ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

2015年以降に発行されたおすすめファンタジーラノべ・ライト文芸13選

Tachiuwa クラシカルウィッチ帽 魔女帽子 大人帽子 ハロウィン用 帽子 コスプレ ハロウィンパーティーグッズ 女性キャラクター魔術師帽子 パーティーハット 魔法 三角帽子小悪魔 ウィッチハット 仮装 コスプレ イベント コスチューム用小物 男女共用 黒, ペンダントなし

ファンタジーラノベの話題になると「〇〇みたいな古すぎる作品を勧めるな」みたいな話になるので、逆にこれは古すぎないかな、という作品をまとめてみました。

2015年なのはきりがいいからですが、5年に一回くらいこういう記事を書いてもいいかもしれないですね。

 

 

 

出オチかと思ったら真面目に後宮陰謀やってるしヒロインは強すぎる『大阪マダム、後宮妃になる!』

大阪で生まれ育ったアラサーの女が、ある日中華風の異世界に転生してしまった。さらに大金持ちの親によって後宮に送り込まれることに。商才とおせっかいの力で、後宮で一番力を持つ妃になるものの、ビジネス上の付き合いである皇帝には何か秘密があるようで……。

たこ焼きやお好み焼きを愛し、熱烈な阪神ファンであるヒロイン。リアル大阪人である私とすれば「こんな大阪の女おらんわ」とツッコんでしまうのですが、勢いの良さにだんだんリアリティなどどうでもよくなってきます。

めちゃくちゃなヒロインの設定の一方で、作品の世界観はしっかりしています。貧富の差や身分差が激しい社会で、貴族たちが陰謀を巡らせ合っている。中華風の文化の書き込みも結構細かくて、「なんちゃって」感が少ないです。中国に詳しくないのでリアリティはいかほどかわかりませんが、「ありそう」と思える描写なんですよね。

ヒロインも優しくて姉御肌だし、とにかく気持ちのいい作品でした。

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ひとり暮らしをしたら、しゃべる家電が彼氏面をしてくる小説『家電彼氏』

大学進学をきっかけにひとり暮らしを始めた塔子。しかし家に置いてある、体重計や電子レンジ、掃除機が勝手にしゃべり始める。彼らは塔子の彼氏面をし出し、何かと塔子の私生活に口を出すようになる。塔子は個性豊かな家電たちに翻弄される毎日を送る。

イラストには美麗な擬人化キャラが添えられているんですが、あくまで本文中では家電は家電であり、人間の姿をしていません。

つまり塔子は文字通り家電に彼氏面をされています。

ある意味人外×人間ものだと言えるのかもしれませんが、相手が家電なのでロマンチックさのかけらもありません。塔子に彼氏っぽいものができそうになると「家電に例えるとどんな感じ?」と聞くし、機能をディスると機嫌を損ねます。

それから、主人公の塔子がありがちないい子ちゃんのキャラではなく、年相応にドジだったり愚かだったり欠点があるところが愛しいです。友達に見栄を張ってしまったり失言をしたり。人間味があって好きです。

トンチキコメディとしてはおすすめです。

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星が人生を決める階級社会で国の中枢に乗り込み社会を変える『天球の星使い きみの祈りを守る歌』

星の力で魔法を使う世界。社会は星の加護を持つ「星の子」と星を持たない「星なし」の階級に分かれていた。星なしの子アステラは、育ての親のロキと暮らしていたが、仕事をしようとしても失敗ばかり。そんな折、星の子たちが学ぶ学院の入学試験に潜入すれば、本当の父親のことを教えてやるとロキに言われる。

まず面白かったところから話します。主人公はお姫様ではなく身寄りのない少女、それもおかしな不運に巻き込まれている、という出だしは魅力的でした。

また、星や星座をモチーフにした魔法世界の設定が美しく、読みながら自然ときらきら輝く風景を想像できました。星の力を借りて使う魔法、星の力がこもった宝石、設定のひとつひとつがロマンチックで楽しかったです。

階級としては底辺のヒロインが国家の中枢に乗り込み、社会を変えようとする反抗心あふれる展開もガッツがあって燃えました。

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杖職人が謎の素材の情報を調べて古代の真実を知る『竜と祭礼―魔法杖職人の見地から―』

師匠を亡くした杖職人イクスの前に、杖を修理してほしいという少女ユーイが現れる。師匠の遺言によりそれを引き受けたイクスだったが、その杖に使われていたのはとんでもない素材だった。杖を修理するために、ユーイとイクスは素材の手がかりを求め、あちこち調べ回ることになった。

世界観としては魔法があって、冒険者がいて……というありがちなものなのですが、「その世界において魔法とは何か?」「なぜ社会は冒険者を必要としているのか?」という設定がしっかり用意されているところが好ましいです。

人物描写はあっさり目でキャラクターの心の内を知るシーンも少ないのですが、キャラクター同士を簡単に理解させず、「わからないことはわからない」ままで描写するのは好きでした。実際のところ人間関係ってそんなものですよね。

わかり合えなくても傷つけ合わずにいることはできるし、わかり合えないことすなわち絶望ではない、というヒロインの結論は、「共感至上主義」に疲れている私にとってはほっとするものでした。ビターな結末ではあるけれど、同時に優しさも感じる描写でした。

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食いしん坊の妃が、略奪婚させられてそこで生きる道を探す『流転の貴妃 或いは塞外の女王』

