アクセス解析を見ていると主人公の性別に関する記事は人気があります。見る作品を主人公の性別で選んでいる人は多いんですね。そういうわけで、男性主人公のアニメのまとめを作りました。
コメディ
01.『万聖街』
悪魔のニールは人間界で暮らしたいと思い、万聖街の1031号室にやってくる。そこは人外たちが暮らすシェアハウスだった。天使の大家、ゲーム実況者の吸血鬼、無口だが不思議な力を持っているミイラ男、不運な狼男など、個性豊かな人外たちと生活することになった。
シェアハウスネタが好きなオタクが脚本を書いているのか?と思うくらい盛りだくさんでした。
人外キャラクターが集まるシェアハウスというところは誰でも思いつくアイデアではありますが、あるある設定もあるある展開もちゃんと面白いものに仕上げているのがすごいです。
ともかくキャラクターの性格や関係性が魅力的で、他人に使い古された設定でも面白いです。
ギャップ萌え、騒音や住人の増減などのシェアハウスあるある問題、各キャラクターの家族関係、人外としての描写の面白さなど、細かいところが凝っています。
それでいて、アニメとしては書き込みがあっさり目なのも興味深いですね。アクションをする回は「この回に製作費をつぎ込みました」というメタなタイトルがついています。笑う。そのくらい他の回は描写があっさりしているということでもあります。
02.『吸血鬼すぐ死ぬ』
退治人(ハンター)のロナウドは、退治しようとしたことをきっかけに吸血鬼のドラルクに事務所に転がり込まれてしまう。自伝、ロナルドウォー戦記のネタとして彼とバディを組むことになったロナルド。事務所にはあれこれ吸血鬼に関する事件が持ち込まれ、その度にばか騒ぎが起こる。
会話劇の様相が強いギャグアニメで、画面を見ていなくてもかなり内容がわかります。ラジオみたいにながら視聴するのにちょうどいいです。
1話に2~3編の短編アニメがぎゅっと詰まっている構成なので、展開が早く飽きずに見ていられます。
すごく夢中になるというわけではないですが、気楽に見れてげらげら笑えるところがよかったです。
ただ、下ネタが激しいので、そこは好き嫌いが分かれるかもしれません。よく「誰も傷つけない作品」として紹介されるけれど、被害者が男なだけでセクハラシーンは結構あります。みんなに平等に恥をかかせるバランス感覚があるから気にならないだけで。
03.『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
配管工の兄弟マリオとルイージは、ブロックやアイテムが存在する不思議な世界へ迷い込む。マリオはルイージを捕らえた悪の首領クッパを倒すために、ピーチ姫に協力することとなる。クッパはピーチ姫に恋愛感情を抱いており……。
序盤で異世界トリップが始まって驚きましたが、配管工が世界を救う設定であるのなら異世界トリップぐらいはするかもしれない、と気を取り直して見ました。
好きだったのがピーチ姫の描き方です。フィジカルの強い女性ですが、人に気を遣うような性根の優しさもあります。かわいいとかっこいいが両立した女性でよかったです。こんな女性であれば、クッパも恋に落ちるよなあ……という納得感があります。
クッパのキャラクターも面白かったです。お姫さまをさらう怪物でありながら、少女漫画に憧れがを抱く女子高生のようでもありました。この作品がマリオ主人公でなかったら、幸せになってほしかったです。
音楽
04.『SING シング』
動物たちが暮らす街。コアラのバスター・ムーンは、傾いた劇場を復活させるために秘策を思いつく。それは歌のコンテストをすること。かくして劇場に素人たちが集まり、ショーに向けて邁進していくが、練習はトラブル続きで……。
音楽のシーンは日本語で吹き替えてあるものと英語のままのものがあるんですが、吹き替えてあるものは訳詞がうまくて面白かったです。日本語の歌詞として自然で聞きやすかったです。
