ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

『王様のプロポーズ4 黄金の巫女』橘公司 富士見ファンタジア文庫 感想

王様のプロポーズ4 黄金の神子 (富士見ファンタジア文庫)

 

あらすじ・概要

<庭園>の教師、アンヴィエットの前に娘を名乗る謎の女の子、ニーリヤが現れる。アンヴィエットは隠し子の疑惑を否定するが、何だかんだニーリヤの面倒を見てしまうようだ。やがてニーリヤは、アンヴィエットの妻の死に関わっていると判明する。

 

ラブロマンス好きにおいしい回

今まで脇役だったイケメンが100年前に妻を亡くした男やもめだったことが判明し、そのイケメンが娘を名乗る謎の女児に振り回され、回想では亡くなった妻のラブラブシーンが描かれます。男女カプ好きの見た都合のいい夢夢かと思いましたよ。

 

一見チャラくて悪そうですが、作中で一番の常識人というアンヴィエットのキャラクターがよかったです。正体不明の女児を何だかんだ世話してしまうところに彼の善性を感じます。ニーリヤに振り回されるアンヴィエットはかわいかったです。

中盤、亡き妻のために戦うところも、彼がただの道化キャラではないことを示していて面白かったです。そんな彼を無色と彩禍が助けるのも、爽快感がありました。

アンヴィエットが描かれた挿し絵もめっちゃ良いです。かっこいい。この巻がアンヴィエットのためのものだと教えてくれます。

 

主人公と関係ないカップルの話なので彩禍と無色のイチャイチャは控えめですが、それでもところどころ様子のおかしい無色は面白かったです。

謎のカードゲームが発生したり、突然結婚の話をしたり、愛の重さがおかしい主人公でした。受け止める彩禍ももはやすごいです。

 

 

 

 

 

honkuimusi.hatenablog.com 

『砂糖の世界史』川北稔 岩波ジュニア新書 感想

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

 

あらすじ・概要

お菓子にやコーヒー、紅茶に甘味を加えるために使われている砂糖。その歴史は、植民地支配と深く関わっていた。砂糖をめぐる欧州の国々と植民地の関係、そして、コーヒー、紅茶、チョコレートという他の商品作物との関係を説明する。

 

砂糖がどのように社会を変えていったかが面白い

岩波ジュニア新書の名著として何度も紹介されている本です。有名なだけあり、面白くわかりやすかったです。

 

砂糖の栽培は、植民地支配に強くかかわっています。欧州の国々は奴隷労働によって多くの富を得ました。それは、現地の経済や文化を破壊することでもありました。

砂糖の大規模栽培の前にも格差はありました。しかし砂糖によって、格差が拡大します。国の中の格差ではなく、グローバルな格差です。

砂糖によって生まれた格差は、今日でも続いています。現在、ハイチでは治安の悪化が深刻になっています。それももとをたどれば、砂糖が関係しているのです。

 

同時に、砂糖によってもたらされた豊かさは、欧州の庶民たちにも波及します。庶民がお菓子や紅茶、コーヒーを楽しめるようになってきます。

コーヒーを楽しむコーヒーハウスは、議論の場となり、民主主義の始まりの場所となりました。

 

植民地支配はよくなかったでしょう。しかし同時に、幸せと不幸はあざなえる縄のごとく表裏一体なのだと感じます。その幸福と不幸はあまりにも偏りすぎていました。現代は搾取はよくないという方向になろうとしています。今後は砂糖の恵みが、平等に分け合える社会になればいいと思います。

 

 

 

 

 

honkuimusi.hatenablog.comhonkuimusi.hatenablog.com

 

『被災地・神戸に生きる人びと 相談室から見た七年間』牧秀一 岩波ブックレット 感想

 

被災地・神戸に生きる人びと: 相談室から見た7年間 (岩波ブックレット NO. 540)

 

あらすじ・概要

阪神大震災から七年後、相談室で被災者が語ったことを元に、復興と被災者の心について振り返る。人間関係のこと、住まいのこと、町並みや仕事のこと……。被災者のリアルを描く本。

 

7年後の神戸のリアルに考えさせられる

あえて悪いことを書いている部分もあるでしょうが、復興の裏側にある人々の葛藤や苦しみが知れて興味深ったです。

阪神大震災から七年後の神戸。そこに生きる人たちの悩みや葛藤を具体的なエピソードとともに語ります。

専門的な話というより読み物という感じですが、取っつきやすい内容だと思います。

災害対応における行政のミスも書かれています。

 