皇帝の貴妃の中で一番の不美人だったことから、異民族の王に外交の道具として嫁ぐことになった柴紅玉。しかしその婚礼へと向かう途中で襲われ、略奪された先の氏族で「妻」になるはめになる。そこでめあわせられたのは、アマルという年下の少年だった。

世界観はかなり過酷で古くさく、主人公は早々に略奪婚(しかも周囲はそれが悪いと思ってない)されるし、奴隷もごろごろいます。女性は財産であり男の思惑によってやりとりされ、戦士を貴ぶ社会なので老いて役に立たなくなれば大事に扱ってもらえません。そんな容赦のない「昔の倫理」の中にありながら、ストーリーを現代的に感じるのはひとえに主人公のキャラクターゆえでしょう。

主人公は大変な食いしん坊で、話が進むほどに太っていきます。太っている主人公が痩せるのはよくあるけど太るんだ!?

しかも商人の娘でお金に詳しく、後宮では自らそろばんを叩いて商売をしていました。

ある意味少女小説のアンチテーゼ的なヒロインで、見た目は平凡とか言いながらかわいい挿絵にされたりはしないし、男よりも自分のやりたいことを選ぶし、男に頼るのも自分で自分の居場所を勝ち取ろうとします。

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安心して頭空っぽにして読めるバディアクション『地獄に祈れ。天に堕ちろ。』

あの世から死者があふれ出してしまった東凶(とうきょう)。ミソギは、閻魔大王からの借金を返すために亡者を冥界に送り返している。彼は、泳(くくり)という少女を助けたことから、「魂に効く」という麻薬にまつわる陰謀に巻き込まれる。麻薬を追ってきたアッシュという聖職者と共闘する羽目になるのだが……。

頭空っぽにして読めるライトノベル。しかしながら、読み進めていくとちゃんと計算されて作られていることがわかります。キャラクターの設定と展開がかみ合っていて無駄なところがありません。

読者が気持ちよく頭空っぽになれるように、爽快感のある展開も、個性的なキャラクターも作りこまれています。さながら「最高級の駄菓子」みたいな作品です。

ストーリー自体は凝った伏線もどんでん返しもなく、王道に進んでいきます。それでもページをめくるのがとても楽しかったです。なぜなら、キャラクターの個性が物語を牽引していくからです。

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毒吐き転生ヒロインは必死であがいて国を救う『不思議の国のハートの女王 世界の強制力で毒吐きまくり!?おかげで破滅ルートに入りそう』

ハートの国の女王、エリノアは自分が転生者であることを思い出した。ここはどうやら現代日本でプレイしていた乙女ゲームの世界だった。くしくも「口に出す言葉が高飛車な罵倒になってしまう呪い」にかかってしまったエリノアは、思っても見ない発言で周囲を振り回してしまう。しかし、攻略対象の帽子屋は、エリノアの味方に付いてくれて……。

転生コメディを読んでいたと思ったら、壮大な多世界のリンクについて知ってしまい、そこからギャンブル対決になった。何だこれ。

何気なく読み流していた部分が実は伏線だったり、フレーバー程度かなと思っていた「不思議の国のアリス」要素がさまざまな方向から回収されていたり、よくできたライトノベルだなあ……と感心しきり。

どんどん伏線や描写を積み上げて、終盤で盛り上げて終わる、ということが違和感なくできています。エンターテインメントだなあ。

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アラサー男と悪魔娘のくっつかない食事小説『おひとりさまでした。~アラサー男は、悪魔娘と飯を食う~』

アラサーのサラリーマン誠一郎は、偶然悪魔を召喚してしまう。彼が悪魔に願ったのは、「一緒に飯を食うこと」。かくして悪魔娘リリスは、誠一郎が「誰かと飯を食いたい」と思った瞬間に現れ、彼のおごりで食事を共にするようになる。ふたりはジャンクな者から高級なものまで、食を楽しんでいく。

本当に悪魔娘とアラサー男がご飯を食べているだけで、恋愛展開はほとんどありません。ちょっとだけ好意があるかな? という描写はありますが、それだけ。

主人公はリリスをまったく性的な目で見ていなくて、ただ食事をするときの相棒とだけ認識しています。セクハラもしなければマウントもしません。

「プラトニックおにロリ(正確にはロリではないけど)」「お互いにほんのり好意はあるけどくっつかない男女コンビ」「異性同士が恋愛抜きでキャッキャウフフしている」そういう作品が好きな人にはおすすめです。

挿入される挿絵にも性的なものはなく、外で読んでも罪悪感が少ないです。

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鎧をかぶった魔女で令嬢な乙女が王子のために大冒険『重装令嬢モアネット』

当時婚約者だった王子に「醜い」と言われたことで日がな一日鎧をかぶって生活するようになったモアネット。森の中で魔女として暮らしていた彼女の元に、王子と従者のパーシヴァルがやってくる。王子が不運に見舞われ続けるのはモアネットのせいであり、呪いを解いてほしいと言われるのだが、モアネットに心当たりはなく……。

作中のほとんどでモアネットは鎧をかぶっており、挿絵でもがっつり鎧です。その描写にはライトノベルというコンテンツにおける外見至上主義的展開へのアンチテーゼを感じます。

