ブックワームのひとりごと

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狂気を感じる小説おすすめ16選

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今日の更新は狂気を感じるおすすめ小説のまとめです。

ラッコキーワードでまとめ記事のネタを探していたら「小説 狂気 おすすめ」という検索ワードを見かけました。これは結構感想を書いてきた過去があるぞとテーマとして採用。

ラッコキーワード(旧:関連キーワード取得ツール(仮名・β版))

というわけで以下おすすめです。

 

 

 オペラ座を舞台にしたヤンデレ文学『オペラ座の怪人』

めきめきと上達を始めたオペラ座の歌手、クリスティーヌ。彼女はどうやら、「天使」と呼ばれる謎の声とレッスンをしているようだった。同時にオペラ座の中では、ある噂がささやかれていた。ここには「怪人(ファントム)」がいる……。

怪人のヤンデレっぷりが恐ろしいです。ミュージカル映画版はこれでもライトになったほうだということがわかりました。クリスティーヌに対する感情が崇拝→憎悪→泣き落としと感情がコロコロ変わっていくのが怖くもあり、またかわいそうでもありました。

怪人がやったことは、フォローしようがないほど邪悪なんですが、それでも醜い彼に倫理観を教えてあげる人はひとりもいなかったんだろうな……と思うと、やりきれないものがあります。

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

 あのころのインターネットで病んでいた人たち『電気サーカス』

テキストサイト「電気サーカス」を運営している主人公水屋口。ネットの仲間と部屋をシェアし、フリーターとして暮らす。そんな中、水屋口は真赤(仮名)という中学生に出会う。

狂気というよりメンヘラ路線。話が進むにつれ、主人公はラムネ感覚で精神薬をかじり、定職にもつけなくなっていきます。ここからどうするの? と思うくらいの堕落っぷり。

そんな露悪的な小説ですが、不思議とあまり不快な感じはしませんでした。その理由は、堕落への悲哀や批判があまりなく、淡々と書かれていたからだろうなと思います。

個人サイトや日記サイトで育ってきた人たちには懐かしい本だと思います。

honkuimusi.hatenablog.com

電気サーカス (アスキー書籍)

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 今ここにいる「自分」とは何か『ドッペルゲンガーの恋人』

 研究者である「僕」は極秘プロジェクトによって病気で死んだ恋人、慧のクローンを作り、記憶のデータを移し替えて蘇らせる。しかし一緒に暮らすうちに、慧は自分のアイデンティティに悩み、精神的に追い詰められていき……。

クローンで恋人を蘇らせるという設定はベタなのですが、そこから生まれてくるアイデンティティクライシスの描写がすごかったです。

死ぬ前の自分との連続性を信じられず、「自分は慧ではないのではないか」と不安になり、物や恋人に八つ当たりするクローン慧の姿は哀れでした。同時に鬼気迫るものでもあります。おかしくなっていく慧を読むのは心がつらかったです。

クローン技術について専門的な内容は書かれてはいないんですが、実際にクローン技術が確立されたら、こういうことがありそうだと思えます。SFの物語にリアリティを生み出すのは技術的な要素だけではないんですよね。
honkuimusi.hatenablog.com

 

 精神病棟で自分自身の闇に向き合う『クワイエットルームにようこそ』

 オーバードーズで精神病院の隔離病棟に運ばれた「私」。多種多様な問題を抱える女性たちとかかわりながら、なんとか早く脱出しようと試みる。果たして「私」は正気なのか……。

作者が意図しているかどうかはわからないのですが、この作品は「病識」の話ですね。

病識とは、精神疾患の人が「自分は病気だ」と気づくこと。この病識を持てないと治療は困難を極めます。自分が病気だという意識がないものだから、薬をさぼったり病院に行かなかったりします。

正気ってなんだろう? と己に問いたくなる話です。

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自分しかいない世界で狂っていく男『俺俺』

 盗んだ携帯電話で何気なくオレオレ詐欺をしてしまった主人公は、それをきっかけに次々と「俺」と出会う。最初は三人だった「俺」は、次々に増殖していき、今や世界は「俺」だらけの世界に。自他の区別が極限まであいまいになっていく中で、主人公のアイデンティティは混乱を極める。

この世に複数の「俺」がいることに気付いた主人公は、最初は戸惑いますが、容易く共感でき、わかり合うことのできる「俺」たちと打ち解けていきます。しかし徐々に嫌悪感を覚え、俺自身を否定する「俺」が登場してしまったことから歯車が狂い始めます。