災害が起こったあと、「がんばって復興しよう」という流れになります。実際に、街の復興を心の支えにする人もいるので、安易に否定できるものではありません。

一方で、明るく前向きな復興ムードについていけない人もいます。明るい態度でいることを強いられるのは、同調圧力でしょう。

「がんばろう○○」という言葉を見るたびに、本当につらい目に遭っている人はがんばろうなど言っている場合ではないだろうなと思います。なのでこの場合「がんばる」のは余裕がある側の人間であり、被災者ではないと考えるのがよいでしょう。

 

人の心は複雑であり、被災者だからといって、同じことを考えているとは限りません。複雑な心を複雑なまま、受け止めることも大事なのではないかと思います。

 

 

るるぶ神戸'24

るるぶ神戸'24

  • JTBパブリッシング
Amazon

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

honkuimusi.hatenablog.com

 

『日の鳥』こうの史代 日本文芸社  全2巻 感想

日の鳥 1

 

あらすじ・概要

妻を探している雄のニワトリは、東日本大震災以後の東北を旅する。震災の遺構、東北の町、雄大な大自然など、ニワトリはさまざまなところをめぐる。被災地を描くスケッチ集。

 

東日本大震災後の東北を描いたスケッチが美しい

風景画が抜群にうまいです。私は美術的な技法には詳しくないんですが、引き算の美というか、書き込むところと力を抜くところのバランスが素晴らしいです。

手書きらしいぶれのある線です。しかし雑には見えない、絶妙なイラストです。

 

文章部分はふたつに分かれていて、上にニワトリの物語が、下に作者のコメントが書かれています。

東北の牧歌的な風景を旅するニワトリがかわいらしい一方、作者のコメントでシビアな現実を知ってしまいます。かわいいけれどかわいくない。ふと読むページを止めて考え込んでしまう本でした。

 

ニワトリが妻を探して旅をするのは、おそらく東日本大震災で家族を失った人の暗喩なのだろうなと思います。ところどころに、ニワトリの妻は手の届かないところに言ってしまったのだろう、という示唆があります。

しかし、ニワトリの旅は決して悲しいだけではなく、笑いと優しさにあふれています。

悲しいままここにいていいような気分がする本でした。

 

 

日の鳥 1

日の鳥 1

Amazon
日の鳥 2

日の鳥 2

Amazon

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

honkuimusi.hatenablog.com

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

『Instagram 基本+活用ワザ できるfitシリーズ』 いしたに まさき ・田口 和裕 インプレス 感想

できるfit Instagram インスタグラム 基本+活用ワザ できるfitシリーズ

あらすじ・概要

画像投稿を主とするSNSInstagram。その機能を基本的な部分から解説。投稿のことから、閲覧、セキュリティの問題など、Instagramでできること、設定できることを教えてくれる本。

 

意外と何でもできるInstagramというサービスが面白い

最近Instagramにハマっているので、改めて機能を知りたくて読みました。

今のInstagramは機能が多すぎてどこに何があるかわからないので、まとまった本で読めてよかったです。とはいえ、最新の機能には対応していないらしく、掲載されていない機能もあります。新機能については新しい本を読まないとだめですね。

 

読んでいて思うのは、Instagramは「画像投稿サイトであるけれど、意外となんでもできる」ということですね。

動画も投稿できるし、ライブ配信もできます。Twitterよりも不自由ですが、ストーリーズを使えば文字だけの投稿もできなくはありません。

 

サービスとしては結構楽しいのですが、最近のMetaの方向性には怪しいところもあります。

現代はSNSと縁を切って暮らすことは難しいです。だからこそSNSを運用する会社には、自浄作用が働いてほしいですね。

 

 

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

honkuimusi.hatenablog.com

 

『神戸 難民日誌』津村喬 岩波ブックレット 感想

神戸難民日誌 (岩波ブックレット NO. 372)

 

あらすじ・概要

神戸の埋め立て地、ポートアイランドに暮らしていた著者は、阪神大震災を経験する。当時の神戸の雰囲気、人々の姿を文筆家の立場から語る。被災者から見た、震災後の神戸の希望とは。