そんな外見に自信のないモアネットが、根はお人好しゆえに王子とパーシヴァルを助け、外見ではなく精神性や能力で自分自身の居場所を得ていくのは前向きで勇気づけられました。

モアネットの恋愛相手であるパーシヴァルも、最初は鎧に戸惑っていたのがどんどん「鎧でもかまわない」という態度になっていくのがほほえましかったです。

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恋愛初心者の最強の男と女が国家の命運のためにお見合い『最強同士がお見合いした結果』

対立するふたつの国は、新たな脅威のために同盟関係を結び、その印として「最強」の人間同士をお見合いさせることになる……。が、その「最強」たちはとんでもない恋愛初心者だった。それぞれの国の「最強」アグニスとレファは、相手を篭絡し自分の国を有利にするため、下手な恋愛バトルを繰り広げる。

恋愛ものってどちらかがどちらかを助ける、みたいな話になりがちで、力関係が一方に偏るパターンも多いんですが、この話は「能力が対等であることに意味がある」ので面白かったです。

同じくらいの強さで、同じくらいの恋愛初心者だからこそこんなにめちゃくちゃで愉快な話になります。

相手を「(恋愛的な意味で)いいな」と思う気持ちと、「最強なので相手に負けたくない気持ち」がないまぜになってトンチキな展開になっているところに笑ってしまいます。

ラスト近くで背中合わせのふたりを見られたところもよかったです。やっぱり「最強同士」ならこういうシーンがなくっちゃ始まりませんよね!

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子羊のようなお嬢様が悪役令嬢の幽霊に取り憑かれてしまって女女バディを組む『エリスの聖杯』

婚約者の浮気現場を目撃してしまったコニー。それだけならまだしも、浮気相手の意地悪に巻き込まれてしまった。そこで助けてくれたのがスカーレット。彼女は10年前に処刑された稀代の悪女だった。幽霊のスカーレットに取り憑かれてしまったコニーは、しぶしぶ彼女の復讐に付き合うことになる。

話が進むごとにどんどん登場人物が増えていくけれど、みんな個性が強くて背景も面白いので覚えられます。章ごとに登場人物を振り返ってくれるコーナーがあるのもありがたいです。

悪役令嬢が実はいいやつ……ではなく、スカーレットは本当にいけ好かない女なんですが、「そもそも貴族社会が魑魅魍魎跋扈する大変なところだよ」という話なのでスカーレットだけに嫌らしさが集中するわけではありません。みんな違ってみんなクズ!

そんな弱肉強食の社会で子羊のように弱かったコニーが、スカーレットの影響を受けてどんどんたくましくなっていくのは爽快感がありました。

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半人外少年探偵と彼に飼われる小物青年の怪奇ミステリ『地獄くらやみ花もなき』

宿を失くしネットカフェを泊まり歩いていた遠野青児は、罪を犯した人間が妖怪の姿で見えてしまうという力があった。彼は不思議な館に迷い込む。そこにいたのは不思議な少年、西條皓(さいじょう・しろし)。彼は鬼の代わりに罪人を地獄へ送り込む仕事をしていた。青児は、住み込みで皓の元で働くことになった。

謎解きより雰囲気重視という感じなんですが、この雰囲気がとてもいいんですよね。「罪人に罰を与える」という設定だと単純な勧善懲悪になりそうなところを、キャラクターの人格によって上手く人間関係に深みを与えています。

人間の描き方は露悪的で、あまり気分のいいものではないのですが、それでも過去や周囲の人間関係の描写により、弱さゆえに罪を犯してしまったことが示されます。

探偵と助手の人格自体も善人とは言えず、被害者を少なくしようという意思はあるもののしゃべっていること、考えていることはツッコミどころ満載です。でもそういう善人ではないからこそ説教くさくならずに読めるのでしょうね。

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新しく引っ越してきたお隣さんは魔王でした『となりの魔王 到来編』

田舎の田園地帯に暮らす夏織(かおり)の家の隣に、魔王が引っ越してきた。ファンタジー世界から抜け出たような彼に夏織は戸惑うが、地域の住民はあっさり受け入れているようで……。夏織は、ご近所さんとして魔王と付き合い、その一般人とは違う思考回路に振り回される。

のんびり読めるほのぼの日常ものでありながら、文章のクオリティがすごかったです。ラノベらしいポップな語り口で、読みやすく、ところどころのユーモアが利いている。すごく文章の上手い作家だと思います。

あらすじ自体は本当に何気ないもので、洗濯機の使い方を教えたり、流しそうめんをやったり、花火をやったり、とりたてて大きな伏線もなければどんでん返しもありません。そういう何気ない話をここまで面白く愉快に書けるのがすごいです。

やたらと古風で中二病なしゃべり方なのに案外お人好しで、子どもっぽいところもある魔王と、普通の女子高生だがツッコミ力が高くモノローグの面白さが群を抜いている夏織の、恋愛要素のない交流は本当によかったです。

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以上です。興味があるものがあれば読んでみてください。

【男と男のちょっと行き過ぎた友情】男男クソデカ感情ラノベ・ライト文芸おすすめ7選

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Twitterで「男男クソデカ感情ラノベ」の話題があったので、ブログの過去記事からピックアップしてみました。

私は積極的に読まないジャンルだし、巨大感情に対する評価も辛いのでおすすめする作品は少ないんですが、好きな人は好きだろうなというまとめです。

 

 

 

