ブックワームのひとりごと

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横浜駅SF、家族喰い、天盆。2017年下半期面白かった本21選

 

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2017年が終わってしまう……。

今回は下半期面白かったおすすめ本のまとめです。

 上半期はこちら。

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 『遠鳴堂あやかし事件帖』椎名蓮月 富士見L文庫

 古書の修繕をしている遠鳴堂(とおめいどう)。しかしその店は裏の仕事もあった。遠鳴堂で暮らしている叔父に預けられた少年、明(あきら)は、雑霊が見える。ある日クラスメイトに雑霊が憑りついているのを見て気になり……。

人の心を扱いながら、どこかドライでシビア。でも最終的には優しい話です。いい話だけれど甘くない塩梅が好きです。

 ただ、残念なことに多分打ち切りなんですよね。

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 『[映]アムリタ』野崎まど メディアワークス文庫

自主映画製作に誘われた役者で大学生の二見。彼は渡された絵コンテを二日間ぶっ通しで読んでしまった。そのコンテを作ったのは最早というひとつ後輩の女性だった。二見は映画製作をするうちに、彼女の心をはかりかねるようになる。

私は面白かったけれど、この本を読んで「金返せ」という人もいると思います。そのくらい尖った本でした。

万人受けはしないと思います。でも、ぶっとんだ話を求めている人にはおすすめです。

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[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

 

 

 

 『霧の日にはラノンが視える』縞田理理 ウィングス文庫

一族にかけられた呪いから逃れるため、ロンドンにやってきた少年ラムジー。そこでジャックという男性に助けられる。彼は実は、妖精の世界からやってきた人で……。妖精郷ラノンから流された人々が織りなす現代ファンタジー。

キャラクターがみんないい人で、それでいてわざとらしくないのがよかったです。善意の物語ですが、押しつけがましくありませんでした。

女性向けではあるけれども、それほどあからさまではないので男性にも読みやすいと思います。

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『新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』 小野一光 

多数の死者と行方不明者を出した尼崎連続変死事件。その中心となったのは、角田美代子というひとりの女だった。著者は尼崎で聞き取り調査をし、その地獄のような手口と、被害の全容を明らかにしようとする。

そんじょそこらのホラー小説よりよっぽど怖い話です。お互いを守るための「家族」が、殺し合い傷つけあう存在に変わる。その恐ろしさで読むのが辛かったです。

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新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相 (文春文庫)

新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相 (文春文庫)

 

 

 

 『横浜駅SF』柞刈湯葉 カドカワBOOKS

 横浜駅が増殖し、日本を覆いつくした未来。横浜駅の外で育った三島ヒロトは、5日間だけ駅の内部(エキナカ)で過ごせる「18きっぷ」を手に入れ、42番出口を目指して旅立つ。ヒロトエキナカで見た横浜駅の真実とは……。

 日本全国が横浜駅で覆いつくされるというトンデモ設定ですが、読み進めるとまじめにSFしていることに気づきます。バカSFとハードSF、ふたつの面を持っているところが印象深かったです。

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横浜駅SF (カドカワBOOKS)

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

 
横浜駅SF 全国版 (カドカワBOOKS)

横浜駅SF 全国版 (カドカワBOOKS)

 

 

 『発達障害の人の内定ハンドブック 「発達障害の人の就活ノート」完全版』石井京子ほか 

発達障害者が就職活動するためにはどうすればいいのか? 就労を考えている発達障害の人のために、面接で気を付けること、履歴書の書き方、就活に対する心構えなど、初歩的なことから解説していく手引書。

就活に失敗した人の中には、「どう調べればいいのかわからない、何から始めればいいのかわからない」という手がかりのなさが原因の人が結構いるので、そういう人に参考になりそうな本です。

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発達障害の人の内定ハンドブック―『発達障害の人の就活ノートII』完全版

発達障害の人の内定ハンドブック―『発達障害の人の就活ノートII』完全版

 

 

 

ゴーストハント小野不由美 幽BOOKS

 旧校舎で起こった心霊事件を解決しにやってきた渋谷一也、通称ナル。彼の事務所でバイトすることになった麻衣は、彼と個性豊かな霊能力者たちと心霊事件に挑む。たびたび夢に出てくるナルに、麻衣は淡い恋心を抱くのだが……。

オカルトと、論理的な謎解きの要素が面白いシリーズ。

恋愛要素はありますが、それがメインというわけではないので、男性にもおすすめしやすいシリーズです。

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ゴーストハント1 旧校舎怪談 (幽BOOKS)

