ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

現代もの

青春というファンタジー空想空間―古谷兎丸・乙一『少年少女漂流記』

今日の更新は、古谷兎丸・乙一『少年少女漂流記』です。 あらすじ 孤立、親との関係、ダイエット。悩みを抱える少年少女たち。彼らの心はファンタジックな風景を生み出す。小説家の乙一と漫画家の古谷兎丸の合作である連作青春短編。

泥臭さが楽しいものづくり映画―『カメラを止めるな!』

金曜ロードショーで『カメラを止めるな!』を見ていました。 ネタバレはできるだけ伏せたけれども、何も知らずに見たほうが楽しいので、未見の人はブラウザバックしてね! あらすじ 田舎の廃墟でゾンビ映画を撮影中の一行。監督は本物の表情を取りたいと躍起…

異常なのは主人公か、それとも世界か―村田沙耶香『コンビニ人間』

今日の更新は、村田沙耶香『コンビニ人間』です。 あらすじ 18年間コンビニ店員を続けていた女性、古倉。彼女はコンビニでしか生きていけなかった。そんな中、彼女のいるコンビニに白羽というアルバイトの男がやってくる。他人を見下し、周囲に攻撃的な彼…

失恋型恋愛シミュレーションゲーム『さよなら一等星』が失恋好きの私にクリーンヒットした

失恋、好きですか? 私は好きです。 実際にするほうじゃなくてフィクションの中の話ね! 好きなキャラが当て馬になるの大好きですし、主人公の恋愛が最終的に叶わないのも好き。 そんな私が『失恋型恋愛シミュレーションゲーム』というものを見て飛びつかな…

それぞれの訳ありコメディ家族模様―遠藤淑子『ファミリーアワー』

今日の更新は、遠藤淑子『ファミリーアワー』です。 あらすじ 両親と暮らしていない五人兄弟。個性的な彼らはいつでも大騒ぎをしている。社会人から小学生の一家を中心に、家族の事情を描く短編集。

かわいいけれどどこかクールな雰囲気―香魚子『さよなら私たち』

今日の更新は、香魚子『さよなら私たち』です。 あらすじ 手をつないだまのふたりの少女の魂。このままでは三途の川を超えられない。少女たちは現世で自分たちの過去を調べるが……表題作ほか、思春期の少女たちを描いた短編集。

だめ男の色気がある先生×つり目の愛が重い生徒―なかとかくみこ『塩田先生と雨井ちゃん』感想

今日の更新は、なかとかくみこ『塩田先生と雨井ちゃん』です。 表紙にナンバリングされてなかったから気づかなかったんですが、2巻があるのか……。基本漫画は完結まで読んでからの感想なんですが、先に感想書いちゃったので上げますね。 あらすじ こっそり付…

マジシャン義賊、金持ちから金を奪う―『グランド・イリュージョン』感想【AmazonPrimeビデオ】

今日の更新は、『グランドイリュージョン』です。 あらすじ ストリートマジシャンの集団は、フォー・ホースメン(黙示録の四騎士)となって金持ちのお金を奪い、観客らに配る。FBIは彼らを危険視し、逮捕しようと捜査を始める。彼らは義賊か・コソ泥か……。

恋愛観が古くてあまり楽しめなかった―谷川史子『くらしのいずみ』感想

今日の更新は、谷川史子『くらしのいずみ』です。 一巻完結のまんがを読むシリーズ。 あらすじ 男女が出会い、恋をして、結婚をする。その中ですれ違ったり、相手の心がわからなくなったり……。夫婦をテーマにした短編集。

フェチや関係性にうまく乗れなかった―瑞智上記『あまがみエメンタール』感想

今日の更新は、瑞智上記『あまがみエメンタール』です。 著者プロフィール欄見て気づいたんですが、改名した『幽霊列車とこんぺい糖』の人だったんですね。 あらすじ ストレスを感じると、心音を噛んでしまう莉子。一方で、心音のほうも、「莉子に噛まれる」…