廃墟になった日本で何のために生きるか?『エスケヱプ・スピヰド』

日本に似て非なる国、八洲(やしま)。人々は戦争で廃墟になった町に取り残されていた。その中の一人、叶葉はある少年と出会う。彼は戦争の時代を生き抜いた、高度に発達した武器だった……。

メインはボーイ・ミーツ・ガールですが、脇で展開する男男の関係性が趣深いです。「立場の違いから戦う」「もうひとりの自分」みたいなネタが好きな人にはおすすめです。

長編ラノベでは珍しいくらいのきれいな終わり方をしているのも見どころです。

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犯罪組織に引き取られた少女は取引を覚えるデ・コスタ家の優雅な獣』

身寄りがなく内気な少女ロザベラは、名家デ・コスタ家に引き取られる。しかしそこは異能を持つ一族だった。ロザベラは一族の血を繋ぐために従兄弟と結婚して子を残すことを要求される。このままだと幽閉されてしまうと恐れたロザベラは、「一族の一員」として認められるため裏切り者を探し出すことになる。

恋愛的には主人公中心の逆ハーレムなんですが、登場するデ・コスタ家の男どもが同性にいろいろややこしい感情を抱いており、もうお前らで全部やればいいよと思ってしまいます。

裏社会犯罪小説としても面白いです。

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猫による社会が成り立つスペースコロニーで地球を目指す一匹の黒猫の話『猫の地球儀』

「天使」が滅び、知性ある猫たちが暮らしているスペースコロニー、トルク。スパイラルダイバーの焔(ほむら)は、最強の名を手にした後、名前も知らない黒猫に敗北する。黒猫は「スカイウォーカー」と呼ばれる、猫の魂が行きつく場所、「地球儀」を目指す存在だった。

友達として惹かれあう天才と天才。しかしふたりの決別は、ふたりがふたりであるからこそ必然だった。友達という言葉のしんどさと美しさを一度に味わえてお得。

ふたりの間を行く子猫、楽(かぐら)もいい味出しています。

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半人外少年探偵と彼に飼われる小物青年の怪奇ミステリ『地獄くらやみ花もなき』

宿を失くしネットカフェを泊まり歩いていた遠野青児は、罪を犯した人間が妖怪の姿で見えてしまうという力があった。彼は不思議な館に迷い込む。そこにいたのは不思議な少年、西條皓(さいじょう・しろし)。彼は鬼の代わりに罪人を地獄へ送り込む仕事をしていた。青児は、住み込みで皓の元で働くことになった。

半人外の超人に飼われる普通の男の話――何ですが、この「普通の男」としての青児がへたれでうだつの上がらない性格だということに味わいがあります。ペット感がすごい。

妖怪を生かした独特の世界観も好きです。

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婚約者にふられて空軍の傭兵部隊に志願した男がエースパイロットを目指す『天翔けるバカ flying fools』

幼なじみにふられて売り言葉に買い言葉に、空軍の傭兵部隊にに入隊したリック。そこは、変わり者の巣窟だった。曲芸飛行で培った飛行技術も、ここでは通用しない。それでもリックは勝ち気で図々しい性格を生かし、部隊でエースパイロットになろうと奮闘する。

作中の空軍には一種の騎士道精神がはびこっていて、負けた相手に花を投げるし、一対一で決闘をしさえします。

のんびりしている……と思いきや、歩兵部隊は完全に使い捨てにされていることが地の分で語られます。彼らのやっていることは時代錯誤の行為なのです。

空中での戦況が激化していくにつれてなくなっていく男と男の儚い関係性の話でした。

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倫理のない男とズブズブの関係になる大学生『死体埋め部の悔恨と青春』

うっかり人を殺してしまった大学の新入生、祝部(はふりべ)は、そこに通りがかった「死体埋め部」の織賀(おりが)に死体を埋めてもらうことになる。脅されて「死体埋め部」に入った祝部は、死体を埋めがてら織賀に推理を披露することになる。

倫理のない孤独な男と、なりゆきで彼とズブズブの関係になってしまう平凡な男。死体を埋めながら、ふたりの関係は破滅的な方向へ疾走していきます。

リンク先を見てもらったらわかるように、ミステリとしては致命的な穴があるので私の評価は低いんですが、好きな人は好きだと思います。

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安心して頭空っぽにして読めるバディアクション『地獄に祈れ。天に堕ちろ。』

あの世から死者があふれ出してしまった東凶(とうきょう)。ミソギは、閻魔大王からの借金を返すために亡者を冥界に送り返している。彼は、泳(くくり)という少女を助けたことから、「魂に効く」という麻薬にまつわる陰謀に巻き込まれる。麻薬を追ってきたアッシュという聖職者と共闘する羽目になるのだが……。

クソデカ感情と言うよりも「犬猿の仲のふたりがなんだかんだ息の合ったアクションをする」という話。でもそういうのって好きな人多いでしょう?