 

良くも悪くも当時の文章、とある文筆家の日記

良いところも悪いところもある本でした。同時に当時の人しか書けない内容で、資料としての価値が高いです。

文筆家である著者は、阪神大震災以後について詳細な日記を残していました。その日記をまとめた本です。

著者が暮らしていたのは神戸のポートアイランド周辺で、被害の少ないほうでした。文章中では食料に困った様子もありません。

少し被害が少ないだけで、こんなにも変わるのかと驚きました。

 

著者は、災害の被害に心を痛めると同時に、うっとりとロマンチックな感情に浸ることがあります。、それが生々しかったです。

災害時、過酷な現実を目の前にして、心が高揚して周囲が美しく見えてしまうのを災害ハネムーンと呼びます。著者もそういう状態だったのかもしれません。

再開発されたおしゃれな神戸が壊れてしまってせいせいした、という不謹慎すぎるくだりもあります。現代人の感覚からしたら言い過ぎだろうと思います。

 

著者は、古く、どこか泥臭く、しかし市民の生活を支えてきた町並みが消えることへの危惧を感じています。

私は神戸の人にとってはよそ者で、「おしゃれな神戸」を消費する側の人間です。しかし開発の渦中にいた人は、こんな風に感じていたのだなと思いました。

 

 

著者は気功をやっているので、話がスピリチュアルなところに及びます。現代ではエセ科学とされている内容も多いです。読んでいて突っ込みたくなりました。

EM菌なんか本当に使っている人久しぶりに見ました。

しかし論理的でエセ科学にひっかからない人だけが被災するのではありません。ある意味リアルと言えます。

 

これが神戸の人を代表した発言だとは思いませんが、ひとりの人物が書いたエッセイとしては面白かったです。

 

 

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

honkuimusi.hatenablog.com

 

『イラクの戦場で学んだこと』岸谷美穂 岩波ジュニア新書 感想

イラクの戦場で学んだこと (岩波ジュニア新書 518)

 

あらすじ・概要

紛争地帯の人々を支援するNGOで働く著者は、20代にしてイラクの紛争地域に行き、現地チームのリーダーとなる。現地スタッフとのコミュニケーションに悩み、政治のごたごたに巻き込まれ、戦争や治安悪化により自らの命もあやうくなる。

 

紛争地の支援の甘くない事実と、それでも助けたいという気持ち

若者向けとは思えないほどの重たい内容でした。NPOのなんとなくかっこいい雰囲気を打ち砕く作品です。

 

20代の若い女性が戦地におもむき、そこでリーダーとして振る舞わなければならなかったのです。心労がすごかったでしょう。

なおかつ、家父長制のクルド人社会では、家長として振る舞う方が信頼を得られます。著者は団体を家族のように扱うことでリーダーとしての立場を勝ち取ります。その姿がすさまじかったです。

また、ただ困っている人を助けることに全てをかけられるわけではありません。著者は国や団体の政治的駆け引きにも巻き込まれます。本当に大変そうです。

 

クルド人たちはずるいところやいい加減なところもあり、決して気持ちよく助けさせてくれるような人々ではありません。

それでも国の方針や戦争に翻弄され、信頼できるものを失った彼ら彼女らを見ると悲しい気持ちになります。

長引く戦争で国家に対する信頼を失った人々に、国家を信頼して倫理的に振る舞えと言っても無理があるでしょう。

日本も問題は山積みですが、少なくとも明日自分や家族が殺されるかもしれないという不安はありません。

 

岩波新書があまり自伝やエッセイを扱わないゆえに、岩波ジュニア新書がそのジャンルを取り扱っているところがありますね。

 

 

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

『noteではじめる新しいアウトプットの教室 楽しく続けるクリエイター生活』コグレマサト・まつゆう インプレス 感想

noteではじめる 新しいアウトプットの教室 楽しく続けるクリエイター生活 できるビジネスシリーズ

 

あらすじ・概要

クリエイター向けの投稿サイト、note。その基本的な使い方から、応用編、実際にnoteを使っているクリエイターへのインタビューを掲載。noteとはどんなサービスなのかわかる本。

 

noteの使い方とインタビューが興味深い

すでに知っていることで斜め読みしたところもありますが、それでも興味深かったです。

noteというサービスの使い方、noteを使っている人の体験談など、盛りだくさんでした。

機能はおおよそ使ったことがあります。まとめてもらうと、そういえば使ったことなかったな……という機能が出てくるのが面白いです。

 