そしてその歌詞と、キャラクターの性格や背景がうまく組み合わされているところがこだわりを感じました。
音楽が好きで、歌詞や雰囲気をきっちり理解していないとできない表現だったと思います。
そして歌のシーンがみんな上手いので聞いているだけで楽しいです。この部分は子どもも大人も楽しめるのではないでしょうか。
05.『神クズ☆アイドル』
全てが面倒くさい男、仁淀は、楽して稼げると思ってアイドルになったもののその多忙さにやる気をなくしていた。そんな彼に、人気絶頂で命を落とした女子アイドル、アサヒの幽霊が取り憑く。アサヒの憑依によって、仁淀は元気なアイドルとして振る舞えるようになるが……。
アイドルものってどうしても精神論的、スポ根的に偏りがちなんですが、全てが面倒くさい仁淀を主人公に据えることでその辺が柔らかくなっています。
前向きで明るいアサヒと、全てが面倒くさいクズである仁淀のかけあいが楽しいです。クズなのに偶然周囲によい影響をもたらしていく仁淀に笑いました。
ギャグ回としては、じゃんけん回が面白くてげらげら笑ってしまいました。ZINGSファンメインの回なんですが、やりとりがばかばかしすぎて好きです。じゃんけんを極めるために修行しているのが最高すぎましたね。
06.『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』
路上で歌を歌っていたヒポポは、ある日ゾロリと出会う。ゾロリはヒポポの歌声を金儲けに利用したいと思った。しかしヒポポは大声を出すのが苦手。ゾロリは妖怪たちと協力して、ヒポポに大きな声で歌うレッスンをする。
私が読んでいる当時のゾロリはブラックジョークやお下品ネタが多く、「子どもがやりたい悪いことを代わりにやってくれる作品」という印象が強かったです。
アニメ映画はかなり善良な作品で、黒いネタも封印されていました。
ストーリーは、気弱な歌手が自分に自信を持っていく話です。
自信を持つ手伝いをしてくれるのが、妖怪という、「ふつう」とは少し外れた存在なのもよいです。
歌手を始めとする女性アーティストが外見で評価せれてしまうという悩みに触れているのも好きでした。
短めの映画ですが、作画もよく、楽しい気持ちになれる作品でした。
現代
07.『オッドタクシー』
ソシャゲの廃課金者、婚活で偽プロフィールを作ってしまう男、悪い男に共依存してしまう女。売れない漫才コンビ。
そのエピソードひとつひとつが大変生々しく、見ていていたたまれなくなるほどです。おかげで連続再生するのが辛く一話ずつ見ていました。
でも、話が進むほどに、この作品はとても優しい人間観でできていることに気づきます。
『オッドタクシー』の登場人物は弱く、愚かで、罪深いです。しかしそういう存在が「いてはならない」という方向にはならないんですよね。
錯綜するドラマ、劇的なクライマックスが素晴らしかったです。
08.『ピンポン』
卓球部に所属するペコとスマイルは小さい頃からの友達。しかしスマイルが卓球の才能を開花させたことにより、ふたりの関係は変わり始める。スマイルが自分より強いことを知ったペコは卓球を離れ自堕落な生活を送る。スマイルはずっとペコのことを待っていた……。
アニメのオリジナル脚本が多いので漫画とは別物ですが、これはこれで面白かったです。
1クールアニメとしては原作が短いのを、キャラクターを深掘りすることで補完しています。こういうキャラクターの深掘りは賛否両論あるでしょうが、選手たちの日常が見られて面白かったです。
感情を表に出すのが苦手で誤解されがちなスマイルと、彼のことを何のかんの気に掛けるペコ。ペコが卓球から背を向けたことでふたりの関係は中断しますが、また再会するのが面白いです。
09.『サイダーのように言葉が沸き上がる』
俳句が好きな少年、チェリーは、内気でなかなか自分の作品を声に出して発表できないでいた。そんな折、配信者のスマイルという少女と出会い、少しずつ親しくなっていく。しかし、チェリーは近いうちにこの町を引っ越していく予定だった。