2巻からは男女の巨大感情もあるので男女カプ派の人にもおいしい。

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ヒロインが正義のシスターになって悪を滅する―喜多みどり『シスター・ブラックシープ 悪魔とロザリオ』

シスター・ブラックシープ 悪魔とロザリオ (角川ビーンズ文庫)

 

あらすじ・概要

赤ん坊のころから将来悪魔の花嫁となることを運命づけられたコンスタンティン(コンスタンス)は、男として育てられ教会の助祭として暮らしていた。しかしやはり悪魔は現れ、結婚指輪をつけられてしまう。その指輪を外すには、善行を積むしかないようで……。

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女主人公が活躍するライトノベル・ライト文芸10選

 

 

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ときどきに女主人公もののまとめ記事を描いているのですが、検索流入もTwitterからの流入もそれなりにあるので、需要があるのかと思いラノベ・ライト文芸バージョンも作りました。

需要があるわりに紹介する人が少ないジャンルなので、もっと他のブログでも取り上げてもらえると嬉しいんですけどね。

 

 

 

犯罪組織に引き取られた少女は取引を覚える『デ・コスタ家の優雅な獣』

身寄りがなく内気な少女ロザベラは、名家デ・コスタ家に引き取られる。しかしそこは異能を持つ一族だった。ロザベラは一族の血を繋ぐために従兄弟と結婚して子を残すことを要求される。このままだと幽閉されてしまうと恐れたロザベラは、「一族の一員」として認められるため裏切り者を探し出すことになる。

ヤクザ要素をふわっと振りかけたハーレム物の作品かと思っていたのですが、ふたを開けてみるとガチの犯罪組織小説であり、殺人・暴力・薬物がどんどん出てきました。いい意味でびっくりしました。もちろんエンタメとして楽しめる範囲で収めてあるので大丈夫です。

ひ弱でかわいい女の子ロージーががどんどんひどい目に遭うのでちょっとサディスティックな快感がありますし、最終的にロージーがたくましくなっていくので読者としてあまり罪悪感を覚えずに済みます。

ラストのロージーの選択は本当にかっこよくて必見です。

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人の上に立つ自覚がある王族ばかりの少女小説『花冠の王国の花嫌い姫』

花粉症なのに花あふれる国エスカ・トロネアに生まれてしまった姫君のフローレンス。彼女は花のほとんどないラハ・ラドマへの輿入れを狙う。ラハ・ラドマの王子の求婚を受けてかの国に向かうが、王子をはじめ周囲には「なぜ大国の姫がうちのような小国に?」と警戒されてしまい……。

主要登場人物であるフローレンスにもイスカにも、人の上に立つ人間としての自覚があるのが素晴らしいです。

周りの従者や国の民衆も含めて幸せにしたいという主人公ふたりの態度が最高です。ここの国に住みたい。

イスカはいつも臣民を思って優しい行動をするし、フローレンスは自国の利益のために策謀を張り巡らせることを否定しない。形は違えど、ふたりは「王族」としての態度を知っています。

そういうふたりがお互いをリスペクトし、惹かれあっていくのがいいんですよね。わかりやすい胸キュンシーンや、いちゃつくシーンが少ないからこそ、精神性に惹かれているところが強調されています。そこに痺れました。

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乙女ゲームの悪役に転生したら罵倒の呪いをかけられた『不思議の国のハートの女王 世界の強制力で毒吐きまくり!?おかげで破滅ルートに入りそう』

ハートの国の女王、エリノアは自分が転生者であることを思い出した。ここはどうやら現代日本でプレイしていた乙女ゲームの世界だった。くしくも「口に出す言葉が高飛車な罵倒になってしまう呪い」にかかってしまったエリノアは、思っても見ない発言で周囲を振り回してしまう。しかし、攻略対象の帽子屋は、エリノアの味方に付いてくれて……。

転生コメディを読んでいたと思ったら、壮大な多世界のリンクについて知ってしまい、そこからギャンブル対決になった。何だこれ。

何気なく読み流していた部分が実は伏線だったり、フレーバー程度かなと思っていた「不思議の国のアリス」要素がさまざまな方向から回収されていたり、よくできたライトノベルだなあ……と感心しきり。

どんどん伏線や描写を積み上げて、終盤で盛り上げて終わる、ということが違和感なくできています。エンターテインメントだなあ。

また、自分のためだけではなく周囲のことも思いやれるエリノアがかっこいいです。

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コミカルだけど硬派なフェンシング青春小説『Let it BEE!』

内気な少女、有星結恵は顧問の蜂谷巴に誘われ、廃部寸前のフェンシング部に入部。しかし彼女には、先端恐怖症という大きなハンデがあった。団体戦に出場するため、巴とフェンシング部のメンバーたちは結恵をフェンサー(フェンシング選手)に育て上げようとする。

初心者、結恵の成長を軸に、フェンシング部のメンバーの優しさ、フェンシングという競技の面白さ、そして心を震わせてくれるライバルとの出会いが、詰め込まれていて面白かったです。

ライトノベルらしいコミカルさがありながら、中身は硬派なキャラクターも良かったです。

楽しい掛け合いをしつつも、基本は「フェンシングで勝ちたい」という気持ちが一番大事にされているところが、スポ根らしくて楽しめました。

淡い恋愛要素もあるけれど、あくまでそれはスポ根ストーリーを邪魔しない程度のもので、どこまでも硬派だなと思いました。

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鎧をかぶった魔女で令嬢な乙女が王子のために大冒険『重装令嬢モアネット』

当時婚約者だった王子に「醜い」と言われたことで日がな一日鎧をかぶって生活するようになったモアネット。森の中で魔女として暮らしていた彼女の元に、王子と従者のパーシヴァルがやってくる。王子が不運に見舞われ続けるのはモアネットのせいであり、呪いを解いてほしいと言われるのだが、モアネットに心当たりはなく……。