ゴーストハント1 旧校舎怪談 (幽BOOKS)

 

 

『天盆』王城夕紀 中公文庫

「天盆」というボードゲームで立身出世をする国。捨て子の凡天は、幼いころから天盆の才能を見せ、貪欲に知識を吸収していく。凡天の家族は、それを見守り応援していた。やがて凡天は大会に出ることになり……。

ボードゲームが国を動かす、というトンデモ設定ですが、ゲームの内容の面白さに、設定を受け入れてしまいます。

凡天の家族のキャラクターも魅力的で、家族のあたたかみを感じます。

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天盆 (中公文庫)

天盆 (中公文庫)

 

 

 『パリの断頭台 七代にわたる死刑執行人サンソン家年代記』バーバラ・レヴィ 法政大学出版局

七代にわたってパリで死刑執行人を担当してきたサンソン家。フランス革命を中心に、彼らの歴史を紐といていく。そこには、時代によって変わる死刑へのまなざし、死刑執行人に対する差別への歴史があった。

時代によって変わっていく差別への価値観が興味深かったです。恐怖政治のときは本当にやばかったんだなあ……。

フランス革命を、死刑執行人という視点から見たのが新鮮でした。

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パリの断頭台 〈新装版〉: 七代にわたる死刑執行人サンソン家年代記

パリの断頭台 〈新装版〉: 七代にわたる死刑執行人サンソン家年代記

 

 

 『黄金の王 白銀の王』沢村凛 角川文庫

鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)という二つの氏族が王位を争い続けてきた翠(すい)の国。囚われていた旺廈の頭領薫衣(くのえ)は、鳳穐の頭領で現王の穭(ひづち)に協力を持ちかけられる。それは、長い争いを終わらせ、翠の国に平和をもたらすための戦いだった。

政治をテーマにした地味なファンタジー。しかし、結局政治は地味な積み重ねが物を言うのだと感じさせます。

ラストは衝撃だったけれど、これが一番理想的な終わり方だったかもしれないと思います。

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黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

 

 

 『世にも奇妙なマラソン大会』高野秀行 集英社文庫

悪ノリをして西サハラでマラソンをすることになった表題作、インドに入国するため改名をしようとする話、海外で起こったちょっと不思議な話など、掌編~中編のノンフィクションをまとめた一冊。

著者は基本的にばかばかしいことばかりやっているけれど、ふとしたときに鋭い洞察を示すのがくせになります。

笑いながら、はっとさせられることの繰り返しです。

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世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)
 

 

 

 『幕が上がる』平田オリザ 講談社文庫

地方の高校演劇部にやってきた新任の顧問が、彼女らの意識を変えていく。「大会で勝ち残りたい」という意思が、演劇のクオリティを高める。演出を担当することに主人公

は、『銀河鉄道の夜』を翻案した脚本の結末に悩むが……。

高校演劇が出来上がる過程が面白かったです。生き物のように変わっていくストーリーを見ていると、演劇が見たくなってきました。

悩める彼女たちの姿は、創作をやったことのある人には共感しやすいと思います。

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幕が上がる (講談社文庫)

幕が上がる (講談社文庫)

 

 

 『カステラ』パク・ミンギュ クレイン

タヌキゲームにはまってしまったインターン先の社員、何でも入る冷蔵庫、宇宙人の襲撃を受けている農地……。ごく普通の日常にシュールな題材を交え、絶望とユーモアをもって人間を描き出す短編集。

現代韓国の社会の闇と、シュールレアリスムのような唐突なファンタジー要素が合わさっています。

正直よくわからないけれど、わからないからこそ興味を持ってしまう、そんな話でした。

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カステラ

カステラ

 

 

 

 『有頂天家族森見登美彦 幻冬舎文庫

父親が人間たちに狸鍋にされてしまった狸の四兄弟。しかしその息子たちは阿呆ばかりだった。主人公である矢三郎は、さまざまな姿に化けてふらふらしつつ、天狗や狸の間を駆け巡る。

「それはないだろう」という展開の連続ですが、狸と天狗のファンタジーお祭り騒ぎだということがわかれば楽しく読めます。

キャラクターが全員濃いので、ライトノベル好きな人にもとっつきやすい話だと思います。

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有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

 
有頂天家族 二代目の帰朝 (幻冬舎文庫)
 

 

 

動物農場ジョージ・オーウェル ハヤカワ文庫

農場主を追い出し、自分たちで農場を運営していくようになった動物たち。しかし農場のトップになったブタたちは、日に日に特権階級としてふるまうようになっていく。他の動物たちはその前になすすべもなく……。