ボーイミーツガール、恋愛と、内容としては王道ですが、細部の造り込みが光る作品でした。
物語の重要なテーマとして、俳句が出てきます。主人公は、俳句を愛し、日常的に句を読む文学少年です。しかし、自分に自信がなく、人前で句を発表することに強い抵抗を覚えます。
この映画は、彼が腹をくくって句を発表できるようになるまでを追います。
サブキャラクターたちも、老人介護施設の人だったり、外国から来た友人だったり、そういう「現実にはいるけれど、フィクションにはあまり出てこない」人たちなのが好きです。
きらきらとした非現実味が強い絵柄の中で、地に足のついた設定を持っているのが「自分にも起こりうること」として共感しやすかったです。
10.『AURA~魔竜院光牙最後の戦い~』
高校デビューを果たした佐藤一郎は、忘れ物を取りに帰った夜の学校で、青いローブを着た少女と出会う。「リサーチャー」と名乗った彼女に一郎は協力を申し出る。しかし次の日、彼女は佐藤良子というクラスメイトだと発覚する。彼女は妄想の中「リサーチャー」を演じるイタい女子だった。
まず小説で特徴的だった一郎のモノローグがざっくり削られていました。このモノローグのおかげで、読者はすぐに一郎がただ者ではないことがわかるのですが、それがなくなると「普通の少年」であることが強調されます。小説とは別の解釈ができて面白いです。
確かに黙っていれば一郎は普通の少年で、ファンタジーへの傾倒さえなければ、特別ではないんですよね。これはちょっと小説の見方も変わりそうです。
静止画が多かったり、コストがかかりそうな描写は簡略化されていたり、予算が足りなかったのかなという部分はあります。しかし映像だからこそできるちょっとしたしぐさだったり、声優たちの演技だったりは見ごたえがありました。
原作が特徴的だからこそ、あえてせりふやモノローグに頼らないつくりには好印象です。
ファンタジー
11.『天気の子』
異常気象で毎日雨が降り続ける東京。離島から家出をしてきた少年・穂高はあやしげな雑誌の編集部に拾われ、アルバイトをすることになる。そんな中出会った少女、陽菜は空に祈ると100%晴れにできる能力を持っていた。穂高は陽菜とその弟と組み、「晴れ女」として晴れを呼ぶ仕事をすることになる。
雨続きで混乱に陥る東京はあまりにも美しく、陽菜が呼ぶ晴れ間は神が降臨したかのように神々しい。そして少年少女の愚かで刹那的で終わりの見えている恋を、徹底的に美化して描きます。
そのコンセプトを実現させるために、倫理をものすごい勢いで犠牲にしています。災害によって犠牲となった人はどうでもいいのか、子どもが庇護されないことを肯定していいのか、目的のために暴力や脅しを使っていいのか。
この作品が受け入れられない人がいるというのも、よくわかるんですよね。当然のことなので。でも面白かったです。
12.『魔入りました!入間くん』
ろくでなしの両親によって悪魔に売られた少年、入間。彼は悪魔サリバンによって孫にされ、悪魔学校バビルスに通うことになる。しかし、人間は悪魔の食料扱い。入間は自分が人間であることを隠しながら学校に通うが、クラスメイトや友人との交流を経て、少しずつ心境が変わっていく。
文脈的にはハーレムチート的な展開で、主人公入間はとにかく周囲にちやほやされるし、成功体験ばかりであまり失敗がありません。
でも嫌な感じがしないのは、キャラクターのほとんどがいいやつなのと、作中の倫理が高いからです。
入間の持つ優しさや正義感が自然で押しつけがましくないし、登場人物にマウントを取るのではなく後ろから支えるようなアドバイスが多いんですよね。だから都合のいい話をやってもあまりいらいらしません。
女の子が好きな身としては、女子キャラもかわいくてよかったです。だいたいみんな入間に惚れてるけど、それはそれとして個々人の夢や強さがあり、ちゃんとキャラが立っているのがよ好きです。