作中のほとんどでモアネットは鎧をかぶっており、挿絵でもがっつり鎧です。その描写にはライトノベルというコンテンツにおける外見至上主義的展開へのアンチテーゼを感じます。

そんな外見に自信のないモアネットが、根はお人好しゆえに王子とパーシヴァルを助け、外見ではなく精神性や能力で自分自身の居場所を得ていくのは前向きで勇気づけられました。

女性が男性を助け、その過程でロマンスが描かれる。モアネットが主体的になっていく過程が面白かったです。

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子羊のようなお嬢様が悪役令嬢の幽霊に取り憑かれてしまって女女バディを組む『エリスの聖杯』

婚約者の浮気現場を目撃してしまったコニー。それだけならまだしも、浮気相手の意地悪に巻き込まれてしまった。そこで助けてくれたのがスカーレット。彼女は10年前に処刑された稀代の悪女だった。幽霊のスカーレットに取り憑かれてしまったコニーは、しぶしぶ彼女の復讐に付き合うことになる。

悪役令嬢の処刑、婚約破棄……と「なろう系でよくある話」から始まっていくのですが、しょっぱなから「スカーレットはどういう悪役令嬢なのか」「なぜ婚約破棄なのか」という設定がしっかり作り込まれていて、「こりゃ普通のライトノベルとは違うな」と思わせてくれます。

話が進むごとにどんどん登場人物が増えていくけれど、みんな個性が強くて背景も面白いので覚えられます。章ごとに登場人物を振り返ってくれるコーナーがあるのもありがたいです。

悪役令嬢が実はいいやつ……ではなく、スカーレットは本当にいけ好かない女なんですが、「そもそも貴族社会が魑魅魍魎跋扈する大変なところだよ」という話なのでスカーレットだけに嫌らしさが集中するわけではありません。みんな違ってみんなクズ!

そんな弱肉強食の社会で子羊のように弱かったコニーが、スカーレットの影響を受けてどんどんたくましくなっていくのは爽快感がありました。

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食いしん坊の妃が、略奪婚させられてそこで生きる道を探す『流転の貴妃 或いは塞外の女王』

皇帝の貴妃の中で一番の不美人だったことから、異民族の王に外交の道具として嫁ぐことになった柴紅玉。しかしその婚礼へと向かう途中で襲われ、略奪された先の氏族で「妻」になるはめになる。そこでめあわせられたのは、アマルという年下の少年だった。

世界観はかなり過酷で古くさく、主人公は早々に略奪婚(しかも周囲はそれが悪いと思ってない)されるし、奴隷もごろごろいます。女性は財産であり男の思惑によってやりとりされ、戦士を貴ぶ社会なので老いて役に立たなくなれば大事に扱ってもらえません。

主人公は大変な食いしん坊で、話が進むほどに太っていきます。太っている主人公が痩せるのはよくあるけど太るんだ!?しかも商人の娘でお金に詳しく、後宮では自らそろばんを叩いて商売をしていました。この説明をする導入だけでも面白いです。

ある意味少女小説のアンチテーゼ的なヒロインで、見た目は平凡とか言いながらかわいい挿絵にされたりはしないし、男よりも自分のやりたいことを選ぶし、男に頼るのも自分で自分の居場所を勝ち取ろうとします。

「女性受けしやすいヒロイン」を安易に目指さず、きちんと背景や個性を書いた上で魅力的に書いているのがよかったです。

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母の形見の踊る靴を取り上げられて、傍にいるため靴職人になる『シンデレラ伯爵家の靴箱館』

かつて「シンデレラ」とあだ名される女性が王妃となり、靴の生産が盛んになった国。アデルはその子孫であるディセント家に勝手に踊る母の靴を鑑定してもらおうと持ち込む。しかし形見である母の靴を取り上げられてしまう。アデルは母の靴と一緒にいるために、ディセント家のアランが運営する靴工房で働くことになる。

アランの靴工房で働くアデルの職人としての成長が、きっちり描かれているところが面白かったです。お仕事ものとしてすごく真っ当なんですよね。

失敗を乗り越え、改善を目指し、報連相の重要さを解く。理不尽なパワハラ描写がなくてもお仕事ものは書ける。

アランも突然デレたりせずにアデルを職人としてリスペクトしているところがよかったです。

シンデレラの靴を巡るアデルとアランの戦いも見ものです。

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十三歳の皇后、宮廷の謎を解く『十三歳の誕生日、皇后になりました』

皇帝に後宮入りを願い出ようとしたところ、皇位簒奪が起こり、流れで新皇帝暁月の皇后になってしまった莉杏(りあん)。十三歳の彼女は皇后の務めを果たそうと、宮廷の中の謎に挑む。

十三歳のヒロインが王宮の謎に挑むライトミステリ。幼くも皇帝を支えようと奮闘する莉杏がいとおしく、かっこよくもありました。

トリック自体も、動機と行動にそれぞれ「キャラらしさ」があってそこが面白かったです。

ちょっとした思惑のずれが事件を起こしたり、いやがらせかと思いきや実は……だったり。意外性がありつつ、きちんとストーリーに応じた「らしさ」だったので楽しめました。

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強くて気高い女が最後まで強くて気高いまま恋をする『政略結婚~金髪の姫将軍は元敵国の好敵手に嫁ぐ~』