こうした展開を見ていると、この世にわかり合えない人がいることは、幸せなことだと思いました。自分と相手の境界線があやふやになることで、生まれる暴力性もあります。「あの人には私のわからない幸せや不幸があるのだ」と思うことで、相手のことを許せることもあります。『俺俺』はそういう距離感をすべて失ってしまった世界の物語です。

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 何が確かなのかわからなくなる演劇小説『ハムレット・シンドローム』

事故により自分がハムレットだと思い込むようになった男、コマツアリマサ。彼が本当に狂っているのかどうかを確かめるため、ソフエは彼の住む城に潜入する。そこは、コマツが客人を巻き込んでハムレットを演じ続ける場所だった。

どういう小説なのかひとことでは言い表しにくい本です。それほど虚構と真実、嘘と本音、役柄と役者、舞台と観客の垣根がないんですよね。

読者である私が「こういうことかな?」と納得しかけたとたんに物語が逃げていき、何度も解釈の中で迷子になります。でも、それが面白いです。わけのわからなさが面白い。

わかりやすいオチ、わかりやすいドラマが展開される作品ではないので、人におすすめしづらいです。でも「奇書」や「怪作」という言葉に惹かれてしまう人には楽しめると思います。

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 横領にハマってしまった女性の破滅を描く『紙の月』

銀行で契約社員として働く平凡な女性、梨花。彼女は光太という顧客の孫に出会ったことをきっかけに、顧客のお金を横領するようになる。しだいに罪悪感は薄れ、横領の桁が上がっていき、果たして彼女の行く末は……。

小説の梨花はごく普通の主婦。それゆえに横領に手を出していく展開が恐ろしいです。誰でもこういうことをやってしまいそうだなという説得力があります。ところどころに脇役視点の幕間で、買い物依存、横領が誰にでも起こりうることが感じられます。

まともと異常は紙一重だということを教えてくれる作品です。

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 悪趣味な狂気的オチ『アムリタ』

 

自主映画製作に誘われた役者で大学生の二見。彼は渡された絵コンテを二日間ぶっ通しで読んでしまった。そのコンテを作ったのは最早というひとつ後輩の女性だった。二見は映画製作をするうちに彼女の心をはかりかねるようになる。

やばい……となるんですがこの作品のどこが狂気的か言うとネタバレになってしまうので言えません。

賛否両論ありそうなんですが悪趣味で個性的な話が好きなら読んでみてほしいです。

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 耽美でおかしなラブストーリー『薬指の標本』

主人公は標本技師の男に事務員として雇われる。そこは、あらゆるものを標本にして保存する場所だった。男に靴をプレゼントされた主人公は、だんだんと標本技師に囚われていくことになる。

標本室で働く女性と、標本技師の男性の密やかな恋物語。美しくて淡々としているけれども、読み進めると「うわあ」となってくる作品です。

閉じ込められること、思考を放棄して恋に身をゆだねる甘やかさがきれいな文体で描かれていて面白いです。

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 移植された眼球が導く猟奇ホラー「暗黒童話」

 事故に遭い、記憶と片目を失った主人公。移植された眼球は、自分でない人の記憶を映し出す。眼球を通して事件を目撃した主人公は、眼球の提供者の故郷に向かう。そこで彼女が知った真実とは……。

 この小説本当に怖かった……グロデスクさ、狂気性、描写、どれをとっても本当に怖いです。

ただグロいから、狂気的だから怖いのではなくて、それがきちんと物語に必要性があって、なおかつ映像的にくっきり想像できる描写力で語られているのが怖すぎました。読み終わって本当にほっとしました。

もう一つ面白かったのが丁寧な伏線と、後半の回収の仕方です。そもそもなぜ眼球が記憶を持っていたのか? という理由にもアンサーがありますし、犯人の正体にはぎょっとします。そして、主人公である気弱な「私」が最後の最後でさよならをする展開はちょっとしんみりしました。

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誘拐された少女たちが、連続殺人鬼の箱庭から生き延びる『蝶のいた庭』

背中に蝶の入れ墨を入れた少女たちが保護された。そのひとりであるマヤという少女は、警察に事情を聴かれるが、巧みな話術で何度も警察官たちをけむに巻く。根気強く彼女の語りを聞く中で、おぞましい庭園の姿が浮かび上がってくる。