13.『KUBO 二本の弦の秘密』
三味線で折り紙をあやつる少年、クボ。彼は母親から「日が落ちたら外に出てはいけない」と言い聞かされていた。その戒めを破ってしまい、クボはおばを名乗る追手から逃げ回る。状況を打破するには、三つの武器を手に入れなければならない……。
ストップモーション(こま撮りアニメ)とは思えないなめらかな動きっぷりがすごかったです。
CGで作ったほうが確実に楽なんだろうけど、衣服の質感、風景の生々しさは実物でしか味わえないものです。
ストーリーの部分で面白かったのは、さまざまな「伝説」「昔話」にリスペクトをしているところですね。
たとえば月から来た闇の姉妹はどうやら人間的感情がないようなんですが、これは『竹取物語』が元ネタだろうなと思います。
そしてラストには、死んだ祖母のことを思い出してしんみりしてしまいました。死者は戻ってこないけれど、こういう風に考えられたら素敵ですね。
14.『夜明け告げるルーのうた』
日無町に住む中学生の少年、カイは、同級生にバンドに誘われる。しぶしぶ練習場所である人魚島に向かったカイは、不思議な少女に出会う。それは、人魚の子ルーだった。音楽に引きつけられ、歌い踊るルーと交流を深めていく。しかし、ルーの存在が町の大人たちにばれ、ルーは観光資源として扱われてしまう……。
王道の異種交流譚です。違う種族のふたりが惹かれあい、壁を乗り越えてお互いに好きだと言うお話。
正直ストーリーに粗がないわけではないんですけれど、それがどうでもよくなるくらいに映像に説得力があります。絵が強いというのはこういうことか、と納得します。
まずターコイズブルーの水の表現がとても美しいです。人魚は水を操る力を持ち、水を箱型にして人を運んだり自身を泳がせたりします。それがとても幻想的で面白い。
そして何よりも音楽シーンの迫力ある描写です! カイが全力を振り絞って歌うシーンは美しく破滅的で、どこかせつなくてかっこよかったです。「音楽で世界が変わる」ということを映像にしたらこんな感じになるのでは、と思うシーンでした。
15.『夜は短し歩けよ乙女』
うだつが上がらない大学院生「先輩」は、「黒髪の乙女」に片思いをしている。なるべく彼女の目に留まるべく奔走するが、思いは空回りをし続ける。古本市や秋の学園祭など、一夜のはずなのにくるくると場面が変わり続け、先輩と乙女は夜を駆け回る。
ファンタジーというより幻想文学という感じでした。京都を舞台に、不思議なことが起こり続け、しかも登場人物たちがそれをいぶかしむ様子がありません。心象世界と現実世界の境界線がはっきりせず、寓話のようなコメディのような雰囲気を醸し出しています。
おそらくこの先輩や黒髪の乙女と一緒に、幻想に身を任せるのが一番いい見方なのでしょう。ストーリーの整合性やリアリティよりも、あざやかなアニメーションの本流を楽しんだほうがよさそうです。
映像については、アニメなのだけれどいわゆる漫画っぽくなくてそこがよかったです。唐突に単純化される登場人物、くるくる変わる色彩は見ていて飽きませんでした。美しいというより面白い映像です。
16.『さらざんまい』
一稀(かずき)、燕太、悠(とおい)の三人は、ケッピという謎のカッパにカッパにされてしまう。欲望から生まれたカパゾンビの尻子玉を抜いて倒すと、銀の皿がもらえ、願いを叶えられるという。三人はそれぞれの願いを胸に「さらざんまい」を行う。
この作品の好きなところは、「欲望を気持ち悪いもの」として描いた部分です。
一稀が好きなあまりにリコーダー舐めたり服のにおいをかいだりする燕太(性犯罪)、変わってしまったマブのことを厭いつつ彼への情欲を捨てきれないレオ、そして弟の春河に許されたいあまり女装をする一稀。
うわあ、気持ち悪い……。
そういう気持ち悪い感情の一方で、アニメを見進めていくと、彼らが本当に相手を大切に思っていることがわかるんですよね。
どうしようもなく恥をかいて、プライドを失ったあとも、登場人物たちはだれかを愛している。