王国アルデーリアのレオーネは、姫でありながら将軍として活躍していた女性。しかし敵国ゼルジオスとの停戦が決定し、その証として敵将ベルトルドに嫁ぐことになる。ベルトルドはレオーネの戦場での好敵手だった。腹をくくって敵国に嫁いだレオーネは、荒廃したゼルジオスの王都を見て……。

主人公のレオーネは戦場ではめちゃくちゃ強く、ベルトルドに嫁いでからもその強さに裏打ちされた優しさで使用人や王太子と接していきます。

相手役であるベルトルドも、レオーネの強さを尊重しており、男だから、夫だからという理由でマウントを取ったり差別的な発言をしたりしません。

とはいえこの作品はチート路線ではなく、レオーネがすぐ解決できない問題もたくさんあります。侵略行為のやりすぎで荒れ果てた国、ベルトルドが支えている次期国王である少年、敵国からやってきた王女に対する周囲の目線。

でもそういう諸問題を解決したいと思うところにレオーネの優しさがありました。

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以上です。興味があったら読んでみてください。

コミュ障冒険者とはっきりものを言うガイドの会話がかわいい―村沢侑『フォルテックの獣使い お仕事中、迷子の俺サマ拾いました!』

フォルテックの獣使い お仕事中、迷子の俺サマ拾いました! (ビーズログ文庫)

 

あらすじ・概要

学校に通いながらガイドの仕事をしているアイナ。ある日、アイナは行き倒れている青年を拾う。リエトという彼は極度の方向音痴で、強い冒険者なのにどこか世間とずれた性格をしていた。彼のことが気になったアイナは、つい何かと彼を助けてしまうようになる。

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お菓子作りが得意な少女と腹黒ショタが心を通わせていく過程がかわいい―おきょう『妖精専属菓子職人』

妖精専属菓子職人【電子特典付き】 (ビーズログ文庫)

 

あらすじ・概要

曾祖父の死後、ソフィアは妖精を見る力を得た。しかもソフィアの作るお菓子には、妖精を魅了する力があった。その力に目を付けた伯爵家の令息、ルーカスは、屋敷にソフィアを呼び出し、彼女にお菓子を作らせようとする。その手段としてソフィアと結婚すると言い出して……?

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魔法の描写が魅力的なライトノベル・ライト文芸おすすめ7選

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古今東西「魔法」をテーマにしたファンタジーは多く、多種多様な設定や世界観が生み出されています。今回はその中でもおすすめ作品をまとめてみました。

 

 

杖職人が謎の素材の情報を調べて古代の真実を知る『竜と祭礼』

師匠を亡くした杖職人イクスの前に、杖を修理してほしいという少女ユーイが現れる。師匠の遺言によりそれを引き受けたイクスだったが、その杖に使われていたのはとんでもない素材だった。杖を修理するために、ユーイとイクスは素材の手がかりを求め、あちこち調べ回ることになった。

世界観としては魔法があって、冒険者がいて……というありがちなものなのですが、「その世界において魔法とは何か?」「なぜ社会は冒険者を必要としているのか?」という設定がしっかり用意されているところが好ましいです。

主人公が魔法使いではなく魔法杖職人なのも味わいがあって好きです。職人の立場から見た魔法への価値観や、杖作りについての迷いや葛藤が面白かったです。

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母の形見の踊る靴を取り上げられて、傍にいるため靴職人になる『シンデレラ伯爵家の靴箱館』

かつて「シンデレラ」とあだ名される女性が王妃となり、靴の生産が盛んになった国。アデルはその子孫であるディセント家に勝手に踊る母の靴を鑑定してもらおうと持ち込む。しかし形見である母の靴を取り上げられてしまう。アデルは母の靴と一緒にいるために、ディセント家のアランが運営する靴工房で働くことになる。

魔法使いは滅びゆく一族であり、わずかな人々がその能力を継いでいる世界。そんな世界で魔法使いにばらまかれた魔法の靴を回収している一族……という独特の世界観が楽しい作品です。

それでいて、ファンタジーとしてだけではなくお仕事ものとしてすごく真っ当なんですよね。

失敗を乗り越え、改善を目指し、報連相の重要さを解く。仕事を頑張るアデルのことを自然と応援したくなりました。

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入れ替わって魔女になってしまった冴えない少女の成長譚『ワルプルギスの夜、黒猫とダンスを』

新しい靴を手に入れたら、わがままな魔女ベファーナと体が入れ替わってしまった主人公、仮の名はルナ。元の姿に戻るためには、ワルプルギスの夜、黒猫とダンスを踊らなくてはいけないらしい。ダンスが魔法の力を持つ世界で、ルナはベファーナの使い魔、黒猫のノーチェとともに奔走する。

気弱で冴えない主人公が、不思議な魔法と冒険を通して、少し成長する。ジュブナイル色の強い作品でした。

踊ること、魔法を使うことがルナ自身の心理に密接につながっていて、いい意味で世界が狭いというか、どんどん内面世界を掘り下げていく面白さがあります。

踊ることによって発動される魔法のシーンがその象徴で、ダンスの描写とともにルナの心情が示されています。

踊る魔女と音楽を奏でる男たちが暮らす世界で、ルナは誰かを助け、交流をしているうちに新しい自分自身に出会います。内向的だからこそ立ち現れる心の豊かさを感じました。

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男子高校生と美少女オートマタの間で揺らぐ自我―こまつれい『101メートル離れた恋』