「詩人」であることがスティグマとして扱われるのが辛すぎ―紅玉いづき『現代詩人探偵』感想

今日の更新は、紅玉いづき『現代詩人探偵』です。 あらすじ オフ会で「10年後に会おう」と言って別れた詩人たち。10年後、彼らが集まってみると、四人もの詩人が亡くなっていた。その詩から「探偵くん」とあだ名される主人公は、彼らの死の理由を探り始…

それぞれの『運命の女の子』を描く短編集―ヤマシタトモコ『運命の女の子』感想

今日の更新は、ヤマシタトモコ『運命の女の子』です。 この人の短編集はときどき読みたくなりますね。 あらすじ 大量殺人鬼と対峙する女刑事を描いた「無敵」、男女が演劇をしていたころを回想する「君はスター」、すべての人が呪われた世界で一人だけ呪われ…

女子高生バンドが韓国留学生を引きずり込んで文化祭に出る―『リンダリンダリンダ』再試聴感想【AmazonPrimeビデオ】

今日の更新は、『リンダリンダリンダ』です。 学生時代に見たものを、再試聴。 あらすじ 喧嘩別れしてしまった女子高生のガールズバンドは、文化祭に出るために韓国の留学生ソンを引きずり込む。コピーするのはブルーハーツの曲。果たして文化祭に間に合わせ…

気難しい老女の人生の斜陽―『クロワッサンで朝食を』感想【AmazonPrimeビデオ】

今日の更新は、『クロワッサンで朝食を』です。 このビジュアル、微妙にテーマとは違いますね。あまり明るい作品ではないので。 あらすじ 母を亡くし、エストニアからパリにやってきたアンヌ。彼女は同じエストニア人である老女、フリーダの家政婦をすること…

これをミステリと呼ぶには無理があるだろ―野崎まど『パーフェクトフレンド』感想

今日の更新は、野崎まど『パーフェクトフレンド』です。 あらすじ 不登校の少女をたずねていった小学生理桜(りざくら)は、数学家の天才少女さなかと出会う。理桜が友達の重要性を説いたことをきっかけに、さなかは学校に通い始め、友達というものを知ろう…

地味だけれどじんわり面白い学園連作短編―岩岡ヒサエ『花ボーロ』感想

今日の更新は、岩岡ヒサエ『花ボーロ』です。 一巻完結の漫画を読むシリーズ。 あらすじ 先生、生徒、給食の調理人、彼らは関わり、すれ違い、それぞれの物語を紡いでいく……学校を舞台にした、連作短編漫画。

性欲と思慕の間で手綱を握れ―鈴木マサカズ『恋愛の神様』感想【AmazonPrimeリーディング】

今日の更新は、鈴木マサカズ『恋愛の神様』です。 この漫画はもうPrimeリーディングからはなくなってしまったみたいなんですけど……。面白いので気になったら読んでみてください。 あらすじ 31歳童貞の渡良瀬橋渡(わたらせばしわたる)。恋愛にコンプレッ…

「恋愛小説」を丁寧にまとめ上げる筆力―崎谷はるひ『トオチカ』感想

今日の更新は崎谷はるひ『トオチカ』です。 おすすめ記事から見つけたもの。 yocchi.hatenablog.com あらすじ 過去の恋のトラウマにより、男性が苦手な里葎子。逃げるように叔母の住む鎌倉に行き、友人と共にアクセサリーショップを開いた。そんな里葎子を何…

本からわかる人間の多面性―三上延『ビブリア古書堂の事件手帖5 栞子さんと繋がりの時』感想

今日の更新は、三上延『ビブリア古書堂の事件手帖5』です。 あらすじ 栞子に告白した五浦。しかし、彼女には「返事は待ってほしい」と言われる。律義に待つ五浦だが、その間にも、ビブリア古書堂にはさまざまな事件が持ち込まれる。五浦は栞子の言動を測り…

生きるためには死後の物語が必要―『ポプラの秋』感想【AmazonPrimeビデオ】

今日の更新は、映画『ポプラの秋』です。 原作が好きだったので見てみました。 あらすじ 父が死に、あてもなく出かけたときに見つけたポプラの木。そのふもとのアパートに住むことになった千秋と母は、少し変わった大家のおばあさんと交流するようになる。彼…

