね。
その他
『格安物件の大家とワケあり住人たち』たかはし志貴
著者の母は格安物件の大家をしている。格安物件なだけあって、訳ありな住人たちが多く、彼女は振り回されっぱなしである。住民たちとのへんてこなトラブルを主に、部屋を借りるときに気をつけたいこと、不動産を買うときに気をつけたいことなども描いたコメディコミックエッセイ。
露悪的すぎる話だったら悲しいなと思っていたんですが、読んでみたら人情味のある話題もありそんなに苦しくならずに読めました。
大家である著者の母が何だかんだ住民たちのことを気遣い思っているところがよかったです。それが裏切られることも多々あるのですが。
この方のアパートは、ある意味地域のセーフティネットとして機能していたのではないか、と思うとばかにはできない仕事です。
ほとんどはよくない店子の話題な一方で、ちょっといい話で終わる回もあり、そういう四コマを読むとほっとしましたね。
共用スペースを荒らされるとか、トラブルで夜逃げをされるとか、もちろん生々しい話も合って興味深かったです。
夜逃げの話題は、自分にとって身近でないだけに面白かったです。逃げるだけならともかく、家賃滞納したままバックレられるのはつらいです。
あと、どう考えても店子が悪い場面でも「契約書に書いていないから」で逃げられる状況もあり、契約書って大事だなあと思いました。
『3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記』さいおなお
保育士だったが、日々の雑務に追われ、「もっと子どもと向き合う仕事がしたい」とベビーシッターになった著者。ベビーシッターの仕事の内容から、子どもと付き合う上での悩み、保護者とのやりとりなど、子どもを世話する仕事について語る。
著者はもともと保育士でしたが、保育士の仕事は子どもを相手する以外の雑務が多く、もっと子どもと向き合う仕事がしたいと考えていました。そしてベビーシッターに転職し、個人で子どもを世話する仕事を始めます。
保育所へ送迎する仕事が多い、公園に遊びに行って他の保護者に話しかけられたときベビーシッターと名乗るか迷う、など、実際に仕事をしているからこそ描けるエピソードが多くて面白かったです。
ベビーシッターを頼むのはお金がかかるし、他人を家に上げることへの抵抗もあります。著者もそこは否定しません。
しかし「家が散らかっていても気にしませんよ」「自分のためにベビーシッターを頼んでもいいんですよ」と、ベビーシッターを頼みたいけれど迷っている人たちへ優しい言葉をかけます。
仕事としてお金をもらいたい、というのはもちろんあるとは思うんですが、保護者に少し楽になってほしい、というメッセージが感じられて好きでした。
『ゴミ清掃員の日常』滝川秀一・滝川友紀
売れない芸人の著者。そんな著者が始めたのはゴミ収集の仕事だった。日払いOK・副業OKのその仕事で生活を安定させることができた。しかしゴミ清掃員の仕事を続けるうちに、ゴミを通して社会のことを考えるようになる。ゴミ出し、回収から見えてくる、人々の生き方とは……。
普段ゴミ収集について深く考えたことがなかったので、知らない情報が多く面白かったです。
ゴミ収集がどういう仕事をして、どういう風に街をめぐっているか具体的に描かれているので、ぐっと想像がしやすくなりました。世界が広がった気がします。
怖いのは出されたゴミで地域の治安や品の良さがわかるところです。金持ちが多い地域はゴミが少なく、治安が悪い地域はゴミ出しのマナーが悪い。そして貧乏人はゴミが多い。世知辛い内容ではありますが、自分もゴミには気を付けよう……と思ってしまいました。
著者とともに働く人々のエピソードも面白いものが多かったです。
印象的だったのががんの抗がん剤治療をせず、「死ぬまで普通の生活をしたい」とゴミ収集の仕事をしていた同僚の男性。「普通に生きる」とはなんだろう……と思わされました。
ゴミ収集の仕事は外国人労働者も多く、外国からやってきた人々との交流もほほえましかったです。
以上です。興味があるものがあったらぜひ読んでみてください。


