男子高校生のユヅキがある日目覚めると、セブンスというオートマタになっていた。そこは現代社会に似ているが、魔法に満ち溢れた世界。オートマタとしてレンタルされ、男性と性行為を行うセブンスは精神をすり減らしていく。そんな中、セブンスはイチコという少女にレンタルされ……。

魔法が科学技術と同等に普及する世界。人間そっくりのオートマタを作る技術もあり、ファンタジーでありながらSFのような雰囲気です。

主人公が「男子高校生のユヅキ」と「女性型オートマタのセブンス」の間で自我が揺らいでいるところがTSF的によかったです。TS娘と美少女の恋愛物語としても優秀でした。

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ラテンアメリカ風の世界で孤独な少女と奴隷の男が出会う―マサト真希『アヤンナの美しい鳥』

高地に暮らすアヤンナは、ある日奴隷商人に売られそうになっていた異人の男リリエンを助ける。足萎えである男をしぶしぶながらも家に置いたアヤンナだったが、アヤンナの顔にある醜い傷を見ても動じず、尽くしてくれるリリエンに惹かれるようになる。しかしふたりの暮らす王国には、不穏な噂がはびこっていて……。

ラテンアメリカ風の世界で、魔法が使える少女が奴隷の青年と心を通わせていく物語です。文化をベースにした独特の魔法観が魅力的です。

メインの筋としてはアヤンナとリリエンの悲しいラブストーリーなのですが、アヤンナに性知識が全くと言っていいほどないため、幼児の初恋のような雰囲気です。しかしその、性にはっきり目覚める前の原始的な愛だからこそリリエンは居心地がよかったのでしょう。来歴から考えても。

幸せな終わりとはいいがたい作品ですが、ふたりの出会いは、周りに少しだけ救いをもたらしています。悲しいけれど美しい話でした。

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人の世界で生きる妖精たちの、二転三転する事件『霧の日にはラノンが視える』

第七子の呪いを解くため家出してロンドンに向かったラムジー。そこでジャックという青年に拾われる。だがジャックの仲間が殺人を犯し、ラムジーは奇妙な事件に巻き込まれていく。

イギリスの人間社会に魔法が使える妖精たちが暮らしているという世界観。イギリスの雰囲気と、妖精伝説をベースにした設定が面白いです。

妖精たちの関係が割とドロドロしていたり、世知辛い設定があったり、ロマンチックなだけではない生々しさもギャップがあっていいです。

キャラクターも個性的なので、すぐ覚えられます。

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星が人生を決める階級社会で国の中枢に乗り込み社会を変える『天球の星使い きみの祈りを守る歌』

星の力で魔法を使う世界。社会は星の加護を持つ「星の子」と星を持たない「星なし」の階級に分かれていた。星なしの子アステラは、育ての親のロキと暮らしていたが、仕事をしようとしても失敗ばかり。そんな折、星の子たちが学ぶ学院の入学試験に潜入すれば、本当の父親のことを教えてやるとロキに言われる。

主人公はお姫様ではなく身寄りのない少女、それもおかしな不運に巻き込まれている、という出だしは魅力的でした。

また、星や星座をモチーフにした魔法世界の設定が美しく、読みながら自然ときらきら輝く風景を想像できました。星の力を借りて使う魔法、星の力がこもった宝石、設定のひとつひとつがロマンチックで楽しかったです。

階級としては底辺のヒロインが国家の中枢に乗り込み、社会を変えようとする反抗心あふれる展開もガッツがあって燃えました。

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以上です。気になるものがあれば読んでみてください。

星が人生を決める階級社会で国の中枢に乗り込み社会を変える―天川栄人『天球の星使い きみの祈りを守る歌』

天球の星使い きみの祈りを守る歌 (角川ビーンズ文庫)

 

あらすじ・概要

星の力で魔法を使う世界。社会は星の加護を持つ「星の子」と星を持たない「星なし」の階級に分かれていた。星なしの子アステラは、育ての親のロキと暮らしていたが、仕事をしようとしても失敗ばかり。そんな折、星の子たちが学ぶ学院の入学試験に潜入すれば、本当の父親のことを教えてやるとロキに言われる。

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本から事象を呼び出すことのできる国で、本好き少女が未完の物語の結末を探す―天川栄人『ノベルダムと本の虫』

ノベルダムと本の虫

 

あらすじ・概要

本好きの少女、アミルは、物語の王国(ノベルダム)ことイストリア王国に招かれる。そこで図書館の「本の虫」として働くことになったアミルは、遅刻間の上司ディレイや他の仲間たちとともに仕事に励む。図書館にはアミルの愛する本『五國物語』の完結編があるという噂を聞き、アミルは興味を持つが……。

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犯罪一家の中で成長していく少女と兄との亀裂―喜多みどり『デ・コスタ家の優雅な獣4』

デ・コスタ家の優雅な獣4 (角川ビーンズ文庫)

 

あらすじ・概要

エミリオについて仕事を学ぶことになったロザベラは、あわよくば下剋上を狙おうとするデ・コスタ幹部たちの存在を知る。幹部たちを調べてみたロザベラは、その過程でノアの秘密を知ってしまう。ノアは何のためにこの情報を黙っていたのか、不安になったロザベラは……。

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