優しいけれど思い通りにはならない人間観が好き―『ねこあつめの家』感想【AmazonPrimeビデオ】

今日の更新は、『ねこあつめの家』です。 結構面白いと聞いて気になっていた作品。 あらすじ スランプに陥った小説の佐久本は、占い師の勧めから逃げるように片田舎に引っ越す。そこは、猫がやってくる家だった。やってくる猫を眺めながら、迷走する連載作品…

乱歩をリスペクトした現代ミステリが楽しい―三上延『ビブリア古書堂の事件手帖4 栞子さんと二つの顔』感想

今日の更新は、三上延『ビブリア古書堂の事件手帖4』です。 久しぶりに読んだけれど、だいたい話を理解できたのでよかった。 あらすじ とある女性から、江戸川乱歩の蔵書を売ることを引き換えに「鍵のかかった金庫を開けてほしい」と依頼された栞子。「俺」…

しっかりした人物描写とストーリーを持つ百合小説―木ノ歌詠『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』感想

今日の更新は、木ノ歌詠『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』です。 あらすじをよく読まなかったので後から百合だということを知りました。 あらすじ 中学生の海幸は、列車に飛び込んで自殺しようとしたところ、電車が廃線になっていて不可能だ…

架空のスポーツをさもあったかのように語る手腕に脱帽―天沢夏月『サマー・ランサー』感想

今日の更新は天沢夏月『サマー・ランサー』です。 一巻完結ライトノベルの紹介にあった本です。 あらすじ 剣道の才能を持ちながら、祖父の死をきっかけに剣道をやめた天智。そんな彼は、高校入学をきっかけに「槍道」に出会う。天智は槍道部の仲間たちを通し…

描きなれていないがストーリーは好き―伊蔵ユズコ『森の中書店つれづれ』感想

今日の更新は、伊蔵ユズコ『森の中書店つれづれ』です。 一冊完結の漫画を買いだめしたうちの一冊です。 あらすじ ごく普通の本屋さん、「森の中書店」で働く書店員の山田くん。毎日忙しく働いている。その中でお客さんと交流をするうちに、みんなさまざまな…

ご飯を通して思い出す美しい記憶―miobott『上島さんの思い出晩ごはん』感想

今日の更新は、『上島さんの思い出晩ごはん』です。 web小説『ただいま、おかえり、いただきます』の書籍化です。 あらすじ 素性を知らないまま、一緒に暮らしていた男性「上島さん」。しかし彼は交通事故で死んでしまった。民子は彼の思い出をなぞりながら…

音楽と学校を描いた青春葛藤ストーリー―佐藤多佳子『第二音楽室』感想

今日の更新は佐藤多佳子『第二音楽室』です。 『聖夜』とは同じテーマを使ったシリーズです。内容につながりはありません。 honkuimusi.hatenablog.com あらすじ 鼓笛隊で、メインの楽器を落とされ、ピアニカを拭くことになった子どもたち。彼らは第二音楽室…

助っ人少女がミュージカルの舞台に挑む 森絵都『無限大ガール』感想

AmazonKindleで売っている短編、Kindle Singleの本です。 あらすじ こうと決めたら猪突猛進! 眩しいぐらいまっすぐな高校生女子が大活躍する、爽やかで甘酸っぱい青春小説の短編。高校二年生の相川早奈(あいかわ・さな)は「日替わりハケン部員」。きょう…

ベンチャー系企業のデザイナーがひたすらお仕事する創作BL 津夏『コマンドZはできません』感想

【創作BL】コマンドZはできません #1 by 津夏 on pixiv 面白かったので覚書代わりに感想。インディーズのものに関しては、「恥ずかしいから紹介しないで」というのを受け付けますのでTwitterからご連絡ください。 あらすじ デザイナー系の専門学校生小竹湊太…

足の不自由な少女を中心に「友情」を描いた連作短編 重松清『きみの友だち』感想

あらすじ 事故で足が不自由になった恵美。彼女は事故にかかわったクラスメイトを責めたことをきっかけに、クラスで孤立してしまう。恵美は同じくクラスで浮いている、由香と仲良くなるが……。ひとりの少女を中心とした連作短編集。