おそらくこの作品は欲望を無条件に肯定しているわけではないと思います。そうでなければカパゾンビをああいう恥ずかしい存在にしなかったでしょう。それでも「欲望を手放すな」と言うのは、それが愛と表裏一体だからなんじゃないかなと思います。
アクション・バトル
父親のラーメン屋を手伝っているパンダのポーはカンフーが大好き。ある日、カンフーのマスターが伝説の戦士「龍の戦士」を選ぶというので見に行くと、たまたまポーが龍の戦士に選ばれてしまう。ポーは道場に入り修行をすることになるが、お調子者で食いしん坊なポーはうまくいかず……。
ストーリー自体は単純ですが、そこに込められたメッセージもよかったです。「龍の戦士」という特別な地位をめぐる話ですが、最終的には「特別なことをする必要なんかないんだ」という結論にたどり着きます。
太っていてお調子者のポーが、「特別な行いをする」のではなく「自分は特別だと信じる」ことで自分を肯定し、敵との決戦に挑むところはぐっときました。
敵役のタイ・ランが龍の戦士の地位に固執し、自分の能力を人々に知らしめようと渇望していることと、きれいな対比になっていて拍手しそうになりました。
また、若者であるポーの成長だけではなく、大人であるシーフーの成長も同時に描かれているのがよかったです。
最愛の教え子に「特別であってほしい」という期待をかけ続けたことで教え子に道を間違えさせてしまったシーフーが、ポーを鍛えることで自分の過去と向き合わざるをえなくなります。最終決戦のときの心情吐露には心動かされました。
17.『バッドガイズ』
強盗や盗難を繰り返してきたウルフたち「バッドガイズ」。しかしテレビニュースで自分たちをばかにされたことに腹を立て、金のイルカを盗み出す計画を企てる。しかし計画は失敗し、ウルフたちはマーマレード教授の元で善人になる訓練を行う。善人の振りをしていようと思うウルフだったが……。
人外キャラの描写やアニメーション技術がよかったです。かわいくデフォルメされていつつ、動物独特の気味悪さ、ヌメっとした質感があってリアリティがあります。
そんな動物キャラクターが洒脱なせりふを話しながら小粋なシーンを繰り返していくのでそれだけで楽しくなってしまいます。
アクションも派手でハチャメチャで、げらげら笑いながら見るのにちょうどいい作品でした。
ストーリー的にはウルフとスネークのケンカ友達関係が印象深かったです。善行に興味
を持ち、誰かに怖がられない生活をしてみたいと思い始めるウルフと、そんなウルフを見て裏切られたと感じるスネーク。
新しい人生への興味と、友人への愛着の間で揺れるウルフ。善人になっていくウルフを見て疎外感を抱くスネーク。彼らを和解させるシーンはちょっと強引で笑ってしまいましたが、エンタメ作品なんだからこのくらいトンチキにやってもいいかもしれません。
18『呪術廻戦』
19.『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』
エリート教育をする学校に体験入学することになったカスカベ防衛隊の5人。誘った風間くんはやる気満々だが、他のメンバーは消極的で……。そんな中、風間くんが時計塔に住むという吸ケツ鬼に襲われ、ガキンチョになってしまう。残された四人と案内役の生徒会長のチシオは、吸ケツ鬼の謎を追うことにする。
ミステリとしてはびっくりするような展開をするわけではないんですけれど、伏線の張り方とその回収方法が丁寧で、堅実に楽しめる内容でした。
コメディなので笑えるシーンがいろいろ出て来ますが、あとからそのばかばかしいシーンが伏線だったことがわかるので気持ちいいです。話の進行に無駄がありません。
それでいて、アニメ映画だからこそできるアクションシーンや愉快なシーンも多く、「ミステリをアニメでやる意味」を感じられる作品でした。