後半はnoteを使っている人へのインタビューです。情報が偏っている女なので知らない人が多かったですが、内容は面白かったです。

「小説を書いて、反応がいいものをつなぎ合わせて長い作品を書いた」という人がいて、素直~!! となってさはまいました。しかし、Web媒体だからそういう変則的なコンテンツを出せるとも言えます。

承認欲求はよくないものと見なされがちですが、反応が人を育てるところもあるよなあと思います。

 

本の中で何回も「最初に結論を持ってくる」ということが強調されていました。そこが面白かったです。ここまで何度も言うということは、結論を提示せずにだらだら書く人が多いんですね。

 

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

『騎士団長アルスルと翼の王』鈴森琴 創元推理文庫 感想

騎士団長アルスルと翼の王 (創元推理文庫)

 

あらすじ・概要

皇女アルスルは、ワシ人外がはびこる空域に向かう。そこではヴィクトリアという老女が指揮を取っていた。そして、アルスルと同じく人外スコアを持つ男スロースとも出会う。神の使いとも見なされるワシ人外との戦いが始まった。

 

バトルファンタジーと濃厚なラブロマンスが楽しい

皇帝の娘(とはいえ選挙で皇帝が決まる世界なので、今は父親ではない人が皇帝)であるアルスルが英雄になっていく姿がとてもかっこいいでしす。

1巻より濃厚になっていてすごかったです。ラブロマンスが甘い。その上ちゃんとバトルファンタジーもやってくれました。満足度が高いです。

 

人ならざる力を得たアルスルと、彼女を愛しその背中を追いかけるルカ。

ふたりの関係が熱くてロマンチックでよかったです。

当て馬的なキャラクターも登場しますが、彼も結構味わい深い人物でした。政略結婚の相手としてアルスルを求めます。しかし恋愛の相手というよりも戦略的なパートナーとしてです。世界観のシビアさ、貴族の一般的な価値観を見る上で面白かったですね。

身分の低いルカは今の状態ではアルスルの伴侶にはなれません。それと同時にアルスルとルカの今後の関係が示唆される下りもあります。これからふたりの関係がどうなるか楽しみです。

 

今回の敵役が特定の人間に固執する理由も、気味が悪かったです。しかしそういうところに人外キャラクターの旨味があります。

理解し合えない、しかし強烈な魅力を持つからこそ人外は美しいです。

 

ライトノベルレーベルではありませんが、挿し絵が豊富なのでそこもありがたかったです。主要キャラクターの外見がわかるのはいいですね。

猫が降ってくる挿し絵もかわいかったです。

 

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

 

『ミモザの告白4』八目迷 ガガガ文庫 感想

ミモザの告白 4 (ガガガ文庫)

 

あらすじ・概要

「女の子として生きることにした」汐。しかし、汐の家庭は複雑な事情を抱えていた。汐の妹、操の視点から語られる、家族の過去とは。そして、汐と友人として接してきた咲馬も、これからの汐との関係を考えることになる。

 

汐と操の家族事情にしんみりする

汐とその妹、操の過去編。時系列が過去ゆえに、番外編のような雰囲気ですね。

汐のジェンダーのことより、汐と操の特殊な家庭事情に重きを置いています。

実母を病気で失ったきょうだいは、現在父親の再婚相手である雪と暮らしています。

操が変わっていく状況の中で、さらに汐が「女の子として生きていく」と決めたことが子ども心にショックだったのだろうと思います。

「お兄ちゃんであること」を求められた汐が、それを呪いだと思いたくないというのが染みました。

 

ただ操が汐を受け入れられないのは操の問題なので、私は、汐がそこまで気を遣わなくてもいいのではないかと思います。汐も、お兄ちゃんと言えども未成年ですからね。

でも未成年なんだからそこまで責任を負わなくていい! と思うのも大人の価値観かもしれません。ややこしいですね。

 

そしてついに、腹をくくった咲馬。汐とどこまで一緒に行けるかはわからないですが、今はその決断を支持したいです。

次巻は大きく話が動き出しそうで、楽しみです。

 

 

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

honkuimusi.hatenablog.com

 

honkuimusi.hatenablog.com