背中に蝶の羽が描かれた少女たちが暮らす、美しい庭園。ガラスケースに並べられた彼女らの「標本」。ひたすら若さを消費する、耽美な世界。

一方で、21歳になると必ず殺される蝶たちの「死への恐怖」は生々しく真に迫っていて、これが美しいだけの話ではないとしっかり示してくれます。美しさに浸ることを肯定していない、耽美の概念を打ち破っている話でした。

この話でより怖いのが殺人鬼に悪気がなさそうなところなんですよね……本人の主観では少女たちを愛しているんです。本当に怖い。

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狂っているのは世界か主人公は『コンビニ人間』

 18年間コンビニ店員を続けていた女性、古倉。彼女はコンビニでしか生きていけなかった。そんな中、彼女のいるコンビニに白羽というアルバイトの男がやってくる。他人を見下し、周囲に攻撃的な彼と、古倉はある取引をすることになる。

主人公はおそらくサイコパス(共感能力がない)人間なんだと思います。

でも、確かに主人公はヤバい女だけれど、コンビニ店員でい続ける限り、他の人に迷惑をかけているわけではないんですよね。

ヤバい人を許さない社会にも問題があるのではないか、寛容とは何か……を考えてしまう作品です。

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 苛烈な不良少年のビフォーアフター『時計仕掛けのオレンジ』

15歳のアレックスは暴力、盗み、強姦など、破滅的な犯罪を繰り返していた。ある老女の家を襲ったときに当局に捕まり、謎のプログラムを受けさせられる。それは、アレックスのような犯罪者を犯罪を犯さないよう矯正するプログラムだった。アレックスは見せられた映像によって恐ろしい苦痛を受けるが……。

この作品の特徴は、造語が多用されること。「ドルーグ(なかま)」「スコリー(少し)」「デボーチカ(女の子)」などなど。造語には日本語訳のルビが振られているため、覚えなくても読めます。

矯正プログラムによる苦痛、そしてそれによって何が変化したのか、考えれば考えるほど怖くなってくる本です。

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 サイコパス教師が学校をめちゃくちゃにする『悪の教典』

優秀で生徒からの人望も厚く、ユーモアもある教師、蓮実聖司。しかし、その正体は共感能力のない殺人鬼だった。自分を邪魔するものを退学、辞職、死亡へと追い込んでいく蓮実。一方で、蓮実の教え子の怜花は、類まれな第六感で蓮実に恐怖を覚えていた。

全方位に最悪なサイコパスです。蓮実は善人も悪人も平等に殺します。そこにあるのは、性欲や名誉欲など、ひたすら自分の欲望を満たしていく男の姿。狂ってはいますが合理的である意味潔いです。

その他にも淫行教師(複数名)、他の殺人犯、蓮実に調教される女子高生など、よりどりみどりなキャラクターも登場します。全員キャラが立っていてすんなり覚えられました。

蓮実の受け持ちクラス全体が破滅に突き進んでいく、オチがわかりやすい作品です。

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狂気が伝染していく生物学ホラー『天使の囀り』

新聞社の企画のアマゾン旅から帰ってきた高梨は、徐々に「死」に執着するようになり自殺してしまった。高梨の恋人だった早苗は、高梨と道中を共にした学者たちが次々に不可解な自殺をしたことを知る。彼らは「天使の囀り」を聞いたという。早苗は死の真相に迫るべく、自殺した人々を調べる。

伏線の作り方、その回収の仕方がすごい。メインストーリーの謎解きはもちろんのこと、何気ない会話やアイテムが後半重要な役割を果たします。

「何か」の影響によって自分が嫌いなもの、恐れているものに執着し、謎の陶酔に陥っていく被害者たちの描写が恐ろしいです。

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閉鎖空間の中で少女たちが目覚めては死んでいく『〈少女庭国〉』

 中学校の卒業式に向かっていたはずの羊歯子は立方体の部屋の中で目覚めた。部屋には「下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ」という張り紙がしてあった。羊歯子がドアを開けるたびに、卒業生が増えていく。無限に続く部屋で少女たちは何をするのか?

面白いんですけど「面白い」と言うと品性を疑われそうな作品です。デスゲームっぽい展開は序章に過ぎず、読み進めるほどに狂気的な世界観が広がり続けていきます。

ひねくれた学生がノートに書き残していた妄想を小説としてお出しするような感覚。かなり好き嫌いは分かれると思いますが私は好きです。

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 以上です。興味があったら読んでみてください。

 

 

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