私はせっかちなたちなので情報量の多い映像作品って「小説に書いた方が速い……」と思ってしまうんですが、『天カス学園』は映像だからこそできる情報の詰め込み方をしていました。
20.『fate/stay night』
魔術師の家に育った遠坂凜は、学友の衛宮士朗を助ける。衛宮は、そこから魔術師同士
のサバイバル、聖杯戦線に巻き込まれることとなる。
いや~凛がひたすらにかっこよかったですね。こんな女の子と付き合える衛宮士郎がうらやましすぎる……。
彼女のいいところは精神的に自立していて、その上で他の人に手を差し伸べられるところです。まだ高校生なのに、大人な態度なんですよね。
情が深くて姉御肌、それでいて士郎に優しい言葉をかけられるとどきまぎしてしまう照れ屋なところもある。本当にかっこよくてかわいかったです。
この話は基本的に「女が男を幸せにする」感じで、士郎の今後は凛にかかっています。
でもふたりなら、きっとなんとかやっていけそう、そう思える終わり方でした。
ヒストリカル
21.『クレヨンしんちゃん アッパレ!戦国大合戦』
美しい女性の不思議な夢を見たあとに、戦国時代へタイムスリップしたしんのすけ。たどり着いた春日の城には、夢で見たお姫様と不器用な武士がいた。しんのすけを追って野原一家もタイムスリップするが、うまく帰ることができない。やがて、春日の城に戦乱がやってくる。
戦国時代の男女の悲恋を描いた、言ってしまえば「エモい」話なのですが、とても上品な内容で面白かったです。
野原一家がタイムスリップすることで歴史が少しだけ変わり、又兵衛の寿命は少しだけ長くなりました。その長くなった寿命で何ができたか、愛する女性に何をしてあげられたのか、と考えると心がぎゅっとなります。
ラストも案外あっさりしていますが、それゆえに余韻に浸ってしまいます。
描写自体も細かいです。戦を前にしてひろしとみさえが又兵衛との今生の別れだと思ってボロボロ泣いているのにしんのすけがよくわかってなくてぽかんとしているのとか、全滅覚悟の戦の前にジョークを飛ばして努めていつも通りに振る舞おうとする行為だとか、何気ないシーンにいろいろな情報が込められています。
そのような細かい描写が、泣けるけれど、押しつけがましくない映画を形作っているのだと思います。
22.『ヴィンランド・サガ』
アイスランドで生まれたトルフィンは、アシェラッドというヴァイキングに父親を殺される。トルフィンはアシェラッドの船団に勝手について行き、アシェラッドに決闘で仇討ちするために彼に協力する。そんな中アシェラッドたちは、イングランドで大きな博打に出ることとなり……。
今まで原作のあるアニメにあまり興味がなかったんですが、これを見て「原作つきのアニメ」の意味が分かった気がします。解釈が深まる……。
この作品、男同士の微妙な感情がよく描かれているのですが、アニメになったことでちょっとしたしぐさ、目線などにそういう感情が込められていてより伝わってくるようになりました。
なるほどこれが原作つきアニメの魅力。
ヴィンランド・サガという作品、とても野蛮でホモソーシャルなんですけど最終的には「ホモソーシャルなロマンの陰で、たくさんの人が死んでいる」という話なんですよね。だからこそ安心して見られます。「男のロマン」をむやみに肯定しない。
完全な原作再現アニメではなく、ストーリーの順番を入れ替えたりオリジナルエピソードを入れたりしています。その部分も違和感がなく、ほどよい改変でした。
23.『犬王』
壇ノ浦で平家の落としたものを引き上げて暮らしていた友魚とその父は、ある男に宝を引き上げてほしいと依頼される。だがそれを引き上げた友魚の父は死に、友魚は盲目になってしまう。琵琶法師に弟子入りした友魚は、兄貴分と京に上り、そこで異形の少年と出会う。少年は、たぐいまれな歌と踊りの才能を持っていた。
ストーリー自体は単純で、最後に種明かしがちょっとある以外は、伏線もそれほどありません。その代わり、ライブシーンにエンタメ性とメッセージ性をごりごりに盛り込んできています。