大人のためのブラック寓話。ソビエト・ロシアの歴史を知っているとわかりやすいかもしれません。

翻訳が読みやすいので、外国文学が苦手な人にも少し読んでみてほしいです。

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 『ボンクラーズ・ドントクライ』大樹連司 ガガガ文庫

二人でヒーローごっこをしていた映画研究部の「僕」とカントク。そこに男装の少女桐香が現れたことから、映画研究部は変わっていく。三人の淡い恋の行方はいったいどうなるのか……。

三角関係ものではありますが、そんなにドロドロしていません。淡い恋の自覚と、その失恋の物語です。

ハッピーエンドではないけれど、爽やかな終わり方でした。

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ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)

ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)

 

 

 

 『督促OL修行日記』榎本まみ 文春文庫

就職氷河期の時代、著者、榎本まみがなんとか内定をとったのはクレジットカード会社。彼女はそこで、キャッシングの返済を延滞している人たちに督促をする仕事に就く。あまりにブラックな部署に心が折れそうになるが……。

早く辞めろよ! という気分になりつつも、「督促」という仕事が世の中になくてはならないことがわかるエッセイでもあります。

ストレスから心を守るライフハックも紹介されていて、接客業の人には参考になると思います。

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督促OL 修行日記 (文春文庫)

督促OL 修行日記 (文春文庫)

 

 

『電気サーカス』唐辺葉介 アスキー・メディアワークス

テキストサイト「電気サーカス」を運営している主人公水屋口(みずやぐち)。ネットの仲間と部屋をシェアし、フリーターとして暮らす。そんな中、水屋口は真赤(仮名)という中学生に出会う。

露悪的でろくでもない生活を書いているだけなんですが、なんだか親近感を覚えてしまいます。それは、私もテキストサイトの時代を少し知っているからでしょうね。

かなり人を選ぶ話ですが、私は好きです。

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 『オペラ座の怪人ガストン・ルルー 光文社古典新訳文庫

めきめきと上達を始めたオペラ座の歌手、クリスティーヌ。彼女はどうやら、「天使」と呼ばれる謎の声とレッスンをしているようだった。同時にオペラ座の中では、ある噂がささやかれていた。ここには「怪人(ファントム)」がいる……。

怪人の、語彙力のあるヤンデレっぷりがすごかったです。ミュージカル版よりずっとやばい。

許されることではないけれど、ある意味かわいそうなキャラクターでした。

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オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫)

オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫)

 

 

 『神様がくれた指』佐藤多佳子 新潮文庫

刑務所から出たばかりのスリ、辻は電車で少年少女のスリ集団を目撃する。そのひとりを追いかけてけがをした辻は、昼間という占い師に助けられた。昼間と同居しながら少年たちを追う辻。一方昼間も、占いを通して事件の一部に触れていた……。

奇妙で優しい、友情物語でした。だめな男ふたりが出会い、事件に向き合い、あるひとつの結末を迎える。その過程がよかったです。

犯罪者なのにかっこいい、という背徳感がありました。

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神様がくれた指 (新潮文庫)

神様がくれた指 (新潮文庫)

 

 

 『ニライカナイをさがして』葉山透 富士見ミステリー文庫

人気アイドル、宮沢梨花に空港で出くわし、さらわれるように沖縄に向かった主人公。ふたりは石垣島を経由して日本最南端の島、波照間島へ来た。そこで見た、アイドル梨花の秘密とは……。

恥ずかしくなるくらいさわやかな青春もの。ひと夏の恋っていいですよね。

ヒロイン梨花がわがままながらも、悩み惑い、現実と向き合っているキャラクターなので憎めなかったです。

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 『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本』對馬陽一郎

発達障害の人が上手に働くために、スマホアプリ、お役立ちグッズ、周囲の協力など、さまざまな工夫を紹介する。遅刻癖や忘れ物癖、ほうれんそうの仕方までさまざまな困りごとの解決策をアドバイスする本。

非常に情報量が多く、がっつり読めます。しかもアドバイスがすべて具体的で、実際に試してみることができるものばかり。

発達障害の人だけでなく、日常に困りごとを抱えている人にはぜひ読んでほしいです。

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まとめ

この記事を書き始めた12月に、怒涛の勢いで面白かった本が増えました。そういう時期ってありますよね。

そんなわけで、この記事を「ブックワームのひとりごと」の2017年の総括とします。一年間ありがとうございました。来年もぼちぼち更新します。