なぜ歌うのか、なぜ踊るのか、そしてなぜ世の人々はエンターテインメントを必要とするのか……。という疑問の答えが映像と歌でしっかり表現されています。その潔さ、かっこよさにしびれました。
表現者が「ここにいる(いた)ぞ」と伝え、受け取る側が「あの人たちがここにいる(いた)ように、私たちもこの世界にいていい」と思う。物語がなぜ人々を励ましてくれるのかが描かれていてちょっと泣きそうになりました。
物語が世界を救ってくれるわけではありませんが、世界が残酷だからこそ、物語を表現する人は必要なのだ……と思うと自分も何か書いて残さないとな、という気分になります。
24.『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
戦後の日本。モーレツサラリーマンである水木は、出世のために製薬で栄えた富豪、龍賀家が暮らす鬼哭村に向かう。その途中で謎の男と出会い、彼をゲゲ郎と名付けた。水木は、徐々に龍賀家のおぞましい真実を知っていく。
水木は、権力を望み、龍賀の家にやって来ます。しかし、龍賀の子どもたちである沙代や時哉が虐げられていることを知り、そのあり得ないほどの搾取に嫌悪感を抱いて吐いてしまいます。
ついには水木は世界に危険が及ぶとしても、元凶に怒りをぶつけることを選びます。
水木は沙代に好意を抱いてそうですが、それは憐憫や自己投影が多く含まれるのだろうなあ、と感じました。
要は下心があるのですが、下心がある人間が他人を搾取する人間にキレることに価値があります。
それは戦争で苦しんだ、自分自身を救うための怒りだったのだと思います。
SF
25.『くもりときどきミートボール』
冴えない発明家、フリント・ロックウッドはある日水を食べ物に変える機械を発明した。しかしその機械は手違いで雲の上に。雨を食べ物に変換し、町にはハンバーガーが降ってきた。サーディンばかり食べていた町の人々はそれを見て大喜び。フリントは、毎日食べ物を町に降らせることになるが……。
食べ物って基本的にポジティブなもの、人を楽しませるものとして描かれることが多いと思うのですが、その食べ物が「人類の脅威」となっていく過程で気味の悪いもの、得体のしれないものに変わっていくのがすごく恐ろしかったです。
「空から食べ物が降ってくる」というテーマに伴う人間の弱さも、リアリティがあって気まずい気持ちになりました。
「ただで食べ物が食べられる」ということでフリントの発明にただ乗りしようとする周囲も、変に承認欲求が満たされてしまって冷静な判断ができなくなるフリントも、ありそうな話だと思ってしまいます。
家族の絆、自分の過ちの責任を取ること、テクノロジーに伴うモラルなど、いくつものテーマを説明過多にならずに書きこなしている脚本はすごかったです。
26.『はたらく細胞BLACK』
細胞たちが人の姿をしている世界。赤血球になったばかりの青年は、これからの仕事に期待をふくらませていた。しかしその体の主は、暴飲暴食、アルコールやたばこの摂取、運動不足、徹夜など、不摂生な行動を繰り返した。そんな体の中で、細胞たちは「ブラック」な労働を強いられていた。
ちょっとブラックなほのぼの細胞擬人化アニメだと思っていたら、圧倒的鬱アニメでした。こんな……こんなことってある!?
社会(この場合は体)の希望に満ち溢れていた新人が、劣悪な労働環境を目の前にして理想と現実の間で苦しみ、それでもどうにか前に進もうと苦しみます。ブラック企業お仕事アニメだこれ。
特に10話の胃潰瘍編の話にめちゃくちゃびっくりしました。いや……本当にこんなことするアニメだとは思いませんでした。しばらく呆然としましたよ。何度も言いますがこれは細胞擬人化アニメです。
絵柄と描写がコミカルだからマイルドになりはしているんですが、闇が深すぎます。怖い。
いい感じに終わったなと思わせておいて最後の最後で落とすところもひどいですね……こんな続編の見据え方ありますか? 赤血球かわいそう!!
27.『映画クレヨンしんちゃん 逆襲のロボとーちゃん』
野原家の父親、ひろし。ある日怪しげなエステにつられて入っていくと、いつの間にか自分がロボットになっていた。妻のみさえはロボットのひろしを追い出そうとするが、しんのすけは自然にロボットの父親を受け入れる。ロボットの有能さを武器に、ロボひろしは少しずつ野原家に居場所を得る。
本物のひろしがいない間は、ロボひろしと仲睦まじい生活をしていた野原家。しかし本物が帰還したとたんに一気に状況が不穏になってしまうのが悲しいです。
先入観のないしんのすけはロボひろしと生身のひろしを「どちらも父親」と認識するのですが、妻であり、家庭に責任を負っているみさえはやはり「本物は生身のひろし」だと思ってしまうんですよね。その事実を知ったロボひろしの苦しみが見ていてつらかったです。
ロボひろしは本物のひろしより有能で、体力もあり、ただロボットであることだけが欠点である。こうなってくると、何が父親を父親足らしめるのかよくわからなくなってきます。
ラストはかなり苦いものでしたが、それでもロボひろしとの思い出を野原家が引き継いで行こうとしているのは救いでした。序盤では怠け者だった本物のひろしが、「父親とは何か」を考え直すきっかけでもあったのではと思います。
28.『Dr,STONE』
ある日、人類は全員石化してしまい、滅びた。3700年後の未来、高校生の大樹は石化から目を覚ます。先に起きていたのは、科学の天才である千空だった。千空は、この滅びた文明を科学技術で復活させるという。千空と大樹は、手始めに石化を解く方法を研究し始める。
まず主人公の千空がマッドサイエンティストではなく、科学者としてめちゃくちゃモラルが高いんですよね。ひねくれものでツンデレなところはあるにしろ、「科学は人を幸せにするためにある」という原則で動いています。敵対する人間にも手を差し伸べる、博愛主義的なところもあります。
天才であると同時に努力家で、ことを為すためには苦労を厭いません。
千空のモラルの高さ、周囲への優しさや責任感があるから、知識チートをやっていても嫌な感じがしません。「自分だけ独り勝ちしてやろう」ではなく「みんなで幸せになろう」という方向性です。
千空の周囲のキャラクターたちも、「千空より愚かな存在」として描かれるのではなく、「それぞれ役割分担がある」という路線で描かれるのがよかったです。千空にできないことを他のキャラクターがやる、という展開なので周りを下げないところが気に入りました。
29.『アイアン・ジャイアント』
9歳の少年ホーガースは、森の中で大きなロボットを見つける。鉄を食べるその巨人と友達になったホーガースは、そのロボットをかくまおうとする。しかし政府から捜査官がやってきて、ロボットを探し始める。ホーガースはジャンクを引き取る仕事をしている青年を巻き込み、ロボットを隠そうと画策する。
ストーリー自体はベッタベタな話で、伏線らしい伏線もなく、予想通りに進んでいきます。
しかしアニメとして描写が大変丁寧なので、すべて予想通りでも楽しめました。冷戦時代のアメリカの、うっすらとした不穏さをベースに、ロボットと少年の交流が描かれていきます。ロボットの存在を隠すためにドタバタには笑いました。
ちょい悪な感じの兄貴分も、お笑い枠でありながら、ちゃんと主人公のことを守ってくれていてほっこりしました。かわいいよね彼。
政府から来た捜査官も、嫌な奴でありながら行動におかしみがあって憎めないところがありました。
巨大ロボアイアン・ジャイアントも大きさゆえのおっかなさががあって、人外萌えとしてはぐっときましたね。でかいものは怖い。そしてそこがいい。
30.『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』
「好きなだけかき氷が食べたい」という動機で流氷に向かったのび太とドラえもん。その流氷で謎のリングを見つける。10万年前に凍ったそのリングを持ち主に返すため、ドラえもんたちは10万年前の南極に飛ぶ。
この作品は一種のタイムパラドックスストーリーです。
SF的には珍しいタイムパラドックスではないけれど、子ども向けのアニメできっちり伏線を張って最後に回収するお手並みは鮮やかでした。
そもそもプロモーション用ポスターそのものが伏線になっているというあたり、この展開へのこだわりが感じられます。すごいなあ。最初に見るとなんのことかわからないけれど、映画を見た後は「ああ、なるほど!」となります。絵はもちろん、題材も含めて素晴らしいポスターでした。このポスター欲しいなあ。
ひみつ道具の使い方も、今まで出てきた道具を意外な使い方で利用するスタイルで興味深かったです。ロープの犬ぞりという題材がそもそも面白いですね。
ストーリーに工夫が伝わってきて楽しかったです。次はどんな展開をするんだろう?と続きが気になりました。
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